HONDA CIVIC TypeR (2007/4/22)
|
|
このスタイルは個人的には決してカッコ良いとは思えないが、セダンとしては何となく速そうには見える。
小型セダンと不釣合いな18インチのホイールが目を引くが、それ以外は案外大人しいスタイルなので
オジサンが乗っても恥ずかしくはなさそうだ。 |
|
ホンダと言えば、その昔はF1やS600/800というスポーツイメージの強いメーカーだったが、最近の国内での評判は「ミニバン屋」とまで言われるようになってしまった。そんなホンダの中では、如何にもホンダ的な小型の高性能スポーツがTypeRというサブネームの付いたクルマたちで、最近
まではインテグラTypeRが細々と売り続けられたが遂にそれも販売終了。いよいよホンダはこの道から手を引くのかと思っていたら、今度のTypeRは4ドアシビックをベースにしてきた。
とに角、ホンダファン、TypeRファンにとっては一安心というところか。そこで、今回はシビックTypeRを取り上げることにする。
可変バルブタイミング&リフト機構、すなわちVTECとよばれる高出力エンジンをコンパクトなボディに搭載した、言ってみればTypeRの前身としては1989年に登場した2代目CR-XのSiR
(写真1)がある。1.6ℓのB16A型エンジンは160ps、何とリッターあたり100psを発生した。TypeRという名称が使われたのは2代目インテグラのバリエーションとして1995年に誕生し
たのが最初で、当時はクーペと4ドアセダンの双方に設定があった。その後2001年にはフルモデルチェンジにより2代目(DC5)となった。一方シビックTypeRは1997年に6代目シビックのバリエーションとして追加され
、B16Bエンジンは185psを発生していた。2代目のシビックTypeR(EK9)は2001年より発売されたが、英国製を輸入したために他の国内シビックにはない3ドアハッチバックだった。K20Aエンジンは215psを発生してい
が、この2代目シビックTypeRも2005年9月に発売が中止されてしまった。その後インテグラTypeR(DC5)も2006年7月に発売を中止したために、TypeRも遂に終わりかとも言われていた
ところ、今回発売されたのが新型シビックTypeR(FD2)でエンジンは同じK20Aながら225psまでパワーアップされている。価格はオーディオレスが283.5万円、HDDナビ付きが312.9万円と先代(EK9)の上級グレードであるCパッケージの255万円に比べても30万円近い値上がりとなってしまったのは、財布の軽い若者がユーザーの多くを占めるTypeRとしては残念だし、何より総額300万円を越えるとなるとユーザー層が変わってしまわないかと余計な心配をしてしまう。
|

写真1
2代目CR−X(1987〜1992)
ホンダのTypeRの前身はこのCR-X SiR。
VTECにより1.6ℓで160psを発生した。 |
|

写真2
2代目のインテグラTypeR(DC5、2001〜2006) |
|
先代のシビックTypeRは英国製のために、日本には設定のない3ドアハッチバックボディだったが、今回の新型は4ドアセダンがベースとなる。試乗車はチャンピオンシップホワイトという白いボディで、スタイルの好き好きはとも角、TypeRといえば”白”というイメージどおりのものだ。ホワイトのボディにはホワイトのホイールが組み合わされ、内装は黒/黒と黒/赤
から選べるが、試乗車は黒/黒だった。ボディの塗装色は他に2種類あり、スーパー・プラチナ・メタリックというシルバーメタとビビット・ブルー・パールという濃い目ながら鮮やかなブルーが用意されていて、内装やホイールの組み合わせもホワイトボディとは異なる。
ベース車のシビックセダンに対しての、TypeRとしての差別化は大きなリアのウィング(写真3)くらいで、フロントやサイドのエアロパーツも控えめな形状だから
、外観は意外に大人しい。しかし、良く見れば、18インチのホワイトホイールや太いテールパイプなど、普通のファミリーセダンではないことが判る。フロントデザインは最近のホンダらしく、オデッセイやストリームなどの流れを汲んでいて、これは好き好きが分かれるだろう。
シビックセダンベースの恩恵は、リアにもドアがある便利さと、足元は狭いとはいっても、これまたマトモに大人2人が乗れるリアシートがあるし(写真5)、更にトランクスペースも十分(写真4)だから、これを一家に一台のファミリーセダンとして購入することだって可能だ。勿論、その場合には物わかりが良い家族の協力、若しくはペテン師顔負けの話術で家族を騙す事も必要だが・・・・・。 |

写真3
タイプRの特徴でもある大きなウィングが目を引く。
排気管は太い1本出しだが、良く見れは太いのは外径だけで、中は普通の太さだった。 |
|

写真4
ベースが普通のセダンだけあって、意外に広いトランクスペースを持つ。特に深い奥行きに驚く。 |
|

写真5
リアの足元は決して広くはないが、この手のクルマとしてはリアにマトモに大人2人が座れる点では貴重だ。人工スエードのシートは室内を結構高級な雰囲気にしている。 |
|

写真6
フロントのドアを開けた眺めもスポーツシートの形状と質感が目立って、ダッシュボードのチャチさを目立たなくしている。 |
|

写真7
フロントシートの形状はスポーツしまくりの雰囲気で、これは正解だ。勿論座り心地も良い。 |
|
|
|

写真8
さらに拡大すると座面は細かい凹みをつけて滑り止めにしている。 |
|
|
ドアを開けて目に入るのは、先代のレカロ製から今回は国産に変更されたスポーツシートで、表皮はセーレンというメーカーのラックススエードという人工の裏革
で、言ってみれば最近流行のアルカンターラの”ゾロ品”というところか。元々本革に比べて滑り止効果の大きい裏革を使用しているのに、座面部分には更に細かい凹み加工がしてあ
って、如何にもサポートが良さそうに見える。
実際に座ってみても、レカロ程にはガッチガチではないが座り心地は実に良いし、左右のサポートもレカロより少し緩めとは言え十分に
合格点を与えられる。それどころか上体の幅が広いドライバーには寧ろ好評ではないかと思えるくらいで、
国産シートとしては最高に出来が良い。
リアシートも人工スエードを使用していることもあり、室内全体は結構高級感があるが、ダッシュボードなどを良く見ればプラスチック丸出しで安っぽ
く、このクルマはシビックなんだと再認識する。それにも増して残念なのは正面にある安っぽく子供騙しのようなデザインの回転計と、その上にあるデジタル速度計だ。回転計というのは、この手のクルマでは命のようなものだから、これを毎日見るかと思うと、それだけで嫌気がさしそうだ。出来が良くて見かけも良いシートに比べて、何ともヘンテコリンなメーター類だが、考えてみればシートは標準のシビックとは全く違うものを用意して標準装備できるが、ダッシュボードの型を新たに起すことは不可能に近いから、
大衆車であるシビックの基本部品のありあわせで我慢しなければならないために、こうなってしまったのだろう。このメーターについては英国製の先代シビックTypeRのホワイトメーターが中々良かったこともあり、何とも悔やまれる。せめて回転計のパネルデザインくらいは何とか改良してほしいものだ。
まあ、これだけ世間で不評なのだから、何処かのショップがアフターパーツを発売するかもしれないが・・・・。
|
|

写真9
シート表皮の高級感で室内の雰囲気は良いが、良く見ればダッシュボードはプラスチック丸出し。
シフトレバーは何とコンソールの左に寄っていて、ステアリングから遠く、折角のエンジン性能や
強力なシンクロを持つ6MTの能力を大いにスポイルしている。
|

写真10
このクルマの最大の問題点であるガキっぽいデザインの回転計と見難い速度計。折角の8400rpmからのレッドゾーンが泣いている。 |
|

写真11
HDDナビは約30万円高となる。エアコンはフルオート。
「走り屋にエアコンはイラねえ」という場合はレスオプションで約25万円安い。 |
|

写真13
ペダル位置は左に寄っていたり、間隔が狭かったりとイマイチなRHDのMT(3ペダル)としては例外的にドライバーの中心に配置されてる |
|
|
|
|
|
|
|
いよいよエンジンを始動しようと、ステアリングコラムにあるキーシリンダにキーを差込み普通に右に回してONにするが、その先さらに回してエンジンを始動しようとしても回らない。
実は始動はダッシュボード右側にある赤いスタートボタンを押すのだった。最近のクルマはスターターがボタンという場合が多いが、このクルマのようにスタータースイッチのみがボタンというのはあまり例を見ない。エンジンをOFFにするには、もう一度スタートボタンを押すと・・・・全く変化はない!何とキーを左に回すとエンジンは停止した。しかし、あのスタートボタンの意味はナンなのだろう?アイドリング中のエンジンはNAのハイチューンエンジンらしく決して静かでもなく、振動もそれなりに感じるが、先代
(E46)のBMW330iのようにブルブルと車体を揺らすほどではない。
意外に軽いクラッチを踏み、シフトレバーに手をやろうとして無意識に左手を動かすが無い?良く見ればレバーは遥か左にあった。写真7を見てもらえば判るように、シフトレバーはコンソールの左に寄っていて、ステアリングからの距離が遠い。そのために、迅速なシフトをしようとすると左手の移動に時間がかかるのは、この手の性能
命のクルマとしては大いに問題がある。
それさえ気にならなければ、シフトのフィーリングは実に良いので何とも惜しい。発進の為にスロットルを僅かに踏んでクラッチを繋げてみると、1000rpm程度でスムースに発進できる。このクルマで発進
の際に回転が上がり過ぎたり、クラッチを繋ぎ損ねるようなら、このクルマを選ぶのは止めたほうが良いだろう。言い換えれば、この手のクルマに慣れたドライバーにとっては、絶妙のクラッチの繋がりとスロットルレスポンスを見せてくれる。
シフトレバーの位置がイマイチなのに対して、ペダル配置はRHDの3ペダルとしては最高の部類で、クラッチとブレーキの各ペダルはドライバーの体の中心に対して均等に配置されている。すなわち足を自然に延ばした位置に
両ペダルがあり、それより少し足を開いた位置にアクセルとフートレストがある。
出来の良いシートと理想的なペダル配置は長時間の走行でも助けになることは間違いない。
走行中のエンジン音は穏やかな走行をしたとしても、常に前の方からメカニカル音が聞こえる。これは好き物にとっては堪らないが、普通の人からすれば只の騒音に感じるかもしれない。強いて言うと、これだけ高性能を予感するメカ音のクルマなら、多くはドライバーの後ろからエンジン音が聞こえるのに、これは前から聞こえる事に違和感を感じる、なんて思うほどにマニックな音がする。
そして、いくら背中にウィングを持つといっても、所詮は4ドアセダンの外観と、このエンジン音が釣合わない、と思うほどに気持ちの良い音がする。
ところで、このフロントから常に聞こえるバルブなどのメカニカル音というのは、何か懐かしい気がすると思って考えてみたら、そうだ!30年前に2年程乗っていたことのあるカリーナ2000GTのヤマハ製ツインカムである18RGUを思い出した。
それにしても、レッドゾーンが8400rpmという市販車の常識では考えらない高回転型エンジンを積むサルーンというのは、この価格帯では他に類がない。いや、価格を無視しても8000rpm以上回せるサルーンと
いうのは千数百万円のM5くらいだら、高回転型エンジンにおけるホンダの技術が世界一であることに異論はあるまい。この高回転エンジンは流石に2000rpm以下ではトルクが細く、一瞬の加速が必要な時の瞬発力という
面では全く頼りにならない。
そのため、少なくとも3000rpm以上で巡航するのが、このクルマを楽しく乗りこなすコツといえる。
発進して4000rpm辺りでシフトアップしていくと、70km/h程度で流れる1級国道のバイパスでは、直ぐに4速に達してしまい、そのまま巡航すると回転計の針は3500rpm辺りを指している。
ここで始めて、このクルマはかなりのローギアードな事に気が付く。最近乗った6MT車の場合、例えばBMW130iにしてもミニクーパーSにしても、4速で70km/h巡航ならば回転数は2500rpm程度だったと記憶している。今度は少し慣れたところで、3速2500rpm、約40km/h弱から加速をしてみると、
この程度に回転数を上げていれば充分に加速を始めるが、一度グイッと来て、そのままグイグイと速度が伸びていくのかと思ったら、そうでもない。そして5000rpmに達したころから、それこそ調子が出てきたのだが、そのままいくとドンドン速度が上がってしまう為に加速を中止する。
そこで、今度は2速でチャレンジしてみる。するとやはり5000rpm、50km/h弱からの加速感はそれこそ快感で、そのまま7000rpm程度までは一気に吹け上がる。
本当は8000rpmくらいまでは回したかったが、試乗車の走行距離が1000kmに達していないことや、前のクルマが近付いてきたことから、そこで中断したが、
このクルマは回してナンボには違いないし、そうしないと大したメリットが出ない。勿論、3000rpmから5000rpm程度での走行でも十分楽しいが・・・・。
後でエンジン性能曲線(図1)と走行性能曲線(図2)を見たら、なるほど、3000rpmをピークに一度中だるみがあり、5000rpm辺りから再度トルクが立ち上がっている。
また、可変バルブのパワーゾーンは5500rpm以上だから、確かに体感と一致している。

信号で停止したので、今度は1速の発進からフルスロットルを踏んでみることにする。信号が青に変わり、軽いクラッチを1000rpm程度で繋ぎ、クルマが発進した直後にスロットルを床まで踏み込むと、クルマは気持ちの良い排気音と、ダッシュボードの
裏側からは盛大なメカ音が耳に入ってくるとともに、クルマは強力に加速する。流石に1速の場合は駆動力があるので、4000rpm付近のトルクの中だるみは直感しない。FFの高出力車の場合は、スタートダッシュで、何がしかの不安定な挙動を見せる場合が多いが、タイプRの場合はVTECがパワーゾーンに入る5000rpm付近から僅かにステアリングを取られる兆候はあったが、極軽微だし修正も簡単だった。この点でもアルファGTAやミニクーパーSのような、贔屓目に言えばジャジャ馬、悪く言えばシャーシーがエンジンに負けている未完成車とは異なり、それでいてゴルフGTI程には優等生ではないという、正にホンダファンの心を掴んだセッティングだし、ホンダファンではない
B_Otaku さえも、これは気に入ってしまった。
シビックTypeR
の6速MTは多少ストロークは長めだが非常に軽く、スパッと決まる。人によっては更にストロークが短く、カチッというフィーリングを好むようだが、カチッカチッというミッションは意外に操作力が重く、素早いシフトが出来なかったりする。それに比べて新型のTypeRは素早い操作がやり易く、結果的に迅速なシフト操作が可能となる。実はこのフィーリングはポルシェボクスター/ケイマンのゲトラグ製6MTに似ている。ただし、試乗車はマッサラの新品だったせいか、1→2速で素早いシフト操作をすると、多少の引っかかりを感じたが、3速以降はゲトラグ製に近いフィーリングだった。こういうフィーリングにチューニングしているということは、TypeRの開発グループに重症のポルシェオタクがいる
のではないか、なんて想像したくなる。10年ほど前に聞いた話では、ホンダの開発部署に勤務するエンジニア
で空冷ポルシェ911(930)を所有していたが、流石に維持費にたまりかねて、好きな人がいたら安く譲りたいという人がいたそうだ。う〜ん、判る、判る。最初にも触れたが、このミッションの唯一の欠点はシフトレバーが左に離れていて、折角の素早いミッションの動きを生かしきれないことだ。何とも残念! |

写真13
K20Aエンジンは1996ccの排気量から 225ps/8000rpm、21.9kg・m/6100rpm を発生する。
実にリッター当たり113psという市販車としてはダントツのハイチューンエンジンとなっている。
|
|
ステアリング
は適度な重さで中心付近から反応も良くクイックで、かといって危険すぎるほど敏感でもなく、これは上手いチューニングをされている。最初にいつもお馴染みの片側2車線の幹線
道路を走りながら、後続車が途絶えたところで素早く車線変更をしてみると、TypeRは安定して
迅速に車線を変更した。セダンボディでこれ程までに安定しているクルマはチョット覚えがない。
これ以上を求めるならば、誇張でなくポルシェケイマン(ボクスター)クラスを持ってくるしかない、それ程の安定性とクイックな挙動を見せ付けられて、しばし唖然とする。
今回は何時もポルシェの試乗に使用しているコースを走ることができたので、お馴染みの中速コーナーを回ってみると、マトモな神経での速めなコーナーリング程度では、このクルマがFFである事を忘れさせる程に素直な特性で回ってくれる。ケイマンSで同じコーナーを同じ速度で回ったときの緊張感はTypeRより遥かに大きい。と、言っても絶対的なコーナーリング能力はケイマンSが上回るだろうが、相手はミッドシップエンジンの2シータークーペだから、4ドアセダンベースのTypeRが立派ということに間違いはないし、国産のFFセダン中では群を抜いている。何より、ケイマンSの価格は実質TypeRの3倍だから、比較するのが間違っているが、しかしケイマンSがAT仕様で、しかもドライバーが成金オヤジで並以下のテクニックの持ち主だったら、上手いドライバーの操るTypeRがコーナーでグングン引き離していくことも可能なくらいの性能を持っている。
んっ!いかん、いかん。これはあくまでも想像の一例で、実際の公道で成金オーナーの高価格車とバトルを勧めるわけではないので念のため。ディーラーでもTypeRの性能を味わうにはサーキットでのスポーツ走行を勧めている。確かに、ケイマンS辺りを使ってのサーキット走行も楽しいには違いないだろうが、もしもぶっ壊すとエラク高いものにつくし、サーキットでの限界走行となれば痛みも激しいし消耗品の交換も早い。そういう面ではTypeRで目一杯走って、基本テクニックを磨くのが本当は上達の早道だと思う。しかし実際には行き成りポルシェカレラや、凄まじい時にはポルシェターボ、GT3、フェラーリF430や360などでのサーキットデビューという話をよく聞く。まあ、このあたりは個人の自由だから大きなお世話には違いないが。
それに、極々稀にはドンドン上手くなってGT3あたりを乗りこなしてしまう器用な人もいると聞いたことがある。成る程、伊達に金儲けが上手いわけでないと、その多才ぶりに感心する場合もあるとか・・・・・。
おっ!GT3納車待ちのアナタ、勿論後者の上手く乗りこなしてしまう多才派ですよねっ。少なくとも全く乗りこなせずに1年で諦めてカブリオレに買い換えたりはしないですよねっ。
金持ちのGT3オヤジとともにTypeRを否定するのはFR命の走り屋にも多い。確かに今までのFF車はフィーリング的には面白くなかったし言いたい事も判るが、このTypeRのコーナーリング性能ならば、そろそろガタがきだしたS15乗りの走り屋君も検討してみる価値はあるのではないだろうか。
世間ではとても街中では使い物にならないくらいに硬いといわれているシビックTypeRの乗り心地は、実際には決して硬すぎないし、勿論不快ではない。例えば常にガチガチと突き上げをくらうスイフトスポーツ等と比べれば、硬いといっても十分我慢できるレベルで、実用セダンであるVWパサートV6だってTypeRと大して
変わらない。
標準で18インチホイールを履いている事を考えれば、乗り心地は十分に快適な部類と言っても嘘ではない。この事実の裏には、TypeRがホンダ車としては異例に剛性が高いことも
理由になるだろう。
この乗り心地が硬いと感じるドライバーは、TypeRなんて視野に入れる事が間違いだ。
それでもファミリーカーとして使う場合には、○○ちゃんの家のセレナみたいに乗り心地の良いクルマにしようとか、△△さんのマークXなら乗り心地も良いし音も静かなのに、コンナ
に硬くて煩いクルマに300万円も出すなんて飛んでもない等と言う、バカ餓鬼や古女房の意見を一蹴とは言わないまでも、説得することは必要だろう。
試乗コースの往路が終って、これまた何時ものところでUターンをする。と、何と一度で回れない!その時は単純に回転半径が大きいのだろうと思いながら切り替えして回ったが、後でカタログを確認したら最小回転半径が5.9mと記載されていた。
レクサスLSが5.4m、BMW5シリーズが5.7mといえば、TypeRがどんなものかが判ると思う。
新TypeRのブレーキはフロントに天下のブレンボー製アルミ対向4ピストンキャリパーを装着している。歴代TypeRでは他のセダンから流用したチャッチいキャリパーを装着していたために、
サーキット走行を行うと必ずと言っていいほどにフェードしたり、熱でスライドピンのグリスが流れ出してボディが固着してしまったりという事実があった。
幸い2代目のインテグラTypeRからはフロントがブレンボー製となり改善されたが、この新型もそれを引き継いでいる。ブレーキフィーリングは当然ながら短い遊び
ストロークと、そこから先はガッチリとした剛性感で、
このクルマのエンジンや足回りの性能にマッチしている。とはいえ、これまた普通のオトウサンが乗ったら、なんだこれぁ、全然効かないじゃないか、となるのも間違いない。
サーキット走行を視野に入れているTypeRは、当然ながら不用意にチョッと踏んだだけでガッと効くような街乗りブレーキではない。まあ、この辺もTypeRが一般的な少しクルマが好き程度の市民にはお勧めできない理由でもあるのだが。 |
|

写真14
前後とも18×7.5Jホイールと225/40R18ポテンザRE070TypeR専用のタイヤを装着する。 |
|

写真15
フロントンにはブレンボー製のアルミ対向4ピストンキャリパーが装着されている。 |
|
|
と、ここまで読んでくれた読者はアンチホンダと思っていた
B_Otaku
が、何故か今度はベタ褒め?と疑問に思うかもしれないが、以前から決してホンダ自体を嫌っていたわけではない。ただし、見かけだけのグニャグニャのドンガラに、馬力表示だけは一丁前の低速スカスカのエンジンをATと組み合わせて、並みのスポーツカー顔負けのミニバンなどと世論を作り上げ、健全なファミリーや前途ある若者を騙して売りまくる体質が嫌いなのだし、そんなイカサマを見ぬけない多くの日本人が情けないと思うと腹が立
ったのだ。しかし、今回のシビックTypeRに乗ってみたら、本来のホンダスピリットはちゃあんと生きているのが判ったし、インチキなクルマたちを作ることで経営が安定しているからこそ、TypeRなんていう売れそうにないクルマを作れるのだと思えば、許してもいいだろう。
走り屋諸君はオデッセイ・アブソリュートやストリームRSZのオーナーに感謝するべきだろう。彼らのお蔭で商売になりそうもないTypeRの開発が許されるのだから。
何度も繰り返すが、ヘンテコリンな回転計とデジタル速度計、それに遠くから生えるシフトレバーが返す返すも残念だ。それでは、これらを解決すれば完璧かと言えば、そうはいかない。所詮このクルマは一部のクルママニア向けで、極めてマイナーな存在だ。街中でこれを見た時に喜ぶのは、コテコテのホンダオタクか、ノルマ不足に喘ぐ覆面パトの運ちゃんくらいだろう。確かに鴨がネギ(ウイング)背負っているように見えないこともない。少なくとも一般的なBMW3シリーズ辺りのユーザーから見れば、全く感心がないだろう
し、総額300万円を越えてしまっては、独身者でさえミニバンを買うような今のご時世では貴重なクルマ好きの若者にとっても予算的に厳しいだろうから、発売初期の新車効果が薄れたら、徐々に忘れられた存在になりそうな気もする。そんな事はお見通しながら、あえて新型を発売するホンダも大したものだ。
最後に、シビックタイプRのライバルはと言えば、ズバリRX−8だろう。価格的にも性能的にも、更には一応4ドアでリアシートにも大人2人が座れるなど、まさに絶好のライバルといえる。しかし、お互いにキャラクターは大いに異なる点もある。ポルシェにも似た内装センスと低い着座位置は、ドライバーに本格的スポーツカーの雰囲気を味合わせてくれる。それに対してシビックTypeRは実用セダンであるシビックがベースだから、いくら専用のスポーツシートで頑張ったところで所詮は大衆セダンと、この面ではRX−8に軍配があがる。ところが、実際の走りとなればロータリーエンジンのスムースさとしなやかな乗り味は寧ろBMWなどのサルーン的な
RX−8に比べて、TypeRは常にエンジンのメカニカル音が聞こえて乗り味も硬く、スポーツ度は大いに勝っている。恐らくノーマルでのサーキット走行だったらTypeRの勝ちに間違いない。雰囲気をとるか、実際の走りを取るか。それにしても
スポーツカーの冬の時代にホンダやマツダがこれ程頑張っているのに、トヨタ・ニッサンは如何したのだろう。シルビアもS15で途絶えてしまったし、MR−Sもセリカも生産終了してしまった。
需要が無いといえばそれまでだが、今年はレクサスIS−FやらニッサンGT−Rなどのスーパースポーツが発表されるそうだから、ここで世論を一気にスポーツカーに向けることで、現実的な価格帯のセリカやシルビア後継車を近い将来発表してもらいたいものだと思う。
いや、天下のトヨタのことだから、その辺も抜け目なく計画中かもしれないが。

|