トヨタ プレミオ 1.8X Lパッケージ
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スバルインプレッサがフルモデルチェンジ(FMC)されて、クルマ好きには結構話題が絶えないこの時期に、実はもう一台、FMCされた車種がある。 その昔はミドルクラスのオーナーカーとして最も売れ筋だったコロナとカリーナは、何時の間にやらプレミオ/アリオンと改名され、現代のミニバンブームの陰に隠れて、実に目立たない、マイナーな存在となってしまった。 とはいっても、先代のモデル末期ですら3月の登録台数は両車合わせて約7000台と、決してバカに出来ない数が売れている。 これは、地味ながらも確実な需要があるという事を物語っている訳だから、試乗する価値は十分にある。

新型の外観は正直言って何処が新しくなったのか、よく判らないほどにキープコンセプトで、知らない人から見れば、これがFMC版であることに気が付かないだろう。 今回の試乗車は主力車種の1.8X、その中でもオプティトロンメーターや革巻きハンドルなどを装備した“L”パッケージ(203.7万円)というグレードで、おそらくは一番の売れ筋となる筈だ。
ドアを開けて室内を見渡すと、ダークグレーの内装色に多少粗い織り目のファブリックシートなど、数年前のBMW3シリーズに代表される欧州車の雰囲気がある。 数年以上前の国産車の内装といえば、なにやらケバケバした中途半端な毛足の化繊モケットシートで、見かけの割にはツルツルと滑るし、2年も乗れば毛足は剥げるは、汚れるはで、とても見られなくなる代物だったが、 それに比べれば随分とマトモになったものだ。今度はシートに座ってみると、これも数年前よりは大いに進歩していて、太股までシッカリとサポートするし、5分もすれば安物のウレタンが沈んで座り直すような事もない。 シートの右側面中央の大きなレバーは、これも最近の欧州車並みに大きめのラチェット式の座面上下レバーで、確か数年前にポルシェボクスターに始めて乗ったときに、その便利さに感心したのだが、 早くもパクって、ではなく取り入れている。こういう便利な機能をいち早く取り入れるのは良い事だ。そして、これもシートアジャストの定番でもある座面前部下にあるレバーでロックを解除しての前後調整とシートのサイド手前のレバーでバックレストの角度を調整する。 このバックレストの角度調整も結構細かいストッパーになっているから、以前のように最も立てても寝すぎていて、これじゃあ寝ッ転がって運転するノウ○ョウオヤジ運転しかできなじゃないか、なんていう事もない。

リアのスペースもこのクラスとしては十分で、これなら大人4人の長距離移動でも苦にならない。しかも、リアシートのバックレストもリクライニングが可能で、これは実際に有用かどうかは疑問があるが、一般的な国産車オーナーなら、これをみれば十分に納得すること間違い無しだ。 もちろんセンターからはアームレストが出てくるから、リアーシートリクライニング機構とともに、リアパッセンジャーはプチ高級車的感覚に浸れる。 しかも先代プレミオからの伝統で、リアシートバックは6:4分割で前にも倒せるから、高ささえなければステーションワゴン的に長物を積むことも出来る。


プレミオのダッシュボートは指で押すと凹むし、叩いてみれば衝撃を吸収する、真っ当なパットとなっている。最近は見かけだけは如何にも革のようなシボがあるが、何の事は無い、単なる硬質の樹脂 製だったりする場合が多いが、プレミオはお手本にしたと思わるBMW辺りと機能的には変わらないところがエライ!
それ以上に驚くのは、オイル仕上げのような木製トリムで、ニス仕上げのようにピカピカではなく、表面は細かい木の凹凸も付いていて実に良い質感をしている。ところが、何とこれはプラスチックの“木目調”! それにしてもコレほど出来のいいフェイクウッドも初めてみた。 センタークラスターにはベースグレードを除く“L”および“EX”のパッケージには、標準でカラーバックモニターが装着されている。 ただしHDDナビゲーションシステムは24.9万円のオプションとなる。サイドとカーテンエアーバックは全グレードにオプション(6.3万円)設定されている。 これは標準装備にしてもらいたいが、インプレッサのように最上級車種のS-GTにのみオプション設定があり、しかも抱き合わせというのに比べれば、オプションとは言え単独で選択できて、しかも全グレードで選べる点では良心的でもある。

アイドリング中のエンジンの静かで振動のないことは流石にトヨタ車と納得するが、マークX以上のクラスに比べると多少の振動と音を感じるから、 クラウンのようにエンジンが掛かっていることを確認するには回転計を見る必要がある・・・という程ではない。
ATセレクターのベースプレートはどこかで見たようだと思って考えてみれば、そうだ、マークXとソックリだ。ただし、プレミオの場合はCVTを採用している。 ゲート式のセレクターはDの右がSで、更に手前にBというポジションがある。これは Engine Brake のBらしく、下り坂などで使用するモードということだ。 セレクターのあるセンターコンソールやドアサイドのパワーウィンドウスイッチなどにも、例の“木目調”パネルが使われている。

正面のメーターパネルには左に回転計と右に速度計があり、当然ながらトヨタ得意のオプティトロンという自光式で、両者の中間には水色のディスプレイがある。 その質感も流石はトヨタで、一見高級感に溢れている。ところが、良く見ればセンターのディスプレイはショボイ液晶なのだが、よくあるグリーン系ではなく鮮やかなブルーの為に、アウディ等の赤いLED顔負けの質感を出している。 自光式メーターにしても、レクサスISやGSなどに使われているとトヨタ丸出しで白けるが、プレミオならば200万円のクルマとは思えない高級感に浸れるから不思議だ。
   

インテリジェントキーを身につけてブレーキペダルを踏み、スターターボタンを押してエンジンを掛ける。 セレクターをDに入れて左足でプッシュ/プッシュタイプのパーキングブレーキを解除して走り出すまでの一連の動作は、正にトヨタ車の典型だ。 走り始めると、1.8ℓ 135psの2ZR-FEエンジンは、それこそ必要十分な動力性能と表現したくなるくらいに、特に速くはないが、イライラするほど遅くもない。 普通のドライバーにとっては、これ以上何が必要なのだと考えてしまう。
流れに乗って巡航している限りでは静かな走行音も、アクセルを強く踏みつけると決して短くないタイムラグの後に回転計の針は4000rpm辺りを指し加速を始め、この状態では煩いし音質も良くない。それに加速性能も音の割には速度は大して上がっていかない。 とはいえ、このクルマは1.8のファミリーセダンだから多くを期待してはいけない。なぜなら、フルスロットルなんて一生踏まないようなユーザーが対象なのだから。

試乗車は標準の15×6Jスチールホイールと195/65R15タイヤを装着している。 このクルマのユーザー層から見ればアルミホイールの必要性なんて全く感じていないだろうから、この選択は正解だ。乗り心地は意外にも硬く、普通の舗装路面を走っていても常に細かい振動を拾う。 実はプレミオの試乗に先立って、国産車としては異例のネコ足とも言える話題のインプレッサ15Sに乗っていたので、余計プレミオの足が硬いと感じたのかもしれない。 ただし、少し慣れればコンな物かと気にしなくなる程度でもある。硬めの足の恩恵は、これまた典型的なオヤジ車としては意外にも安定した挙動に現れている。 ステアリングは適度に軽く、レスポンスも良くは無いが、悪くも無い。今回はチョイ乗りだったためにコーナーリング云々については語れるほどの走行はしなかったが、 一級国道を含む一般的に流れている速度では、カーブがあっても極普通に曲がることができ、ステアリングの感覚もセンタリングも自然で VWゴルフとは言わないまでも、最近の出来の良いFFの仲間に入れてやってもいいだろう。
走ると曲がるは正に80点だったが、それではブレーキはと言えば、これも効きは適度で、ペダルの剛性感やストロークもマアマア。そう、止まるもやはり80点だった。

メーカーの目論むプレミオのユーザー層は、ズバリ団塊世代とのこと。退職金を手にして、新たな人生をスタートするに当たっては、今後の年金生活に移る前に必要なものを退職金で揃えるのが普通とか。 そこで、車も今後一生の足とするべく乗り換えるには、何より経済的で、しかしミジメに成る程小さくもなく、チャチでも無く、適度の贅沢を維持したい。正にそんな要望に従ってFMCされたのが、今回のプレミオということだ。 特にクルマに対する思い入れの無いユーザーにとってプレミオは何の不満もでないだろう。200万円という価格が高いか安いかは、ユーザーの考え方や収入・資産などの環境で大きく変わるから、何とも言えない。 それにしても、このプレミオこそが、最もトヨタらしいトヨタ車であることは間違いない。

注記:この試乗記は2007年6月現在の内容です。