TOYOTA Mark X Zio
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ブレイドとヴァンガードに続き、トヨタのブランニュー第3弾のマークX ジオも前2車と同様に世間での非難の的となっている。その、最大の理由は、このクルマの車名にある。マークXといえば、誰もが想像するのは6気筒エンジンにリア駆動(FRもしくはRWD)のハイオーナーカーで、買い得価格ではあるが、高級乗用車のセオリーに従っているクルマだ。ところが、このジオは横置き4気筒の前輪駆動(FFもしくはFWD)。だから、ジオはどう考えてもマークXを名乗るような育ちではない。実際の販売現場でも、ユーザーの多くがFRの6気筒と勘違いしている場合が多く、説明に苦労しているという。でも、まあ、この手のクルマのユーザーなんて、どうせ違いなんかが判るわけはないのだが。あっ、そこのディーラーマンのあなた!「お客様の腕前では、FRもFFもヘチマも無いでしょう。ちゃあんと走れば、ナンだって良いじゃないですか」なんて言ってみたいでしょう。う〜ん、気持ちはよ〜く判りますよ。

  

先ずは上の写真でヴァンガードと比べてみれば、成るほど、背の高さが違うくらいで、あとは似たようなクルマに見える。そして、ジオのデザインも評判が悪い。しかし古今東西で、後世に語り継がれる斬新な名デザインというのは、発表当時は結構ボロクソいわれたりするものだ。そうはいっても、ジオが名デザインと評価されることは無いとは思うが・・・・。

    ブレイド ヴァンガード マークX Zio マークX
      2.4 240S 240 250G

寸法重量乗車定員

全長(m)

  4.260 4.570 4.695 4.730

全幅(m)

  1.760 1.815 1.785 1.775

全高(m)

1.515 1.695 1.550 1.435

ホイールベース(m)

2.600 2.660 2.780 2.850

車両重量(kg)

  1,390 1,620 1,570 1,510

乗車定員(

  5 7 7 5

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

  直4 DOHC 直4 DOHC 直4 DOHC V6 DOHC

排気量(L)

  2.4 2.4 2.4 2.5

最高出力(ps/rpm)

  167/6,000 170/6,000 163/6,000 215/6,400

最大トルク(N・m/rpm)

224/4,000 224/4,000 220/4,000 260/3,800

トランスミッション

  CVT CVT CVT 6AT

駆動方式

  FF 4WD FF FR

タイヤ

タイヤ寸法

205/55R16 225/65R17 215/60R16 215/60R16

205/55R16 225/65R17 215/60R16 215/60R16

価格

 

車両価格(\)

  2,247,000 2,688,000 2,560,000 2,751,000
 

備考

      4WD(277万円)  

表を見れば一目瞭然で、やはり本物のマークXはクラスが違う。にも係わらず、価格は殆ど違わない。それどころか、鉄っチンホイールを気にしないのなら、廉価版のFパッケージを選べば、価格は247.8万円と逆転さえしてしまう。最近のクルマは値上がり傾向にあり、新型が発売される時点では価格が上がっているのが普通だから、マークXを狙っているのなら、モデル末期の今が買い時で、恐らく次期モデルに250万円以下の設定はないと思う。

今回の試乗車はベースグレードの7人乗りで、価格は256万円。と、いっても実際にはナビが付いていたから、諸経費を含めた総額は300万円を 軽く超えるだろう。
ベースグレードのシートは言うまでもなくトヨタ丸出しで、ヴァンガードの試乗車がアルカンターラ/レザーのコンビという高級仕様で高得点を稼いだのに対して、こちらは、まあ”其れなり”だ。
内装もトヨタ丸出しだが、本物のマークX程には金をかけていないのがハッキリと判ってしまう。

走り出した第1印象は、先日乗ったヴァンガード以上にトルク感があることだ。エンジンは同じで、車重もZioが軽いといっても50kg程度だから、原因は駆動方式か?ヴァンガードは4WDで試乗したZioはFFだから、4WDの駆動方式によるロスが効いてきているのだろうか?4WDといっても通常はFFと変わらないスタンバイ方式なのだが、それでも効率が悪いのかもしれない。幹線道路に出て、フルスルットルを踏んでみると、やはりヴァンガードよりも軽快な加速で、これならば大多数のドライバーから不満が出ることは無さそうだ。
ところで、ジオの2.4L搭載車のボンネットを開けて気が付いたのは、横置きエンジンの前方に出るエキマニが大きく上に湾曲していて、ここには金属製のカバーがかかっていたが、走行後にはかなりの熱を持つ(写真下の2.4、エンジン手前のシルバーの部分)。よく見ればカバーにプレスで手の平の絵に×が書いてあるから、触るなという意味なのだろうが、これで火傷のクレームが来る事はないのだろうか?



ステアリングは適度に軽く、印象的にはヴァンガードに近いフィーリングだった。そこで、今回は道路が空いていたこともあり、2車線の幹線道路の速めに流れである80km/h程度から、減速せずに少しきつ目のコーナーを回ってみたが、この速度になると不安定な挙動の兆候を見せ始めた。この状況は一般のファミリードライバーとして は目いっぱい速めの通過速度だから、これ以上の危険速度で回ることは想定していないというか、見切っているのが判る。並みのドライバーの速度範囲ならば実に安定した良いクルマとの印象も、一度ある速度領域を超えると、途端にボロを出す。まあ、そんな速度で走るのは特殊なユーザーだから対応しないという事なのだろう。

乗り心地はヴァンガードに似て路面の細かい振動も良く吸収するし、それでいて一般的な速度域では安定感も高く中々良い。前回のヴァンガードで試せなかった強い段差での状況にトライするために、マンホールや配管工事なとの補修跡で出来の悪い部分を探して、通過してみた。この時のジオは確かにフラットな路面での乗り心地の良さから一転して強い突き上げを喰らうが、残念ながら(?)それでも世間で言われているほどには酷くはなかった。

ブレーキもまた、普通に使う分には標準的な性能だが、今回は強めの制動を試してみた。先ずはパニックブレーキという程でもないが、一般的には強めの制動を試みたら、行き成りペダルにガッガッガッという振動を感じ、ABSが作動したこと を知らせてきた。ABS作動ということは、タイヤがロックの状態に至った訳で、それ以上踏んでも減速度は上がらないだろう。もっとも、リアのみがロックしたのなら、更に踏み込めばフロントロックまでは 減速度を上げる事はできるが、それにしても、ABSの作動が早い。これでは、本当のパニック時の急ブレーキとしてはイマイチ心もとない。ブレーキもまた、普通のドライバーには一生の内に滅多には遭遇しないであろう状況までは対応していないことも判明した。

このジオはオデッセイを仮想敵としているらしいが、対ホンダではストリームvsウィッシュで、あまりにも露骨に同じようなクルマを出して、世の中のひんしゅくをかった反省からか、今回はコンセプトも外観も大分異なるクルマとなっている。そのオデッセイといえば、世間ではスポーツカー的な性能と言われているが、実際乗ってみれば、あっと驚く剛性不足のヨレヨレボディに、低回転スカスカの低トルクエンジンという、一体何処がスポーツカー並なんだという代物で、取り分け若者憧れのスポーツグレードのアブソリュート(通称オデアブ)なんて、酷いの一言だった。友人で”オデアブ”を買ったが、結局1年と持たずに買い換えたという例があったが、せめてもの救いはアンちゃん達に人気があるお陰で、リセールバリューが良かったことだ。
そのオデッセイに比べれば、ジオの走行性能は圧倒的に勝っている。ただし、スタイルはどう見てもオデッセイの勝だし、室内の広さや雰囲気もオデッセイに軍配が上がりそうだ。元々、トヨタユーザーがホンダディーラーへ行くこと自体がレアケースだから、競合は無いだろうし、何より既にオデッセイ自体が飽きられたり、内容がバレたりして、最盛期に比べたら売り上げは大きく下降している。

今回、ジオに乗ってみて、成るほど普通のユーザーが普通に(大人しく)走る分には、取り立てて文句は無い性能となっているから、乗ってみれば「う〜ん、中々良い車じゃないか」と満足して、見事に御成約と相成るのだろう。しかし、少しハードなコーナーリングをすると、たちまちバレる足回りのひ弱さや、大きな段差では急に突き上げを食らうし、パニック時の性能に疑問が残るブレーキシステムなど、トヨタの思想どおりのクルマだった。確かに普通のドライバーには、これで充分には違いない 、どころか、充分に良い車だ。世間のクルマ好きがボロクソ言う割には、このZioは、それなりの売り上げをするだろう。
それにしても、マークXという名称は、幾らなんでも、やり過ぎだったようだが・・・・。

注記:この試乗記は2007年9月現在の内容です。