BMW 320i Touring (2007/5/4) 


写真では判り難いがボディサイドの独特のプレスラインが斬新で、実にカッコが良く見える。
さらにはサルーンに比べて長手方向に距離があるので、このラインが特に強調されて独特な
雰囲気をもたらしている。

日本国内においても今や輸入車の代表車種となったBMW3シリーズ。しかし、メジャー故に各方面からの批判も多いし、何より首都圏の街中ではあまりにも数が多くて希少価値のかけらもないという、 ある面ではオーナーにとって面白くない現実もある。 そんな中で、3シリーズのバリエーションでもあるワゴンボディのツーリングについては、セダンに比べて数が少ないこともあり、B_Otaku の身辺でも最近3シリーズツーリングを手に入れた知人が複数存在している。現行型3シリーズ(E90)のワゴン版であるツーリング(E91)の国内発売は2005年11月、しかしこの時点では上級モデルの325iのみが先行発売されていたために価格は550万円 。このクラスならレザーシートが欲しいとなるとハイラインパッケージが必要となり、そうなると580万円という普通のサラリーマン家庭では手を出しかねる値段設定だったが、 その後、待望の320iツーリングが発売されたことで、中堅サラリーマンでも手の届くところまで降りてきた訳だ。 この320iツーリングの価格は標準グレードで437万円。何ッ、それでも高すぎるじゃないか。4気筒の2ℓワゴンが437万円?レガシィ ツーリングワゴン2.0GT なら314万円で、ターボ+4WDが買えるのに、320iなんて買うのはクルマを知らない見栄っ張りのブランド好きで、外車屋のいいカモだ、なんていうネタは何処かの掲示板で夜な夜なやっているから、そちらに任せるとして、ここでは320iツーリングがどんなクルマなのかを、極力公平な立場で評価してみる(つもりだ)。


写真1
標準グレードでも外観上での大きな差別化は無い。
アルミホイールやボディ同色のミラーはドアハンドルなどは当然のように採用されている。特に膨張色のホワイトボディは実に立派に見える。

 


写真2
こちらはM-sportの外観。多少のエアロパーツと大径ホイールが標準と異なるが、先代(E46)程には大きな差はない。

 

既にご存知のとおり、BMWの各車にはベースグレードに対してパッケージオプションとして、レザーシートやウッドトリムなどの豪華装備のハイラインパッケージ(36.5万円)と、スポーツシートや17インチワイドホイール、それにエアロパーツを付けたM-sportパッケージ(42万円)がある。ハイラインの内装は確かに高級感があるが、36.5万円はチト痛い。また、M-spは確かにカッコは良いが、2ℓの320iに17インチのワイドタイヤはやり過ぎだし、乗り心地の面からいってもデメリットのほうが大きそうだ。 そんなことから、今回は標準グレードに試乗する予定だったが、あいにく試乗車はM-spしかなかったために、クルマの乗り味自体はこちらで評価して、 内装や外観などは展示車の標準グレードの写真とともに比較することにする。写真で黒いボディがM-spで白が標準グレードとなる。

先ずは外観をみれば、最近のBMWの特徴でもある強いサイドのプレスラインは写真よりも実部のほうが迫力があり、これをショールムで見ただけで結構クラクラっと欲しい病になっても無理は無い。 この辺がレガシィワゴンとは大きな違いで、クルマというのは単純にカタログ性能対価格だけでは語れない難しさがある。 先代3シリーズ(E46)の場合、特にマイナーチェジ後の02モデル以降は標準グレードのフロントデザイン、特にバンパーがノッペリとしてカッコ悪く、 あれはM-spを買わせる策略ではないか、なんで疑いたくなるデザインだったが、現行(E90、ワゴンはE91)になってからはM-spとの外観上の大きな落差はなくなっている。 写真1の標準グレードと写真2のM-spを見比べれば、写真1でも十分に満足できるのが判るとおもう。デザインは個人の好き好きではあるが、セダンに比べるとワゴンの方がカッコ良さという面では勝っているのではないか。 今まで何人かの知人に聞いてみたが、外観デザインならば圧倒的にワゴンに軍配を上げる例が多かった。


写真3
この角度からの眺めも、見かけの良さではサルーンに勝るとの意見が多い。 デザインが良い大小としては、ワゴンとしても実用性が多少劣るが、リアラッゲージスペースには”夢”を乗せると思えば文句は出ない筈。

 


写真4
真後ろから見て4気筒と6気筒の差は排気管が1本ならば4気筒で、他には320iのエンブレム程度だ。写真のクルマは希望ナンバーで”320”!個人オーナーではあり得ないだろう。

 


写真5
リアはウィンドウ部分のみが単独で開閉でききるので、チョットした手荷物やスーパーの買い物袋などを入れるのに便利だ。

 


写真6
ラッジースペースは決して広くは無い。ワゴンとての積載性を期待すると不満がでるが、これはファッションと割り切る事がひつようだ。ただし、高さ方向ならセダンより圧倒的に勝るのも事実。

 

ワゴンボディの最大のメリットは言うまでもなラッケージルームを持つことだが、BMW3シリーズにしても、メルセデスCクラスにしても、いわゆるDセグメントのワゴンと言うのは決してセダンのトランクに対して積載能力で圧倒的に勝るわけでは無い。 そういう面では、このクラスのワゴンは積載性よりもデサインの良さや、アンフォーマルな雰囲気を重視するものと考えるべきだろう。

では、その積載性はと言えば、先ずは写真3のようにリアウィンドウのみの開閉が可能で、チョットした荷物の出し入れにはテールゲートを開ける必要がないのは便利だ。ことろで、この機能は国産車にでも付いているのだろうか? と思って改めてレガシィとステージアのカタログを調べてみたが、どう見てもリアウィンドウは開閉する構造には見えなかったし、勿論そんな事実は書いてなかった。
テールゲートを開けてみれば、ラッゲージスペースは想像どおりに決して広くはないし、これならサルーンのトランクだったそれほど変わらない。 勿論、背の高い荷物ならばセダンのトランクにはとても入らないものでも積載できるが、この手のクルマで家電量販店で買った29インチテレビを積んで、自分でお持ち帰りという状況は今だ見た事がなし、茶箪笥や仏壇を運んでいるのも見ていないが・・・・・・。


写真7
ベースの3シリーズ自体が現行型になってからリアのスペースは大いに拡大されているから、当然ながらツーリングも十分な足元のスペースがある。

 


写真8
Mspのシートはサイドがアルカンターラで座面がクロスのコンビでサイドの形状も標準よりサポートの良さそうなスポーツシートが装着されている。

 


写真9
上が標準、下がMspのシート表皮拡大写真。
見かけも座り心地もMspのほうが勝るが、42万円のエクストラコストと見栄えは良いが乗り心地やハンドリングでは決して良い事のない大径のタイヤ&ホイールも付いてくるという問題もある。

 

 


写真10
こちらは標準グレードのシート。Mspに比べてサイドの張り出しは少ないし、クロスの質感も落ちるが、実用的という点では満足できるし、国産のケバケバ・モケットに比べれば遥かにセンスが良い。

 

室内は紛れも無いBMWで、標準とM-spの最大の違いはシートの表皮と形状の違い(写真8〜10)であり、ダッシュボードの雰囲気などは大きく違わない。シルバーのトリムやコンソールの上部パネルはどちらもアルミで、M-spが表面に細かいヘアラインが入っているという違いがあるが、良く見なければ判別は出来ない程度の違いでもある。 先代のE46は2ℓの318iの場合、標準グレードだと単なるブラックのプラスチックトリムというチャチさだったのに比べれば大いなる進歩だが、その分値段もシッカリ上がっている。
まずは標準グレードのシートに座ってみると、先代程ではないにせよ3シリーズ独特の小さめの寸法と、これも先代譲りで、座った瞬間に欧州車としては意外に座面が柔らかく尻が少し沈むのが判る。ただし、国産車によくあるグニャグニャ座面ではなく、ウレタンが結構反発力をもっているから慣れれば 意外に疲れない。実際に先代3シリーズの標準シートで一般道を連続4時間程度の運転をしたことがあるが、国産車のように腰が痛くなることはなかった。ただし、欧州車=カッチカチという概念で座ると、チョット意外に感じるだろう。 これがMspになると座面はより硬くなるので、多くのドライバーにとってはイメージどおりの欧州車的な感覚に近付く。それでも、まだまだ柔らかく、最近は以前ほどではないにせよVWのコチコチ、ガチガチのフィーリングを求めていると意外に感じる かもしれない。ただしBMWのシート、特に3シリーズは以前からこの感じだった。本当に疲れないシートをBMWに求めるのならば最低でも5シリーズをお勧めする 。実際に5シリーズで連続6時間の運転をしてことがあるが、前記の3シリーズ4時間よりも、さらに疲れは少なかった。これが、7シリーズなら更に良い結果となる し、7シリーズにオプションで最上級のシートを選択すれば、これぞ文句なしの理想的シートが手に入るが、まあ何事も欲を言ったら限が無い。話を元に戻して、標準とM‐spのシートではやはりM-spが優れているのは否定できないが、その代償として42万円のエクストラコストと、見栄えは良いが乗り心地やハンドリング を考えれば嬉しくはない大径のタイヤ&ホイールが付いてきてしまう。

実際にツーリングのシートに座ってみると、その感覚は当たり前ながらサルーンと全く変わりは無いし、ルームミラーに写るリアウィンドウの位置がサルーンよりも遠いことに気付かなければ、ドライバーは自分がワゴンに乗っていることすら忘れるかもしれない。 ただし、サルーンから乗り換えると、信号待ちで後続車がいつもより車間距離をとらずに停止しているような気がするが、これは単純にツーリングの場合は車両の後端にウィンドウがあるための錯覚だった。

3シリーズのエアコンは先々代のE36時代には上級グレードには左右それぞれに温度設定が出来るオートエアコンが装着されていたが、なぜか先代のE46では温度設定は一つだけ(左右共通)となった。 ところが、現行のE90ではまたまた左右別に設定できるように改められた。 実際に左右で別々に温度を設定する必要があるのかは疑問でもあるが、あっても困ることは無い。
3シリーズのオーディオについては、以前から値段の割りに音が最悪と評判が悪かった。 しかし、音質自体がそんなに悪いかといえば、そんなことはない。これは考え方の違いで、確かに音域は狭いから下品なロックをギンギン、ドタドタという音で聞きたいという教養レベルのユーザーには、 400万円もするのに、ナンだコレャ!となる。しかし、バロック音楽等を車内で聴くような教養あるユーザー(個人的には決して友達にはなりたくないが)の場合には、レンジは狭いなりに実にまとまった音がする。 まあ、そんなモノだと思って聞き流している分には音質自体は決して悪くは無い。ただし、クラシックでも大編成オーケストラで、しかも強弱が大きい場合にはチョッ困る。 例えば交響詩シェーラザードは冒頭のバイオリンソロがほとんど聞こえないから、最初の数分間は何がナンだか判らないし、ビル・エヴァンスのワルツ・フォー・デビィはポール・モチアンのブラシワークも、これまたほとんど聞こえない。 まあ、カーオーディオなんてこんなものかと思っていたが、530i(E60)を借用して長距離を走ったときに、その純正の標準オーディオを聞いてみたら、 なんとシェーラザードのバイオリンソロはシッカリ聞こえるし、勿論ポール・モチアンのブラシもハイハットも、それどころかスコトット・ラファロが玄を弾くガッキンガッキンという音まで聞こえている。 正直言って結構ショックはあったが、この辺が3シリーズと5シリーズの根本的な違いでもある訳だ。 325i M-sp(595万円)と525i(628万円)は価格的には近いが、求めるものは全く異なることは覚えておいて損は無い。

んっ?おまえ、何を知ったかぶって訳の判らない事を言っているんだ・・・・と呟くキミ。残念ながら、このHPの推定する読者でないことは間違いないっすね!


写真11
サルーンと共通のフロントインテリアの眺め。この雰囲気は良いも悪いもBMW3シリーズで
これが、気に入ったならば割高だろうが何だろうが買うしかない。
 


写真12
これも御馴染みのメーター。好みもあるが、スカイラインやレクサスISなども、この程度の質感と雰囲気のメーターにしてもらいたい。毎日見るだけに重要な部分だ。

 


写真13
左右で別の温度調整ができるオートエアコンやCD付きのオーディオは全グレードに標準となる。

 


写真14
全ての3シリーズに共通のパターンだから、慣れたドライバーなら全く違和感は無い。

 


写真15
サルーンとの大きな違いはリアウィンドウの距離が遠いこと。 信号待ちで後続車が近付いて見えるが、実際にはクルマの最後端にウィンドウがあるための勘違い。

 

それではいよいよ試乗に入ろう。
3シリーズ(E90)については、これまで何度も試乗記を発表しているので、今回は主にセダンとの違いについて触れてみる。走り出して直ぐに気が付くのは加速性能が116i並みで、 セダンの320iに比べれば明らかに緩慢ということだ。セダン320iの車両重量が1460kg、ツーリングは1540kgと80kgの重量差があるが、これはデブ、失礼! 恰幅の良い大人一人分というか、モデル体系の女性約2人分程度だが、320iセダンに大人2人乗せても、これほど緩慢ではない。この加速感を判りやすく表現すれば1.5ℓの小型ワゴン級の加速 感で、 感覚的には商用ライトバンのニッサンADに近いといったら、320iツーリングのオーナーは怒るだろうし、国産車派は、それ見たことかと喜ぶに違いないが、事実は事実で認識するしかない。
ATのキックダウンも反応が遅く、これも116iとよく似ている。同じ6ATとはいっても6気筒版とは違うのだろうか。このために、どうしてもアクセルを多めに踏んでしまうので、排気音も結構勇ましいから、 同乗者の家族からは400万円も出して何コレという事になるのは間違いない。しかし、一旦速度が上って定速巡航になれば結構静かにはなる。

今度はマニュアルモードにして、一杯まで引っ張ってみると、やはり遅い。右足を床が踏みぬけるくらいにアクセルペダルを踏みつけても、クルマは緩慢に加速していく だけだ。ZF製の6ATは元々出来がいいから、これをマニュアル操作したとしても、絶対的なトルク不足は救えなかった。 今度はSモードにして走ってみる。BMWのSモードは、これをセレクトするとマルでクルマ一筋の走り屋兄ちゃんみたいに常に3000〜4000回転程度を維持する。 このくらいに回転を上げて走ると、悲惨な動力性能も結構救われる。と、いってもフルスロットル時はDだろうがSだろうが同じだから、Sを選んでも最大出力が変わるわけではないのが辛いところだ。 実は、試乗も終盤になって、この動力性能にも慣れてきた。こういうのは慣れ次第だ、と思って、ふとセレクターを見てみれば、何とセレクターはSに入っているではないか。 最後の15分くらいはSモードで走っていた事になる。その割には、エンジン音も気にはならなかったが、こういう感覚は個人差があるから何とも言えない。 これを読んで、320iツーリングをSモードに入れっぱなしで走っても静からしいという誤解は無きように。


写真16
現代では殆んど唯一となった直列6気筒の入るスペースに4気筒を納めた為に内部はスカスカ。
先代E46の318iから引き継いだ2ℓ、150psは、重いワゴンボティにはチトばかり荷が重い。

ステアリングは3シリーズらしく素直だが最近の一般的な国産車と比べるとズッシリと思い。歴代のBMWは時期によって操舵力が重くなったり軽くなったりと、結構迷っているふしがある。 最近の例では、E46の6気筒の2001モデルの操舵力が軽い設定になったが、長くは続かずに確か1年のみで元に戻ってしまった。軽くなって一番喜んだのは中級以上の3シリーズを足に使っている裕福なご婦人方だったが、 試乗して軽くなったのに喜んで、新型に入れ替えを検討しているうちに、また重くなってしまってガッカリという話を聞いたことがある。 確かに女性の細腕ではきついかもしれない。その先代E46のステアリングは実にスムースに動(回り)いたのは有名な話で、全くガタが無くてしかも滑らかなフィーリングは他社の車では絶対に味わえない絶品だった。 ところが現行のE90系は、どうもE46時代のフィーリングは持ち合わせていないようだ。さらにE46はステアリングホイールを通じで、今タイヤがどんな路面の上を走っているのかが手に取るように伝わってきたのだが、現行型はそこまでのインフォメーションは無いような気がする。
コーナーリング自体は素直な弱アンダーで誰が乗っても安全に速く走れるのは流石にBMWだけある。試乗車はM-spなので、リアには255/40R17という太く扁平なタイヤを履くから、150psエンジンでは余程意識的に尻を振ってやらない限りは、グリップを失うことはあり得ない。 と思っていたら、路面にストライプ(恐らくローリング族締め出し用)があるコーナーで少しコーナーリング速度を上げてみると、細かい上下動に重いバネ下がついていけない感じで、しかもある速度を越えるとタイヤが浮き上がった一瞬はグリップが失われて、クルマは細かくグッ、グッと外側に出て行 った。こんな太いタイヤを履いているくせに、状況によってはリアが張り出すのもいただけない。やはり2ℓのM-spはアンバランスで、せめて325iのパワーがないとデメリットばかりが目に付いてしまう。乗り心地も何となく運転している分には気にならないが、神経を集中してみると平坦な舗装路でも常に細かい上下振動が絶えないし、大きな段差ではガンッと一瞬突き上げられる が、慣れれば許容できる範囲でもある。 アンバランスなタイヤサイズとランフラットタイヤ(RFT)の組み合わせだから、乗り心地が良い訳がないし、この悪条件を考えれば流石はBMWといってもいいだろう。

ブレーキは非常に軽い踏力で良く効くが、慣れないと踏み過ぎて無用な制動をしてしまいそうだ。しかも、最初にチョッと踏んだだけで食いつくように効くから、悪く表現すればカックンブレーキということになる。 現在のBMWのブレーキは基本的に全てがこのような特性を持っている。確かにストリートユースの実用車には、このくらい軽いブレーキは運転しやすいのはいうまでもない。 重い操舵力とは対照的に、これならば”か弱い”女性の細い足でも、パニックブレーキを踏む事が出来るから、安全上では好ましいのかもしれない。


写真17
M-spはフロント8J×17ホイールに225/45R17タイヤ、リアは8.5J×17ホイールに255/40R17タイヤの組み合わせ。150psに255は無いだろう?と言いたくなるが、カッコが良い事には異論は無い。


写真1
標準グレードはフロント/リア共に7J×16ホイールに
205/55R16タイヤを装着する。実際にはM-spよりも、こちらが正解。なお、タイヤとホイールハウスの隙間が大きく感じるのはM-spよりも車高が15mm高いため。

 

この320iツーリングを買って満足感に浸れるかどうかは、オーナーがどの程度の動力性能を求めるかに懸かっている。クルマ好きの、しかも走り屋からすればとても我慢ができないだろうが、 普段からユックリと速度を上げていく、まるで電車のような加速をするドライバーなら、この動力性能でも問題ないだろう。今まで一度もアクセルペダルを床まで踏んだ経験が無いなんてドライバーは案外いるらしい。 加速性能なんていうのは、慣れてしまうと限がないし、求めだすと何処までもエスカレートしてしまうものだ。

動力性能さえ気にならなければ、外観は文句なしにカッコイイし、内装だってドイツ車独特の雰囲気もある。標準グレードの場合はシートの表皮などに高級感はないが、日本車の見かけだけ豪華な化繊のモケットに比べれはセンスの良からくる満足感はある。 更にはハイラインやMspを奢れば、これはもう国産車では味わえない良さがあるから、他人が何と言おうと大きなお世話で、家族揃ってBMWライフを楽しめば幸せ間に満たされることは間違いない。

ところで、内装のフィーリングだの質感だのというと、そんな不明確なものでは比較にならない。クルマはスペックを比較してこそ本当の内容が比べられるなんていう、俗にいうカタログマニアの手合いからクレームがつきそうなので、 今回は特別に2ℓ 直4クラスのワゴンボディを持つライバルとしてレガシィツーリングワゴン2.0と比較してみよう。 レガシィといえば2.0ターボのGTが定番だが、320iのライバルならば自然吸気ということからDOHC180psの2.0RとSOHC140psの2.0 iを選んでみた。 細かい内容の比較は各自に任せるとして、なるほどスペックだけでは2.0Rはむしろ320iに勝っていて、性能的には2.0iに近い。ところが2.0iの価格は320iの半分以下。これだけで比較すれば、レガシィを買うのが当然で320iなんて見栄っ張りがブランドに騙されて2倍もボッタクられているという、 御馴染みの理論が成りたっても当然だろう。 流石はスバルファン!何て言えば今度はBMWファンからのクレームが付くかもしれない。そこで、大サービスに特別付録としてレガシィツーリングワゴン2.0iのミニ試乗記をサービスするので、この話題は一先ず休憩。
 
    BMW320i スバルレガシィ スバルレガシィ
      ツーリングM-sp ツーリングワゴン2.0R ツーリングワゴン2.0i
寸法重量乗車定員
全長(m)   4.525 4.680
全幅(m)   1.815 1.730
全高(m)   1.435 1.470
ホイールベース(m)   2.760 2.670
最小回転半径(m)   5.30 5.40
車両重量(kg)   1,540 1,410 1,370
乗車定員(   5 5
エンジン・トランスミッション
エンジン種類   4 DOHC 4 DOHC 4 SOHC
総排気量(cm3)   1,995 1,994 1,997
最高出力(ps/rpm)   150/6,200 180/6,800 140/5,600
最大トルク(kg・m/rpm) 20.4/3,600 20.0/4,400 19.0/4,400
トランスミッション   6AT 4AT
サスペンション・タイヤ
サスペンション方式 ストラット ストラット ストラット
  5リンク マルチリンク ダブルウィッシュボーン
タイヤ寸法 225/45R17 215/45R17 205/55R16
  255/40R17 215/45R17 205/55R16
ホイール アルミ17X8J アルミ17 アルミ16
  アルミ17X8.5J アルミ17 アルミ16
価格
  車両価格   4,790,000 2,724,750 2,299,500

3シリーズのオーナーはファミリーカーとしての需要が多いから、法人ではなく個人オーナーが多いそうで、そうなると街に溢れる3シリーズのオーナーは東証一部上場企業の中間管理職、 すなわち最近の新格差社会における中流層ということになる。 なるほど、だから3シリーズというのはネットのアチコチで誹謗中傷の的となっているのだと納得する。クルマを妬んでいるのは表向きで、実は格差社会に対する不満の象徴が3シリーズオーナーや輸入元、 しいては3シリーズを褒めたり勧めたりするウェブサイトを不満のはけ口にしているだけなのだろう。
ところで、その3シリーズオーナーの大部分を占める個人オーナーの選ぶのが殆んど320iであり、そのまた8割程度は残価設定のバリューローンを使っているとも聞く。これを聞いたアンチ輸入車派が、 それ見たことかと鬼の首をとったように喜んでいる姿が目に浮かぶ。ヤッパリ3シリーズなんていうのは、小金持ちの見栄っ張りが無理して買うんだ、と。しかし、良く考えてみれば、そんなローンの審査に合格するということは、ちゃあんとそれなりの安定した収入があることの証明で、その安定した収入があるからこそ、数年間という長いローンの支払いでクルマを買う気になるということでもあるのだ。 しかも輸入車の場合は値引きの代わりともいえる低金利で、1.99%とか0.9%とかが結構多い。融資の金利は借主の信用が高いほど低金利なのは世の中の常識だし、消費者金融が高金利な理由にしても単に暴利なだけではなく、破綻時の回収経費 (と危ない連中を雇うリスク)も入っているからこそだ。その証拠にローンが破綻して引き上げたと見られる金融物の3シリーズというのは、あまり聞いた事がない。それとも、あるところには、あるのだろうか?
日本が米国式の格差社会に向かって突き進んでから、それ程の年月が経ったともいえないのに、既にその兆候はアチコチに見られ、その一つが街中に急増した3シリーズ なのかもしれない。今回久し振りに3シリーズのベースを支える320i、 それも少し捻ってツーリングを取り上げてみたが、結局は各自の考え、いや生き方にも関係してくる問題であることを再確認したというところで、今回は終わりにしよう。この話は、何時までやっても結論は出ないのは今更いうまでも無いから。

と、ここで終ってもいいのだけれど、それでは
B_Otaku の意見が無いではないか、ということになるから、あくまでも個人の意見を一言。320iツーリングM-spに479万円 を出すのなら、325iツーリングのアプルーブドーカー(認定中古車) を買うのが得というものだ。 BMWのHPからアプルーブドカー検索をすれば、1〜1.5年物で走行距離が5000〜9000km程度の325iツーリングがM-spを含めて500万以下で結構出てくる。 325iならばBMWに期待されるスポーティな走りが充分に堪能できる点では320iとは別世界、いや別のクルマだ。BMWに限らず、高価格の輸入車は初年度の価格落ちが激しいから、 このような新品に近い中古車が買い得となる。あっ、これはあくまで個人の意見ですから。 新車の320iツーリングも気に入ればどうぞお買い上げ下さいね。

 
    


特別付録 レガシィツーリングワゴン2.0i ミニ試乗記
BMW 320i Touring試乗記にて話題となったレガシィは2.0iならば価格は約230万円と320iの標準グレード(437万円)でも、その差は約200万円! なのにスペック的には似たようなものだから、BMWは230万円のクルマを200万円も吹っ掛けてボロ儲けをしているのか?レガシィ2.0iは本当に320iの代わりになるのか?違いは無いのか?という疑問を 解決するには、実際に試乗することが一番だ。良心的なB_Otaku は急遽2.0iツーリングに試乗してみた。 う〜ん、この行動力は流石!と自画自賛しよう。

レガシィ ツーリングワゴン2.0i

  BMW 320i Touring

 
   
   

先ずはセレクターをDに入れて、ディーラーの構内をユックリ走り始めると、意外にも2ℓNAエンジンは静かでトルクフルな特性を見せてくれる。おっ、これは中々のものと期待に胸を弾ませて表通りに出るために一時停止すると、停車中のアイドリングも静かだ。この時点では320i ツーリングに完全に勝っている。通過車の波が途切れたのを確認して2車線の道路に合流し、一気にスロットルを踏み込むと、あれっ?何やらヤケに緩慢な加速をする。加速の遅さが最大の問題だった320i ツーリング並みか、いやモット遅いような気もする。 320iツーリングと比べてパワーで−10ps、トルクで−1.4kg・mと多少エンジン性能は落ちるものの、車重が170kgも軽いことから、多少有利になるかとも思ったが、320iが最新の6ATを搭載するのに対してレガシィ2.0iは時代遅れの4AT、 しかも2.0iは走行抵抗大きい4WDだから、この差は大きい。 320iツーリングのキックダウンがトロイと感じたが、これは4ATだから更にトロイ!まあ、ノンビリと走るユーザーなら問題は無いかもしれないが、レガシィ=スポーティという認識ではカナリ辛い。

乗り心地は結構良い。いや国産車としてはしなやかで安定も良いから、十分にトップクラスといえる。情けない動力性能とはいえ一旦速度に乗れば安定性は良いので、片側2車線の一級国道の結構速い流れでもスピード感が無いことも欧州車的だ。 実はこの乗り心地は以前乗った初期型のB4 3.0よりも良いような気がする。 レガシィの場合は毎年の改良によって後期型は初期型と比べて大いに改良されているから何とも言えないが、2.0iの軽量なことによる有利さも無関係ではないだろう。これをBMW320iツーリングと比較すると、BMWはランフラットタイヤ(RFT)を採用するという大きなハンディもあるために、2.0iに比べて 乗心地は硬く、気にしだすと常に細かい振動が感じられる。特にM-spの場合はアンバランスなくらいに太いタイヤを履いているのでなおさらだ。 だからといって、レガシイが320iより優れているという程でもない。まあ、価格が倍もするのに乗り味が逆転していたら大問題になるが、それ程でも無いから大騒ぎする事は無い。 それにしても、レガシィのコストパフォーマンスは驚異としか言いようがない。

軽量という面で、より顕著なのは素直な操舵性だ。元々レガシィの操舵性は国産車のトップクラスである事に異論は無いが、この2.0iは適度な操舵力と中心付近でもクイックで、これも3.0より圧倒的に軽快だった。フロントに置いたエンジンが4気筒2ℓと6気筒3ℓでは、前後バランスから考えて4気筒が有利なことはレガシィもBMWも同様だし、その軽快な操舵性を とるか動力性能をとるかも、また同じ。そういう面ではレガシィならば 2ℓターボのGT、3シリーズならば2.5ℓの325iが重量と操舵性のバランスが最も良いのかもしれない。

と、ここまでの結果は、価格が2倍もするBMW320iツーリングに対してスバルレガシィ2.0iツーリングワゴンは性能的に十分太刀打ちができるから、 成るほど2倍も出して320i買うのは見栄っ張りのクルマ音痴という論法も成り立つことになってしまう。しかし、ちょっと待って!普段は冒頭で外観や室内の質感に触れるのがB_Otaku の試乗記のセオリーだった筈なのに、何故か今回は触れていない。 そう、先ず外観を比べたらその段階でお終い。クルマのスタイルというのは個人の好みがあるから、人それぞれには違いないが、 320iツーリングならば、オーナーとなった後も自分のクルマを見る度に、「う〜ん、やっぱりカッコ良いクルマだなあ」と我ながら悦に入ることは十分に考えられる。 しかし、レガシィツーリングワゴンを見て、そのスタイルに惚れ込むユーザーがどのくらいいるのだろうか。少なくとも個人的には、あのデザインを見た段階でNGだ。 それに批判の多いサッシレスドアも大いに疑問がある。いや、サッシレスが悪いとは思わないが、あれを採用するならばドアを閉めた直後にガラスが10mm程持ち上がり、ボディのフレームにシッカリ食い込む構造にするべきだ。 BMWのクーペはこの方式だし、比較的安価な設定のMINIも同じ。勿論ポルシェも、この方式で、オープンのボクスターでさえもソフトトップでありながら枠に食い込むようになっている。 国産ではフェアレディZが同じ方式を採っている。それに引き換え、レガシィは単にガラスをボディ側のゴムパッキンに押さえつけるだけ。 いくら乗り味が良いといっても、これでは全てが台無しだ。そして、これも非難轟々の出来の悪いシート。シートの出来については、今でも欧州車と比較すると敵わない 、国産部品のアキレス腱の代表だが、それでも最近はホンダシビックTypeRの例のように結構良くなってきている。 それに対して、レガシィのシートは酷い。まあ、後付けでレカロなどに代えれば良いという意見もあるが、それでは高いものにつくし、何よりインテリアの見かけがアンバランスになってしまう。 他にもインテリアのセンスや質感など、BMWが乗るたびに納得できるのに、レガシィは乗るたびにシラけてしまう。これが気にならないユーザーならレガシィは間違いなくコストパーフォーマンス抜群だから、世間の評判とおりに国産の一押しではある。

1370kgのボディに対してNA2ℓ、140psというのは如何にも力不足を否定できない。これで気にならないユーザーは問題ないが、世間一般のクルマ好きからみたら、ちょっと我慢の限度を越えているかもしれない。 そういう意味では、おなじNAでもDOHC180psの2.0Rに期待がもてる。最新のモデルでは2.0RのバリエーションはSpecBのみとなったので、 装備も走りも満足できるだろうし、何よりも今のご時世に5MTの設定があるというのが嬉しい。ただし、価格は5MTで267万円となるが、それでも十分に安い。 それでも、更に充実した動力性能を求めるならばターボ車、2.0GTがレガシィの一押しには違いない。何しろレガシィGTツーリングワゴンというのはマニア向け国産車では定番中の定番だから、これを買っておけば間違いはない。 ただし本体価格では300万円を越えるから、ナビなどの高価なオプションを充実したら、総額は400万円に達する。これはアウディA3アウトバックの中級モデルが買える価格だ。 そういえば、最近アウディA3を購入した例をチョクチョク見かける。多くが普通の国産車からの乗換えだ。動力性能ではレガシィGTに軍配が挙がるだろうが、 クルマを所有する喜びを加味した総合評価では如何なのだろうか?また宿題が増えてしまった。