マツダアクセラ スポーツ 15C & 20S
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マツダアクセラが約6年ぶりにFMCされた。2003年10月に発売された先代アクセラはプラットフォームをフォードグループで共通化したために、フォードフォーカス およびボルボS40/V50と共有している。今回の新型はプラットフォームや主要コンポーネントはそのままで、主として内外装を一新したものだ。既に6年経過したプラットフォーム の使い回したが、モデルチェンジサイクルからいっても、またフォードやボルボへの供給という面でも今後6年以上は使われるのだろう。なぜなら、現在のボルボが置かれている状況(買い手が付かない)や技術 的にも規模的にもプラットフォームからの独自開発は無理があるから、マツダからの供給は継続の必要がある。 さて、その新型の外観はといえば、フロントは新型デミオでお馴染みのチョッとどこかのフランス車っぽい雰囲気になったし、少し前のマツダのアイデンティティだった五角形のグリル(ホンダとも似ている)も無くなった。

シートはマツダ車らしく粗い織り目のファブリックに硬くしっかりした座面という、欧州向けをそのまんま国内仕様にも使っているという感じだから、欧州車オーナーなら全く違和感はない。言ってみればベンツ・ビーエムのベースグレード、いやVWやオペルなど欧州の大衆車と共通感のあるものだから、毛足のあるスエード調のモケットが高級車の証だと思っているトヨタユーザーからみれば、「やっぱりマツダのシートはチャチだ」という事になる。



リアのラッゲージルームはこのクルマがワゴンだと考えれば狭いが、5ドアハッチバックとみれば充分なスペースといえる。



内装については流石にデミオよりは金が掛かっていて、ダッシュボードも指で押してみれば凹むので真面目にパッドの役目を果たしそうだ。そして、シルバーのトリムやエアコンおよびオーディオの樹脂製パネルの質感も200万円級の価格からすれば大きな不満も出ない。多少のチャチさは欧州的だと思えば納得できるし、カローラ的なものが豪華と思うユーザーは間違ってもマツダ車は買わないだろう。

アクセラのミッションは1.5ℓがCVTで2.0ℓが5ATを搭載しているが、セレクターは基本的に同じデザインとなっている。
アクセラのオーディオには全てオプション扱いとなり、左の写真がFM&CD(約3.4万円)で、他にHDDナビ(約26万円)やさらに高価なボーズシステムなどがある。
エアコンは全グレードにフルオートエアコンが標準装備されているから、3ダイヤルのエアコンパネルも全グレードで共通となっている。



先ずは1.5ℓの15Cから乗ってみよう。
走り出すと動力性能としては平均的な1.5ℓ車で、ライバルのインプレッサ1.5等と大きく変わらない。アクセラは今回の新型から1.5ℓのMTが設定 から無くなってしまった。一部のマニアからは有難い存在と思われていたのだが、やはり台数の少ないことから継続は不可能だったようだ。 まあ、CVTも違和感が少ないから一家に一台の実用ファミリーカーとしての使用ならば特に不満はでない。それにせめてMT的な運転をするのにはMTモードという手もある。CVTのMTモードはステアリングスイッチは無くコンソール上のレバーで行うが、レスポンスは意外にも悪くないから結構使い物になる。 と、いってもクラッチを踏みながらシフトレバーをキコキコやるのが楽しい、という物好きなユーザーはMS(マツダスピード)アクセラを買うしかないが、予算は100万円のアップで ランニングコストも掛かる(MSアクセラは2.3ℓターボ)。
乗り心地は多少硬めだがボディの剛性感も充分あることから不快ではない。スアリングは決してクイックではないが、切っただけはチャアンと向きを変えてくれるから、普通のドライバーには扱い易いだろう。 コーナーリングも一般道を普通に、いやチョッと速めくらいに走っても充分な安定性とFF的な癖も感じることなく、良く出来た最近のFF車の水準だから、1.5ℓ級の実用車としては文句はない。ライバルのインプレッサ1.5と比べると流石にしなやかなサスの設定による乗り心地では敵わない が、これは好みもあるだろう。
ブレーキは今更言うまでもなくBMW3シリーズ(の低グレードモデル)でも採用しているドイツテーベス社の鋳物・シングルピストンのキャリパーで、当然ながらボルボS40/V50とも共通となっている。効きはこれまた欧州車的だが、数年前ならともかく、現時点での国産車のブレーキ性能の進歩からすればアクセラのブレーキは正に”並”というところだ。



今度は2.0ℓの20Sに乗ってみる。第一印象は、やはり1.5に比べるとトルクがあり加速性能も勝るのは当然だが、遅い代表のように言われるBMW320iも2ℓだから、最近の2ℓクラスは決して速いクルマではない。 25年くらい前の2ℓといえば、結構な高性能車のイメージだったのだが。
アクセラ20とはシャーシーとエンジンを共有して、ドンガラと内装違いのボルボS40/V50(2.0e)の動力性能よりは体感的に少しはマシに感じたのは、ボルボのミッションがトルコンではなくDCTを搭載しているために、 トルコンスリップでの誤魔化しが効かないことで、より遅く感じるのではないか。 試乗した2.0Sは他のグレードよりもホイールが大径でタイヤもより扁平なことから1.5に比べて乗り心地は硬いが、良く言えばスポーティーともいえる。

そして2.0のハイライトは停車中にエンジンも停止させる i-stop という仕掛けで、これにより燃費を稼いで地球環境の保護に役立てるという立派な思想か、 それとも少しでも燃費を良くしてハイブリッド等の技術がなくてもエコ減税の恩恵を受けようというセコい考えか、はて?そこで、まずは使ってみよう。上手い具合に先方の信号が赤に変わったのでユックリと減速しながら軽くブレーキを踏んだままで静かに停車して暫し待つ事0.5秒、今までアイドリングをしていたエンジンは・・・・・・・相変わらずアイドリングをしている。 要するに静か〜に止まったのではシステムが感知しないようだ。次に少し強めの減速と多少荒っぽい停止をしたら、停止後一瞬の間をおいて見事にエンジンは停止した。この状態ではブレーキペダルは遊び部分を過ぎて、決して剛性の高くないペダルを更に踏んだ状態だから、踏んでいるのも結構疲れる。そこで、徐々にペダル を踏んでいる力を抜いて、軽く足を載せてクリープを防ぐ程度まで緩めたら、何とエンジンがスタートしてしまった。その後も何度か繰り返したが、クリープを止める程度に軽く足を載せた程度では i-stop を作動状態に保つことは出来なかった。これはハッキリ言って使い物にならないのではないか。まあ、試乗車は初期の生産ロットだから、調整もイマイチだった可能性もあるし、恐らく世間でも評判は良く無いだろうからラインチェンジで改良ロジックが載ることも大いに有り得るが。

2.0ℓモデルのトランスッミッションは1.5ℓのCVTに対して5ATとなり、ステアリングにはマニュアルスイッチが付く このスイッチはステアリングの裏側に左右対称に2つのバドルスイッチがある。なあ〜るほど、右がアップで左がダウンのF1タイプかと思いきや、何とどちらもアップだった。そしてダウンは ステアリングホールのスポーク上(写真の"DOWN"と表示された)にあるスイッチを押すことになる。何やら イレギュラーな気もするが引いてアップというのはレーシングーカー的だし加速感に合っているから、個人的にもこの方向が正解だと思う。
さて、そのマニュアル動作だが、今回はあまり充分に試す時間が無かったが、どうもCVTを装着する15Cの迅速な変速レスポンスに比べると、5ATの20Sのほうがレスポンスが悪いように感じたのだが、これは機会があれば再度試したいと思っている。

新型アクセラのラインナップは1.5ℓが15Cのみのシングルグレードであるのに対して、2.0ℓは20C、20E、20Sという3グレードが用意されているのを見る限り、マツダとしては2.0ℓモデルが主流と考えているようだ。 今回は1.5ℓと2.0ℓを一気乗りしたが、比べてみれば2.0ℓの動力性能が決定的に1.5ℓを上回るのかといえば疑問もあるし、燃費や車輌価格を考えれば1.5ℓにメリットがあるように も思う。
ただし、先代では1.5ℓに設定があったMTは今回からは無し。今時3ペダルのMTなんて販売台数は少ないだろうが、これを欲しがるマニアは確かに存在している。しかし残念ながら今回からは1.5MTを欲しがるユーザーは切り捨てられてしまった。これらのユーザーは1.5MTが欲しいと いうよりは、1.5しかMTの設定が無かったから、これを選んだとも思える。そういう意味では、是非とも追加として2.0ℓモデルへのMT搭載 車の設定なんて如何だろうか?ライバルのインプレッサは1.5ℓと2.0ℓターボ(S-GT)にMTをラインナップしているのだから、アクセラもこういう層を大切にしてもらいたいものだ。
と、まあ多少の文句を言ったところでライバルとのスペック比較といってみよう。
 
    MAZDA
AXELA Sport
MAZDA
AXELA Sport
SUBARU
IMPREZA
TOYOTA
AURIS
VW
GOLF TSI

15C 20S 1.5i-L 150X  Comfort line

寸法重量乗車定員

全長(m)

  4.490 4.415 4.220 4.210

全幅(m)

1.755 1.740 1.760 1.790

全高(m)

1.465 1.475 1.515 1.485

ホイールベース(m)

  2.640 2.620 2.600 2.575

最小回転半径(m)

5.1 5.3 5.2 5.0

車両重量(kg)

  1,250 1,340 1,230 1,240 1,290

乗車定員(

  5 5 5 5 5

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

  4 DOHC 4 DOHC 水4 DOHC 直4 DOHC 直4 DOHC Turbo

総排気量(cm3)

1,498 1,998 1,498 1,496 1,389

最高出力(ps/rpm)

111/6,000 150/6,200 110/6,400 110/6,000 122/5,000

最大トルク(kg・m/rpm)

14.3/4,500 19.0/4,500 14.7/3,200 14.3/4,400 20.4/4,000

トランスミッション

  CVT 5AT 5MT/5AT CVT 7AT

駆動方式

  FF
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

  18.4 16.4 17.6 17.6 16.8

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット
  マルチリンク ダブル
ウィッシュボーン
トーションビーム 4リンク

タイヤ寸法

前後 195/65R15 205/55R16 195/65R15 195/65R15 205/55R16

ブレーキ

前/後 V-Disc/Disc V-Disc/Drum V-Disc/Disc V-Disc/Disc

価格

     
 

車両価格

  166.0万円 214.0万円 156.0万円 162.0万円 275.0万円
 

備考

20C:189万円  

一覧表を見ればアクセラとインプレッサはオーリスやゴルフよりも全長が長いことが判る。1.5ℓの3車種では最も新しいアクセラが燃費が最良で、1.5ℓでも4輪ディスクブレーキを装着している など、スペック的にはライバルに勝っている。

先代アクセラに初めて乗って驚いたのは実に欧州車的なクルマで、最近は高級化してしまったゴルフとは言わないまでも、オペルやルノーなどの”普通の欧州車”に対しては充分に太刀打ち出来るのではないか、というレベルだった。今回は基幹となるプラットフォームやエンジンは先代からの使い回しだが、予想通りに正常進化したから、益々欧州の実用車的なクルマになっていた。アクセラはフォードグループのCセグメント車としてフォーカスやボルボS40/V50と主要コンポーネントを共有しているのは周知の事実だから、欧州車好きが買っても違和感は無いだろう。
このアクセラの最大の問題点はマツダ車であることで、世間でのステータスの無さや未だにリセールが悪く、乗り潰しを覚悟でないと手を出しかねる、等の事実は現実的には大きなネックとなる。
そういう意味ではスペック的には同クラスで良きライバルであるインプレッサは、コテコテのスバルフリークがいたりとマツダに比べてマニアックなイメージが強く、 水平対向エンジンと共に、どちらかといえばマニア向けのイメージが強い。何れにしてもCセグメントの実用ハッチバックとしては、アクセラとインプレッサはどちらを選んでも大きな不満は出ないだろう し、トヨタ的なクルマを嫌う向きには良い選択肢でもある。

注記:この試乗記は2009年6月現在の内容です。