AUDI A3 Sportback 1.8TFSI & 2.0TFSI (2007/6/2)     


今やアイデンティティとして誰もが一目でアウディと判る4シルバーリングとシングルフレームグリル
のフロントビュー。日本ではA3は5ドアハッチバックというよりもワゴン的なスタイルのスポーツバック
のみが設定されているが、これが最近のA3のヒットの理由であることは間違いない。

アウディのボトムレンジを受け持つA3は、プラットフォームを始めとして主要のコンポーネントをVWゴルフXと共有していることは周知の事実だ。 そして、この事実は、A3が割高のゴルフという目で見られていたのは間違いなく、これがA3不振の理由でもあった。ところが、最近になって住宅街の至るところで最近納車されたと思 われるアウディマークのクルマを頻繁に見かけるようになった。 A3といえばハッチバックと思っていたが、今ではVWゴルフに代表されるハッチバックではなく、どちらかというとショートワゴン と呼ばれているスポーツバックが主流となり、ついにはハッチバックモデルは国内販売を中止していまっていた。このスポーツバックの実際のライバルはBMW1シリーズだが、形状としてはマツダアクセラや最近フルモデルチェンジされたスバルインプレッサ などもショートワゴンの仲間と思っていいだろう。

A3スポーツバックのバリエーションは、下から、1.6ℓのAttraction(286万円)、1.8ℓターボの1.8TFSI(348万円)、2ℓターボの2.0TFSI(403万円)、そして3.2ℓの3.2quattro(480万円)となる。1.6ℓモデルは単にAttractionと呼ばれ、”1.6”という名称は何処にも付かない。これは、このクラスで1.6というのは決して良いイメージは持たれないと考えてのことらしい。なお、1.6ℓに上級装備を付けて価格は298万円の買い得車として、Attraction Limited という限定モデルを発売していて、これが結構売れているようだ。

さて、今回の試乗車は1.8TFSIと2.0TFSIという売れ筋中間グレードの一気乗りと行こう。実は本当の売れ筋はAttractionのようだが、こういうクルマサイトを読んでいるようなマニアには動力性能不足だし、予算が足りないのならばVWから選べば良いので、Attraction(1.6)の試乗は行わなかった。
 


写真1
後姿もハッチバックのような、ワゴンのような・・・・。ショートワゴンというカテゴリーが最近あるらしいが正にそれ。

 


写真2
ラッゲージスペースはハッチバックとワゴンの中間的な広さを持っている。

 


写真3
1.8Tの標準シートはモジュールクロスで内装も黒を基調とした欧州車には御馴染みのもの。

 


写真4
2.0Tはオプションのアイボリーレザーシートが装着されていたために室内もツートンとなり、標準とは雰囲気が異なる。

 


写真5
リアスペースは決して広くは無いが十分な
広さを持つ。リアシートの座り心地は結構良い。

 


写真6
上が標準のクロス(1.8T)で下がオプションの
レザー(2.0T)のシート表皮。

 

室内は1.8TFSIが標準のクロスシートを装着していて内装色も標準の黒を基調としており、これは欧州車としては御馴染みのものだ。これに対して2.0はオプションのアイボリーレザーシートの装着車であり、 このためにインテリアもアイボリーを基調として、ダッシュボードの黒との対比が1.8TFSIとは全く雰囲気を変えている(写真4および8)。 ここ数年のアウディのインテリアの仕上げは、ライバルであるメルセデスやBMWよりも上質であるというのが、世間の通説になっている。成る程、以前試乗したオールイロードクワトロの室内などは、全く惚れ惚れするくらいに、質感が高かった。しかし、A3の場合は残念ながら、それ程ではない。 同じグループのVWよりもプレミアム度が上というポジションのアウディだが、VWのほうはといえば、最近はゴルフに上級装備のGTX(371万円)を投入したり、 そのGTXの内装はレザーシートやウォルナットのトリムを標準装備して、A3のベースグレードよりも遥かに高級など、何やら序列を崩しつつあるから話がややこしい。 とは、いっても、そこはアウディ。よく見れば仕上げも材質も、このクルマを選んだオーナーに満足感を与えることは間違いない。

シートに座って位置を調整するには、1.8Tが手動式で、オプションのレザーシートを装着した2.0Tは電動だった。 1.8Tのシートの位置を合わせるためにフロント下のレバーを解除して前後を、そして右サイドの大きなレバーを上げたらばシート面が上昇した。 それでは、座面のリクライニングは、ハテ?と、思ったら、バックレスト側面にダイヤルがある。そういえば、少し前までは欧州車と言えばダイヤル式のバックレスト調整が主流で、 国産車の粗い調整しか出来ないレバー式に比べて、細かい調整が出来るダイヤル式に感動したものだった。それから時は経て、国産車も随分マトモになったものだ。 なにしろ、以前の国産車のシートといえば、一番起しても寝っ転がるような位置にしか調整できないという、 はなッからマトモな運転姿勢を取れないクルマが多かった。


写真7
1.8TFSIの標準インテリア。メルセデスやBMWよりも仕上げが良いと評判のアウディではあるが、A3の内装は特に高級感があるとはいえない。
 

 


写真8
2.0TFSIはオプションのレザーシートが装着されており、しかもシートカラーがベージュのために、内装もベージュを基調としているので、イメージは大分異なる。

 


写真10
100km/h未満が何故か奇数表示のスピードメーターは慣れないと見づらい。赤いLED表示や水温計と燃料計が独立した小径のメーターなど、基本的にはVWゴルフとも共通点が多い。

 


写真11
この写真はナビが装着されていない標準の場合で、写真7〜8がナビ付きの場合。
セレクターレバーはP-R-N-D-Sとなり、DからSにはレバーの右に見えるボタンを押してロックを解除しないとセレクトできない、VWとAUDIに共通な方式。

 

1.8Tは適度のトルク感とターボエンジンとしては低回転からのレスポンスも良く実に自然なフィーリングだ。1500rpm程度で巡航していて、スロットルをシフトダウンが起こらない程度に踏み込むと、ストレス無くトルクを発生す るし、この面では寧ろ2.0Tを凌ぐといっても過言ではない。今度はフルスロットルを踏むと、驚く程速いとはいえないものの、ストレスの無い加速が得られる。この時のエンジン音も静かで、これが悪く表現すれば迫力の無い原因でもある。低回転からレスポンスが良く、適度な加速を得られるという点ではゴルフ1.4SITに似てもいる。 1.8TのミッションはゴルフGTIでもお馴染みの、VWグループの伝家の宝刀ともいえるDSG(アウティではSトロニックというが、本文ではDSGと表現する)6速を備えている。マイナー前の同車格だった2.0FSIはトルコンATが装着されていたから、今回の1.8TFSIは買い得感が高まったことになる。今度はセレクターをSモードにしてみる。ゴルフと共通のセレクトレバーはレバーのセーフティボタンを押しながらDより更に手前に引くとSモードとなる。このモードでは回転数も上昇してレスポンスも更に向上するが、このモデルのユーザー層は果たしてSモードでの走行を使用するかは疑問だが、あっても邪魔にはならない。 このSモードで走行中にステアリング裏のパドルスイッチを引くと、右でアップ、左でダウンというオーソドックスな動作でマニュアル操作が可能となる。最近はトルコンATでもマニュアル動作が可能であることが流行りになっているが、A3の場合はトルコンスリップのないシーケンシャルシフトだから、当然ながらマニュアルモードでのダイレクト感覚では勝るのだが、ユーザーが実際にこのモードでカチャカチャとマニュアル操作をするかといえば、ハテ?と考えるものもある。恐らく、買ったばかりの時には面白がって使ってみるだろうが、結局は普通のATとして使うというのが落ちのような気がする。 片側2車線のバイパスに出たので、信号待ちの際に折角のマニュアルモードで1速をセレクトして、青信号と共にフルスロットルを踏んでみると気持ち良く加速していくが、その時にステアリングを取られたりすることはない。まあ、考えてみればそれ程ハイパワーでもないことが安定につながっているともいえるが。そして、この加速感はBMW120iより強力に感じるし、少し前に乗ったBMW320iツーリングに比べれば、まるで 別世界ほどに加速が良い。 1.8Tの乗り心地は、硬めではあるが十分にしなやかで、欧州車としてのメリットを十分に感じることが出来るレベルである。ランフラットタイヤを採用しているBMWに比べて有利なこともあり、大き目の段差でも難なくいなしてしまう。320iTと共に先日試乗したレガシィ2.0iも価格を考えれば実に良好な乗り味だったが、レガシィはA3に比べると設定が柔らかく、より日本的な乗用車感覚だ った。それでも他の国産車に比べれば安定性も十分に両立していたのは立派だ。

1.8Tのステアリングは軽く素直で、当然ながら基本的にはゴルフと似ているから、特に気にしなければこの車がFFであることは気が付かない程の出来の良さで、 それこそ普通のドライバーが普通に使う分には全く申し分の無い特性だ。


写真12
2.0TFSIは直4DOHC インタークーラーターボ付きで200ps/5,100-6,8000rpm、28.5kgm/1,800-5,000rpmを発生する。
 

 


写真13
1.8TFSIは新開発の直4DOHC インタークーラーターボ付により160ps/5,000-6,200rpm、25.5kgm/1,500-4,200rpmを発生する。 低回転時のレスポンスは2.0Tに勝る。

 


写真14
こちらはAttractionと呼ばれる1.6L、直4SOHC自然吸気エンジンで102ps/5,600rpm、15.1kgm/3800rpmを発生する。

     

今度は2.0TFSIに乗り換えてみる。 走り出した瞬間に1.8Tとは明らかに違うトルクの厚さを感じる反面、低回転域でのレスポンスが1.8より劣る事も即座に感じる。従って、街中の遅い流れの場合は寧ろ1.8 Tの方がフィーリングが良いと感じるユーザーも居るだろう。それでも、一度回転が上がってからの加速は流石で、0.2リットルしか排気量が違わないとは思えない程の差がある。そして加速中の音も1.8とは全く異なり、スポーティな排気音が聞こえる。 そこで、先程1.8でマニュアルによる発進加速を試した場所で、同じくフルスロットルによる加速を試してみる。信号が青になったのを確認して、一瞬の後に深くスロットルペダルを踏みつけると、クルマは勢いよく飛び出したいくが、その時に 一瞬フロントタイヤからのスキール音とステアリングの振れを感じるが、直ぐに収まって、グングンと速度を上げていく。回転計が5000rpm辺りに来たところで、右のパドルを引くが、エンジンの回転数はグイグイと上がって、 あっという間にレッドゾーンに飛び込もうとする。シーケンシャルシフトの場合は、フル加速時にパドルを引いてから実際にシフトシフトアップが行われえるまでのタイムラグが読めないために、どのタイミングでパドルを操作すれば良いのかが判らない。特に回転上昇の速い1速の場合は、アッと言う間にレッドゾーンに向かうから油断は出来ない。 DSGは現時点での量産シーケンシャルミッションでは最高との折り紙付きだが、それでも微妙なタイミングを要求する走りでは3ペダルのクラッチ付きMTに敵わないのが現実だ。 と、書くと、「今やレーシングカーの世界はF1を始め、GTカーにしても全て2ペダルだから、3ペダルなんて時代遅れもいいところだ」という声が聞こえてきそうだ。 しかし、レース用のシーケンシャルミッションというのは市販品とは全く別物で、価格もさることながら耐久性だって1レース持てば良いレースの世界 だから、ストリートカーとは事情が全く異なる。 その証拠にストリートカーのシーケンシャルミッションとしては最高にレスポンスが良いBMWのSMGVはM5/M6に搭載されているものの、その後に他の車種に拡大されてはいない。 M5の価格はVWゴルフGTIの4倍!要するに、今現在ではシーケンシャルミッションで3ペダル以上の性能を求めると、とても普通の市販車には採用されない程に高価となってしまうということだ。 その証拠に、DSGをVWと共に共同開発したポルシェは、未だに自社のクルマには搭載していない。とは、言っても、一般のストリートカーの2ペダルシステムでは 、DSGが現在最も進んでいることは間違いない。

動力性能を除けば、足回りなどに大きな差がないこともあり、2.0Tの乗り心地と操舵感は1.8Tと近似している。いや、近似しているといえば、プラットフォームを共有しているVWゴルフとも似ている。 ゴルフGTIはFFスポーツの手本だから、それと共通点の多いA3が現代FFのトップクラスの操舵性を持っていることは何の不思議もない。 A3 1.8/2.0TFSTのユーザー層は、峠を攻めるマニアではなく、高品質のファミリーカーを求める普通のユーザーだから、この操舵性は宝の持腐れ的な感もあるが、 積極安全性が高いことを魅力に感じて多少高価でも思い切って国産車から乗り換えるという例をいくつも耳にしている。

ブレーキはどちらも欧州車の典型で、軽い踏力で食いつくように効くから、ストリートユースには全く不満がない。 ただしBMWも同様だが、効き過ぎるのも慣れないとスムースな減速が出来なかったりするので、これは好みと慣れ次第でもある。アウディとBMWはキャリパーに同一メーカーの同一タイプを使用していて、さらにはパッドも同系統の為に効き味も似ている。ただし最近は日本車のブレーキも劇的に進歩しているのも事実で、数年前までは一度欧州車のブレーキを味わったら、とてもではないが国産車なんて怖くて乗っていられなかったのだが、最近はそれ程の遜色がないまでに進歩している。 特にマツダのようにフォードの世界戦略によるグローバルな調達体制により、なんとアクセラのようにアウディやBMWと同じブレーキキャリパーを使用していたりする。 ボルボS40/V50のホイールから除くブレーキキャリパーを見て、「成る程、流石にBMWと同じだ」と感心したら、何の事は無いベースのアクセラと共通だというだけだった。


写真14
2.0TFSIは17×7.5Jホイールと225/45R17タイヤを装着する。


写真15
1.8TFSIは16×6.5Jホイールと205/55R16タイヤとなる。

 

今回A3の1.8Tと2.0Tに乗った結果は、確かにこのクラスでは一押しのお勧めだった。最大のライバルであるBMW1シリーズと比べた場合、好みにもよるが、一般的な感覚からすればハッチバックというよりも ショートワゴン的なA3の方がデザイン的には上回っていると思う人が多いだろう。
と、ここで前回のBMW320iツーリングと同じように、国産車派の立場も尊重してのスペック比較といってみよう。今回、A3と比較するのはフルモデルチェンジしたばかりのスバル インプレッサ、その中でも現時点では上位モデルとなる2LターボのS-GT。 そして、欧州車のライバルとしてはBMW120iに登場願おう。
 
    AUDI A3 Sportback AUDI A3 Sportback BMW SUBARU
      1.8TFSI 2.0TFSI 120i Impreza S-GT
寸法重量乗車定員
全長(m)   4.285 4.285 4.240 4.415
全幅(m)   1.765 1.765 1.530 1.740
全高(m)   1.430 1.430 1.430 1.475
ホイールベース(m)   2.575 2.575 2.660 2.620
最小回転半径(m)   5.10 5.10 5.10 5.30
車両重量(kg)   1,460 1,470 1,390 1,390
乗車定員(   5 5 5 5
エンジン・トランスミッション
エンジン種類   4 DOHC ターボ 4 DOHC ターボ 4 DOHC 4 DOHC
総排気量(cm3)   1,798 1,984 1,995 1,997
最高出力(ps/rpm)   160/5,000-6,200 200/5,100-6,800 156/6,400 250/6,000
最大トルク(kg・m/rpm) 25.5/1,500-4,200 28.5/1,800-5,000 20.4/3,600 34.0/2,400
トランスミッション   6 Sトロニック 6 Sトロニック 6AT 4AT
駆動方式   FWD(FF) FWD(FF) RWD(FR) AWD
サスペンション・タイヤ
サスペンション方式 ストラット ストラット ストラット ストラット
  ウィッシュボーン ウィッシュボーン 5リンク ダブルウィッシュボーン
タイヤ寸法 205/55R16 225/45R17 205/55R16 205/55R16
  205/55R16 225/45R17 205/55R16 205/55R16
ホイール アルミ16X6.5J アルミ17X7.5J アルミ16 アルミ16
  アルミ16X6.5J アルミ17X7.5J アルミ16 アルミ16
価格    
  車両価格   3,480,000 4,030,000 3,530,000 2,520,000

A3とインプレッサに限らず、欧州車、それもメルセデスやBMW、そして今回取り上げたアウディに代表されるプレミアムブランドを、数値上のスペックが似たような国産車と比較すれば、結果は例によって同等どころか、場合によっては国産車が勝ることもある。そこで、上の表に登場のニューインプレッサS−GTに、これまた急遽試乗してきたので、前回のBMW320iツーリングと同様に特別付録として、ミニ試乗記を巻末にサービスすることにしよう。

さて、本題に戻って、アウディA3の結果は、このクラスでは一押しのお勧めと断言できるし、最近巷に増えているのも納得できる。前回取り上げたBMW320iツーリングは何しろ 加速性能に難があったから、あの動力性能でも気にならないユーザーにしか勧められなかったが、 A3の場合は1.8TFSIでも十分な性能を持ち、更に2.0TFSIならば十分を超えてスポーティワゴンともいえる性能を持っていたが、それでも価格は320i以下だ。 中でも1.8TSFIの約350万円という価格は、決算期など有利な購入時期を狙うなどして、大幅な値引きを獲得するという上手い買い方をすれば、国産のチョッと高級なクルマと変わらない予算で購入できる。スカイラインの250などにある程度の装備をした場合と実質変わらない予算で、本物のドイツ御三家の一つであるアウディが買えると言うのは、実に買い得と思うのだが・・・・・。 あっ、いや、既にA3買いました、ですか?流石に御目が高い。脱帽です!


        
 


特別付録 インプレッサ S-GT ミニ試乗記
BMW 320i Touring試乗記にてレガシィ2.0iとの比較を特別付録とて実施してみたが、今回のA3も同じようにインプレッサと比較することにした。 折りしも、インプレッサがフルモデルチェンジしたところでもあり、タイミング的にも良いだろう。インプレッサ S-GT(252万円)はアウディA3 2.0TFSI(403万円)の代わりとなるのだろうか? 150万円も高いA3を買うのは無意味なのか?この辺を比べてみることにする。なお、インプレッサ15Sについては簡易試乗記で取り上げているので、そちら を参照願いたい。

SUBARU Impreza S-GT

  AUDI A3 Sportback 1.8 & 2.0TFSI

 
   
   

走り出した第1印象は当然とはいえ、先週乗った15Sに比べれば全く別のクルマと思えるほどにトルクがある。ただし、低回転域でのスロットルレスポンスは決して良くはないが、イラつく程のタイムラグではないから、慣れれば問題ないレベルだ。 次に発進時からハーフスロットル程度で加速してみると、1速から2速へのアップでガツンッというショックがある。シフト自体は短時間で迅速なのだが、随分荒っぽい設定だ。この動力性能をアウディA3と比べると、1.8TFSIよりは明らかに速く、2.0TFSIと比べれは体感的には同程度だった。エンジンスペックとしては圧倒的に勝るS−GTだが、実際の体感加速で圧倒的な差が付かなかったのは、S-GTが今時珍しい4ATを搭載していることが大きく影響しているのは間違いない。対するアウディは量産車用の2ペダルミッションとしては最も進んでいるDSGを採用していることから、両者の50psは動力伝達の効率の違いでチャラとなってしまったようだ。

乗り心地に関しては、前回の15Sが非常に良い結果だったことから、更に上級車種であるS−GTには大いなる期待を持っていたが、残念ながら15Sの驚くほどしなやかな乗り心地に対して、S−GTの乗り心地は多少硬く、舗装路を走行中にも微妙な振動が伝わってくるし、段差のいなしかたも15Sの柔らかさは感じられなかった。勿論、それでも国産車としてはトップレベルなのだが、15Sがプジョーの猫足にも迫る出来だったことに比べると少しガッカリというところだ。この原因は何なのだろうか?考えてみれば、まずはタイヤサイズの違いによるバネ下重量の増加と扁平率の違いによる乗り心地の低下というところが一番の容疑者か。それにクルマ自体の重量の増加(100kg)と、その大部分がエンジンと4WD化による駆動系の重量であり、しかもこれらは主としてフロントに集中していることにも原因があるだろう。

15SがFWD(FF)であったのに対して、S−GTはAWDとなるが、低速でのステアリング特性はどちらも軽く素直で似たフィーリングとなっていた。今回は試乗コース中にワインティング路といえるほどのコーナーは無かったが、普通にカーブを曲がっている限りにおいては、極めて素直に曲がっていく。ただし、ステアリングのフィー リング自体はスバルファンが絶賛するほどには良いとは感じなかった。何よりも路面からのインフォメーションが足りないし、ワクワクするような操舵感は感じなかった。まあ、個人的にはリアを駆動する感覚が好きだから、AWDの感覚と馴染めないのかもしれないが、少なくともBMW1シリーズと比較すると、操舵感の面白さではインプレッサに勝ち目はない。それではA3に比べてどうかといえば、これは好みの問題ということにしておこう。

ブレーキについては15SとS−GTで形式が異なる。フロントはキャリパーのピストン径がS−GTのほうが1サイズ大きいことと、リアは15Sのドラムに対してS−GTはディスクとなる。フィーリングはどちらも剛性感も十分で少ない踏力でも良く効くから、女性ドライバーでも不安はない。A3のブレーキと比べると、欧州車独特の食いつくような効き味による、足のつま先でコントロールするような効きが好きなドライバーには、インプレッサのブレーキはもう少し喰いつくようなフィーリングを欲しくなるが、コレは慣れの問題で解決できる。欧州系のパッドを装着した場合の鳴きやパッドの早期磨耗、ローター攻撃(磨耗)の鋭さ、そして1週間経たずにホイールが真っ黒くなる程のブレーキダストなどのデメリットは、以前に欧州系パッド(独ユーリッド社製)を純正組み付けしていたスバルとしては痛いほどに承知している筈だ。

実際に乗ってみたS−GTはA3 2.0TFSIと比べてみたら、動力性能や乗り心地、そして操舵性にブレーキ性能という、いわゆる走る・曲がる・止まるでは、それ程決定的な差は感じられなかったから、成る程輸入車なんていらないとう意見は一見正しいかもしれない。しかし、クルマと言うのは基本性能だけで優劣が決まる訳ではない。そこで、今度はフィーリング面での比較をしてみよう。これをやると、恐らく”国産一番”と思っている連中は頭から湯気出して怒るだろうから、ここから先は輸入車の良さが判る人限定とする。

私は輸入車のフィーリングを理解し、未だ国産車に足りないものがあることも肯定した上で、
この先の比較記事を冷静に読める知識と教養を身につけています。
従って、この先に何が書かれていようが、笑って受け流す事が出来る為に、

結論編へ進みます