AUDI A4 1.8TFSI (2008/8/12) 後編 ⇒前編


 

エンジンの始動は最近のクルマだから、当然ながらインテリジェントキーとスタートスイッチにより行う。1.8Tのミッションはマルチトロニックと呼ぶ無段変速で、日本流に言えばCVTを搭載している。セレクトレバーはP→R→N→Dで、Dの手前にはSがあるというアウディ&VWに共通なパターンで、Dから左に倒すとマニュアルモードとなり、押してアップ、引いてダウンというのも一般的だ。ブレーキペダルを踏み、セレクターを左手親指付近のロック解除ボタンを押 しながらDに入れて、パーキングブレーキを解除しようとして・・・・・さて解除の方法は?実は新A4のパーキングブレーキは最近流行の兆しがあるスイッチ式を採用している。CVTのセレクトレーバーのあるコンソール周辺には多くのスイッチが配置されているが、右の奥がパーキングブレーキのスイッチとなっている (写真12)。なお、このパーキングブレーキ機構は、セレクターをDに入れてアクセルと踏む事で解除され、これは坂道発進補助機能(日本ではHSAなどと呼ばれている)と して使える。

走り出しての第一印象は、1.8ℓとはいえどもターボによる過給のための充分なトルク感があることで、この点では同一価格帯の強力なライバルであるBMW320iよりも明らかに勝っている。まあ、最大トルクで言えば2.5ℓの325iと同等なのだから、当然といえば当然だが。 というわけで、1.8TFSIの充分なトルク感には感心したが、良いところばかりではない。すなわちターボのデメリットであるレスポンスの悪さについては、このクルマも右足を踏んだ後に一瞬遅れてからトルクが立ち上がるのがハッキリと判ってしまう。同じ1.8ℓでもスーパーチャージャーを採用しているC200の方がレスポンスが良かったが、 過給のレスポンスが良いことはメカチャージャーのメリットだから、これまた当然の結果でもある。
1.8TFSIのエンジンスペックを見ると最高出力が 160ps/4,500-6,200rpm、最大トルクが25.5kg-m/1,500-4,500rpm となっている。最大トルクを1,500-4,500rpmの広い範囲で発生するのはターボの特性 だとしても、最大出力が4,500-6,200rpmという広い範囲で得られるというのが腑に落ちなかったが、左の特性 図を見れば成る程、電子制御のメリットを生かして4500rpmから上は回転数が上がるのに反してトルクを下げている。
それでは実際にフルスロットルを踏んだらどうかといえば、特性曲線のとおりで、4500rpmまでは実にフラットなトルク感だった。1.8Tのミッションはアウディでいうマルチトロニックという無段変速機で、いってみればCVTそのもの。それでも、国産 車のように、フルスロットルを踏んでも少し回転が上がるだけで、あとは一定回転を保ちながら速度が上がっていくという不自然な感覚は殆ど感じられない。このクルマがCVT搭載であると知らなければ、5〜6速のトルコンATと勘違いするかもしれない 。
アウディ(&VW)のセレクターポジションはDの手前にSがあり、ここを選択すると回転計の針は1000rpm程上昇するが、トルコンATで1速分シフトダウンしたような感覚だから、これもまたCVT的な違和感は無い。Dから左に倒せばマニュアルモードになるのだが、今回はマニュアルでレッドゾーンまで引っ張るということはやらなかった。試乗したコースが1車線の一般道だったことと、何よりDレンジでフルスロットルを踏んだ時の雰囲気から、このエンジン特性で6000rpm(それでもゼブラゾーンでレッドゾーンに至っては7000rpm!)まで引っ張っても無駄な気がしたからだ。そして、絶対トルクとしてはBMW325iと同等だが、あちらは自然吸気の直6で、しかもシルキーシックスと呼ばれるフィーリング抜群のエンジンだから、A4 1.8Tとは価格的に100万円高い のも伊達ではない。それにしても、A4の場合1.8Tの上が行き成り3.2で価格差も200万円というラインナップは何とかならないのだろうか。
 


写真9
アウティといえば赤いディスプレイというのが約束だったが、今回のA4は白い表示だった。しかし、6000rpmからゼブラゾーンでレッドゾーンが7000rpmの回転計は誇大表示の気がするが?

 


写真10
オーディオ&エアコンのパネルは樹脂製だが、質感は結構良い。

 


写真11
主要スイッチの殆どがATセレクターの周りに配置されている。手前のリングダイヤルはBMWのiDRIVのようなもの。

 


写真12
パーキングブレーキはスイッチによる電気式で、Dをセレクトしてアクセルを踏んでも解除される、坂道発進機構を持つ。

 


写真13
アウディはライバルのBMWやメルセデスよりも仕上げが良いというのは事実で、樹脂の質感や表面処理も丁寧だ。

 


写真14
エアコンのエアアウトレットなどの質感も良いし、ダッシュボードのシボ模様を含めた質感にも拘りを見せているのが判る。今でも3シリーズやCクラスを一歩リードしているようだ。
 

 

    
写真15
直列4気筒、1.8ℓエンジンはインタークーラー付きターボにより160ps/4,500-6,200rpmの最高出力と
22.5kg・m/1,500-4,500rpmの最大トルクを発生する。
 

A4 1.8Tで走り出した瞬間に感じた事は、乗り心地が柔らかく路面に凸凹があるとクルマがシーソーのように揺れる、いわゆるピッチングを感じることだ。 といっても、別に決して不快ではないし、人によっては高級車っぽくて好ましいかもしれないが、ドイツ車独特の硬い乗り心地を好むユーザーは違和感を感じるかもしれない。ただし、試乗したベースグレードはタイヤも 255/55R16という大人しいサイズが標準となっていたが、スポーツパッケージを選べば245/40R18タイヤとスポーツサスペンションにより、車高も20mm低くなるようだから、硬くてスポーティーな乗り味を好むユーザーはこちらを選べばよいだろう。このピッチングを伴う柔らかさは同じアウディのQ7に乗ったときにA4以上に感じたが、これは最近のアウディの コンフォートモデルの味付けなのかもしれない。
A4のステアリングは低速では非常に軽く、交差点を左折する場合などは片手でクルクルと回ってしまうが、40km/h程度になれば適度な重さとなって違和感はない。中心付近からのステア リングレスポンスは特にクイックではないが、トロクでイライラする訳でもなく、このような実用サルーンには適している。走行時の安定性も悪くはないが、アウディというブランドから想像する、クワトロ(4WD)による完璧な安定性を 求めると、”所詮はFF”という物足りなさを感じることも事実だ。最近の物価上昇により、クルマも軒並み値上げされている現在、400万円のクルマというのは決して上級車ではなくなってしまった事を痛感する。

ハンドリングについては今回はワインディング路の類は走っていないので正確な記述は出来ないが、FFとしては癖もなく素直だから、普通の乗用車としては充分に満足できるだろう。ただし、コーナーを攻めるのが趣味・・・・なんていうユーザーの要求を満たすかといえば・・・・さて。 まあ、乗り心地の良さなどの特性をみても、そういう用途で無いことは確かだ。そういう点では、スポーツパッケージ装着車に興味が湧く。ただし、アウディでもクワトロの場合には、街中のチョットしたコーナーでも意外と曲がらなくて、慌ててステアリングを切り増したことを思い出すと、むしろFFのA4 1.8Tの方が素直な特性なのかもしれない。

ブレーキについては結構良いフィーリングで、BMW程はカックンではないが踏力は充分に軽い。しかも、踏力を増すにつれてある程度ストロークするのだが、それがリニアなこととストローク自体は短いのでコン トロールは容易だ。これは良く言えばポルシェ的でもある (ちょっと言い過ぎか)。キャリパーを見ればパッド形状から恐らくBMWと同一のメーカー(ドイツテーベス社)製と思われるから、この違いはパッドの特性によるのだろうか。そして、A4(B8)のキャリパーはグレードにより1.8Tではベースとスポーツパッケージでは異なり(写真17)、更に3.2ではBMW5シリーズと同系のものが使われていた。
 


写真16-1
1.8Tのベースグレードは7.5J×16ホイール、225/55R16タイヤという、大人しい組み合わせ。
 


写真16-2
1.8TのSEパッケージには
7.5J×17ホイール、225/50R17タイヤ の組み合わせとなる

 


写真16-3
1.8TのSport パッケージでは
8J×18ホイール、245/40R18タイヤ の組み合わせとなる

 


写真1
ベースグレード(左)とSportパッケージ(右)ではフロントキャリパーが異なる。なお、3.2のSportパッケージでは更に大型のキャリパーが装着されている。
 

 

さて、新型A4 1.8Tに乗った感想といえば、地味な内外装ではあるが出来や質感も良く、走ってみれば悪いところも無い。しかし、何か華がないというか、オプションによっては総額で500万円も出すだけの満足感があるのだろうかと考えてしまう。 そして、気になるのは大きくなり過ぎたサイズで、ライバルよりも室内が広いというメリットと、大きすぎて取り回しや保管スペースに不便を感じるというデメリットのどちらが評価されるのだろうか?郊外の一般的な分譲地の駐車場には、チョット大きすぎるような気もするが。今回試乗したベースグレードの車両価格である400万円前半というのは、今や国産車でも3.5ℓ級サルーンなら珍しくない価格だから、多くを期待してはいけないのかもしれないが、それにしてもこのクラスで人気ナンバー1のBMW320iのような、購入することで家族全員が何やらハッピーになるような雰囲気が無いのは事実だ。『何言っているんだ。320なんてパワーが無くて使えない。 あんなボッタクリ価格で買う奴が信じられない』なんて言っても、クルマ全体の魅力という点では320は伊達にベストセラーになっている訳ではないのも、また認めなくてはならない事実だ。そして、フルチェンジで少しライバルの3シリーズを意識しすぎたとの批判もあるCクラスにも、天下のメルセデスという”腐っても鯛”的な強さがあるから、これらを差し置いてA4を選んで貰うのは至難の技だろう。

御三家というのは、どうしてもメジャーな2人に対して、残る一人がパッとしない場合が多い。その昔のジャニーズ系アイドルに”田野近(たのきん)”といわれる3人がいたのを覚えているだろうか。としちゃん、マッチ、そして・・・え〜と。とか、アリスといえば谷村新司と堀内孝雄、そして・・・・。キャンディーズといったら・・・・等等。アウディA4も 田野近の野村くんやアリスの金ちゃんみたいな存在だったりする。実力的には決して侮れないのに、なぜか人気も知名度もイマイチ。
アウディは地味ながらも内容的にはシッカリした造りや素材も吟味するなど良心的なクルマであることは間違いない。しかし、世の中、特に未成熟な世界ではそういう手合いは評価されないのが世の常だったりする。これは社会に於ける人材でも同様で、未成熟のイマイチ会社では地味で実力があり、しかも本当に会社の為を思って良心的な仕事をしている社員は評価されない場合が多い。特に最近流行の目標評価制度なんていうのは、会社の利益なんか全く考えずに自分の評価が上がる事ばかり考えている寄生虫のような社員が好評価 をされる傾向がある。そして、全く無能な管理職が増えだして、元々全く仕事が出来ないから自分の部下が何をやっているか判らない。しかし、ウッカリ判を押して、後で責任を取らされたら大変とばかり、”ああでもない・こうでもない”とイチャモンをつけて承認を 延ばしたり、忙しい部下を呼びつけて自分の無知から下らない質問攻めにしたりするので、工数はかかるし実務者のモチベーションも下がり、業務は停滞しまく る。まあ、こんなバカ課長を部下につけた部長は、早いところバカ課長を何処かへ飛ばしちまったほうが身の為なのだが、この部長も同様に無能だったりすると、こういうバカのほうが使い易いということで、バカがバカを呼ぶ連鎖反動でドンドン組織は停滞する。最近はBMWやメルセデスなど、どう見ても割高のクルマが結構走っているという のは、日本もある面で成熟してきたのだろうか。しかし、アウディがもっと延びてこそ、日本も本当の意味で世界の先進国といえる・・・・・なあんて言ったら、褒めごろしになってしまうので、ここらで御免!