ニッサン ティーダ 18G NISMO S-tune
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写真のクルマ、低い車高にエアロパーツをまとい、リアには太い排気管。しかし、確かに形はティーダに違いない。

フロントバンパー中央を良く見ると小さいNISMOのエンブレムが付いている。さてこのクルマは一体なんなのか?
種を明かせばTIIDA 18G 6MT にNISMO S-tuneパッケージ(649,020円 )を組み合わせたコンプリート仕様で、 ベース車両が195万円だから、S-tuneの追加で約260万円、これにナビを付ければティーダとは思えない価格になる。

S-tuneパッケージのタイヤは195/55R16で専用デザインのホイール と組み合わされる。しかし、スポーティーなホイールの中から覗くリアのブレーキドラムがチョッとしらける。と書くと、ディスクブレーキが付いていれば良いというもんじゃあないぞ、と中傷する奴も現れそうだが、パッケージの名前からして4輪ディスクくらい奢っても罰は当たらない じゃないかなぁ。



NISMO S-tuneと聞いて、並みのティーダとは全く異なる、バケットシートとスポーティーな内装を想像してドアをあけて見ると、何と・・・・・・ティーダその物だった!1.8Gというのはティーダとしては最上級モデルだから、コンパクトハッチとしては充分に豪華だが、NISOMOというイメージからは程遠い ことで、ガッカリ。

室内で見慣れたティーダとの唯一の違いは3つのペダルとコンソールから生えた6MTのシフトレバーだが、実はティーダ18Gには、ニスモ云々以前に、標準でMTがラインナップされているのだっ た。何を隠そう標準の18Gに6MTの設定があるとは知らなかった。

エンジンを掛けると静かなアイドリングと共に、このクルマのエンジンが単なる1.8LのMR18DEそのものだという事実を思い出した。軽いクラッチペダルは多少スムースさに欠ける が、これはまっ更の新車だからだろか。クラッチミート自体は容易だからMTの運転経験があれば誰でも問題なく走らせることが出来る。

シフトのフィーリングもスムースで結構早い操作にも追従する が、エンジン自体のレスポンスは決して良くないどころか、排気ガス規制や燃費向上の為だろうか、シフトダウンでエンジンをブリッピングしようとして、 ニュートラル位置でアクセルを一瞬吹かしても全く反応しない。したがってヒールアンドトウは元より、シフトダウン時に回転を合わせようとしても受け付けない。 それでも何とかブリッピングをしようと、ニュートラル状態で少し長めにアクセルを踏んだら突然大げさに吹け上がって、回転を合わせるドコロではなかった。そして、1.8Lとはいえノーマルのエンジンだから、加速性能も大したことは無い。これは、以前乗ったことのあるマーチ12SRでも同様だったが、日産のオーテックやらニスモバージョンというのは、大衆車のエンジンを流用していることもあって、動力性能的には期待できないようだ。
それでもマーチ12SRは多少のチューンを施していて標準のマーチよりも最高出力もアップしていたが、今回のティーダは 標準の128psのまんまとなっている。10分ほど走っていると何やら左足がシックリしない事に気が付いた。信号待ちで足元を見たらば、左足のスペースにはフートレストどころか、クラッチとの隙間が少なくて、昔の乗用車のようにクラッチペダルの下に左足を置くような運転姿勢とな っているのが判った。 ええっ?それまでフートレストが無いのを気づかずに運転していたのか?なんて、いう突っ込みをされそうだが、その昔はフートレストの付いたクルマなんて極一部だったから、殆どのクルマはクラッチの下に足を置いていたので、運転暦が20年以上のドライバーなら何も考えずに運転できてしまうものなのだ。

動力性能がイマイチな割には、操舵性や足回りは中々良い。NISMO S-tune パフォーマンス パッケージにはスポーツサスペンションが組み込まれていることもあって、しなやかな乗り心地 と安定した挙動の両立に成功していて、そのレベルは下手な欧州車顔負けといっても嘘にならない程だ。 ニッサン車の試乗で何時も使うコーナーでは、何時もよりも速めの進入速度にも関らず、難なくクリアしてしまった。元々ティーダのコーナーリング能力は、この手のハッチバックとしては高い方 とはいえ、 あることろを超えると行き成りBセグメントのプラットフォームを流用した素性が顔をだしたのだが、 S-tune によるレベルの高さは標準車とは一線を画していた。  
そしてブレーキはといえば、これはもう普通のディーダだから普通に走るには問題ない性能だが、言うまでも無くハードな使用は考えられてはいない筈だ。
 

最近メッキリ少なくなってしまったMTだから、今回のように手ごろな大きさのハッチバック車のMTで、しかもニスモのコンプリートモデルらしき試乗車を見つけた時は大いなる期待をしたが、結果は只のティーダ1.8Lに6MTを載せて、外観上で少しスポーティなエアロパーツと排気管 を付けたというのが実態だった。 せめてもの救いはサスペンションキットが組み込まれていたこと位だろうか。しかも、車両価格はナビを除いても260万円也。
と、ここで考え直してみれば、S-tune なしの18G 6MTならば195万円。それでもCセグメントのハッチバックとしては安くはないが、このクラスとしては高級な内装や、車格に対して大き目のエンジンによるトルクの余裕という面では、決して不当に高い訳ではない。では、なぜMTかといえば、ティーダの想定ユーザーである定年を迎えた団塊世代向けと考えれば、この年代のドライバーで は寧ろATが苦手という層は結構多かったりする。そう、MTはスポーツドライブの為ではなくて、ATが苦手、若しくは嫌いなユーザーのために設定されていると思えば 辻褄が合う。これはクルマ(勿論S-tuneなんて無し)はおたく向けのスポーツハッチではなく、AT嫌いの熟年ユーザー向けなのだった。
それにしても、理想の小型スポーツハッチ探しの旅は、前途多難でもある。表題を見て期待したマニアのあなた!別に引っ掛ける積りじゃあなかったんですが、自分自身もやられたと思ったもので、この気持ちを是非とも分け合いたいと思いまして・・・・・。

注記:この試乗記は2008年7月現在の内容です。