トヨタ オーリス 150X
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先代までのカローラは主として欧州向けのハッチバック版をカローラランクスと呼んでいたが、FMCを期にオーリスという別の名称となった。と、いっても、これらが発売されたのは2006年秋だから、既に一年半が経過している。今更と言われそうだが、今まで試乗のタイミングを逃していた事もあり、今回の試乗となった。

試乗したのは ベースグレードの150X(162.2万円)にキーレスエントリーなど、多少の装備を追加したMパッケージというグレードで、価格は171.2万円。これにディーラーオプションのナビが付いていたから、実際の車両価格は190万円程度となる。

オーリスのインテリアカラーはダークグレーのみ。カローラというと御なじみのアイボリー系の内装はオーリスには設定がない。そしてシート表皮もカローラ御なじみの毛足が多少長が、直ぐに禿げてきそうな安物のモケットもどきではなく、欧州車的な平織りで、カローラの名前を取り去ったことと一致して、内装も比較的ヨーロッパナイズされてはいる。車内のスペースは大人四人が乗るには十分、といっても今やこのスラスで、リアが狭くて乗っていられないなんていうクルマは無いに等しいが・・・・・・。
シートの座り心地も旧来のトヨタ車と欧州車の中間くらいで、国産丸出しのフニャフニャシートではないが、何となく背中のサポートがイマイチだし、座面も短い試乗時間ですらポジションが動いてくるような、まあ、その面では程度の差はあるが、トヨタ製大衆車の面影はキッチリと持ち合わせている。

ダッシュボードは何処かで見た覚えがあると思ったら、ブレイドそっくりだった。いや、ブレイドがオーリスの内装(とプラットフォームやボディも!)を流用したのだが、あちらは部分的に人工の裏皮(アルカンターラなどと同等品)を貼って誤魔化して、ではなく高級感を持たせているが、オーリスはプラスチック丸出しのまんまだった。それでも、190万円のクルマと思えば腹も立たない(ブレイドマスターGは300万円超えだから文句もでる)。

CVT のセレクターをDに入れて走り出すと、1.5Lにしては十分なトルク感がある。いや、まてよ。ここで感心すると踏み始めだけトルク感を演出する特性だったりで、 踏み込んだらガッカリというのはよくあることだから、油断は禁物。 と思ったのだが、その後もマアマアの加速を示してくれた。オーリス150のミッションはCVTだが、加速と共にエンジン回転数は上昇してゆき、ある程度回転が上がったところでストンとさがる。要するにCVT的な違和感を取り払い、無段変速のCVTをわざわざトルコンAT的に使っている。 しかし、このお陰でCVT独特の違和感がないし、踏み込んだ時の加速が、ATのキックダウン的となり、イライラ感も少ないのはメリットだし、個人的には悪くないと思うが、本来のCVTのメリットはと考えると疑問も残る。

今度はCVTのセレクターをDから右に 倒してS(スポーツ)を選んで見ると、確かに常用する回転数がDレンジよりも800〜1000rpm程度高くなった。 次に停止からのフル加速を試みると、やはり1.5Lの排気量は隠しようがなく、音が煩いわりには加速が緩慢だが、ティーダもインプレッサも、1.5の加速はオーリスと同様に遅いから、文句をいう筋合いではない。いや、それどころか他社のライバルよりは多少速いようにも感じる。  

カローラといえば以前試乗した1.5Lのフィールダー(ワゴン)が余りにも酷かったので、今回も期待はしていなかったが、旧カローラ(新型は未だ乗っていない)よりは大分マシだった。ステアリングは停止状態では中心付近で左右に10°程度は グニョグニョ回るが、走り出せば思ったほどにはトロクないし、中心付近の不感帯も走っているときは何とか許される範囲だった。 ただし、ステアリングギアの減速比は大きいらしく、ちょっとしたコーナーでもステアリングホイールを大きく回す必要があるし、直角に曲がる交差点の左折などでは、 両手を途中で何度か持ち返す必要がある。コーナリング自体もそれほどには酷くはないが、少なくともスポーティという言葉とは縁が無いと思ったほうが良い。

試乗車は下から2番目のグレードだから標準では15インチのスチールホイールにキャップ、タイヤは195/65R1 5と大人しいというか、ショボいサイズを履いているのが乗り心地の面では逆にメリットとなるようだ 。 路面の凸凹での突き上げも少ないし、車全体が柔らかい乗り味に包まれている。このフィーリングは何処かで覚えがあると思ったら、何と新型クラウン(ロイヤルは当然、アスリートも)でも感じた、 独特の柔らかさに近いものだった。なるほど、オーリスは欧州テイストとは言っているが、トヨタの高級車路線のボトムを支えているのかもしれない。
そしてブレーキフィーリングはといえば、最初の遊びを通り過ぎても、ペダルはまだグニューっと奥に入っていくという、あまり褒められた物ではなかった。最近の国産車のブレーキがFMCを機に軒並み性能アップしている中で、オーリスのブレーキは、旧世代の国産車フィーリング、要するに出来は良くないほうだった。と、言っても、危険という訳ではないし、軽自動車などにはもっとレベルの低いブレーキもあるから、ボロクソ言う程でもないし、このクルマのユーザー層から考えたら、こんな程度のブレーキで充分と踏んだのだろうか。

そして、何時ものように、ライバル各車の仕様を比較してみた。

    オーリス ティーダ アクセラ インプレッサ VW
150X 15M スポーツ 15F 15S GOLF E

寸法重量乗車定員

全長(m)

 

4.220

4.250

4.400

4.415

4.205

全幅(m)

 

1.760

1.695

1.745

1.740

1.760

全高(m)

1.515

1.535

1.465

1.475

1.520

ホイールベース(m)

 

2.600

2.600

2.640

2.620

2.575

最小回転半径(m)

5.2

5.2

5.2

5.3

5.0

車両重量(kg)

 

1,240

1,150

1,240

1,260

1,320

乗車定員(

 

5

5

5

5

5

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

 

4 DOHC

4 DOHC

4  DOHC

水4 DOHC

直4 DOHC

総排気量(cm3)

 

1,496

1,498

1,498

1,498

1,597

最高出力(ps/rpm)

 

110/6,000

109/6,000

114/6,000

110/6,400

116/6,000

最大トルク(kg・m/rpm)

14.3/4,400

15.1/4,400

14.3/4,500

14.7/3,200

15.8/4,000

トランスミッション

 

CVT

CVT

4AT

4AT

6AT

駆動方式

FF

FF

FF

FF

FF

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

ストラット

ストラット

ストラット

ストラット

 

トーション
ビーム

トーション
ビーム

マルチリンク

ダブルウィシュ
ボーン

4リンク

タイヤ寸法

 

195/65R15

185/65R15

195/65R15

195/65R15

195/65R15

ブレーキ方式

Vディスク

Vディスク

Vディスク

Vディスク

Vディスク

ディスク

ドラム

ドラム

ドラム

ディスク

価格

     
 

国内価格(¥)

 

1,712,000 

1,630,000

1,600,000

1,512,000

2,450,000

備考

5MT設定あり

5MT設定あり

国産の4車のうちでリアにもディスクブレーキを装着しているのは、何とオーリスだけだった。それにしてはオーリスのブレーキフィーリングはイマイチ剛性感にとぼしかった。いや、この1.5Lクラスで無理してリアまでディスクにしたために、かえってフィーリングを悪くしたとも考えられる。ドラムブレーキというのは鋳鉄製のゴッツいドラムにシューを押し付けるので結構剛性感がある ことと、構造上から自己倍力作用を持つので、ブレーキ液で押し付けた圧力に対して、3倍程度のブレーキ力を発生するから、その分シリンダーの面積が小さくて 済む 。そしてシリンダーが小さければブレーキ液の押し出し量も少なく、これがペダルストロークの減少という、結構良いことずくめの特性がある。このドラムブレーキの欠点は、放熱が悪いためにフェードし易いことと、水の中に入ると、その後の回復に時間が掛かることなどだが、普通に大人しく走る場合には、むしろメリットが多い方式でもある。
リアにディスクブレーキを奢った割には、オーリスのリアサスはトージョンビームというのは情け無い。それに対して、欧州志向のインプレッサとアクセラは独立懸架を採用している。そして、ティーダはといえば、マーチのブラットフィームを基本としていることもあり、こちらもトーションビームとなっている。それが原因かどうかは別としても、乗り味や旋回性能はインプレッサとアクセラが一枚 (いや、2枚以上)上手なことは今更言うまでもない。しかも、この2車はMTを選べる点でもマニア向けだが、1.5のMTというのは動力性能が物足りないような気もする。 何言ってんだ!その少ないパワーを使ってMTを効率的に使うのがマニアックなんじゃないか、と怒っている1.5LのMT乗りの様子が目に浮かぶが、そういうあなた達は今の世の中では明らかに少数派。それでも、MTをラインナップしているスバルやマツダに感謝、感謝。

話が妙な方向にずれてしまったので、オーリスに戻すと、試乗中に「だめだ、こりゃ!」とまで思うことは無かったが、終わってみて何が印象に残ったかといえば・・・・ハテ、何にも無い。 正に可も無く、不可も無く。
いや、あった。試乗車のダッシュボードが埃だらけだった事と、飛び込みとはいえ、営業マンが完全に無視というか、全く口をきかなかったこと。 実はオーリスに試乗する前に、クラウンアスリートにも試乗したのだが、同じトヨタのディーラーとはいえ、その対応と人材には、正に天と地との差があった。今や世界一のカーメーカーでもあるトヨタの自国での販売網に、 はっきり言って”落ちこぼれのお荷物チャンネル”を持っているというのも、何だか不思議だが。そう考えると、トヨタはオーリスというクルマを本気で国内展開する気は、今現在は無いのだろう 、と疑いたくなる。とりあえず、出しておいて様子を見る。本気でいけると思ったらば、その時はメインの販売チャンネルで本格的な展開をすれば良い。そんな、ところだろうか。

注記:この試乗記は2008年4月現在の内容です。