メルセデスベンツ E300 ステーションワゴン & E320CDI (2006/9/26)
  後編 (E320CDI)

今回マイナーチェンジしたEクラスの話題としては、欧州では主流になりつつあるのに日本では殆どお目にかかれない乗用車用ディーゼルエンジンを久々に 日本国内向けとしてラインナップしたことだろう。 そこで、この噂のCDI(Common-rail Direct Injection)エンジンを搭載したE320CDIにも試乗した。このクルマは正式デリバリー(12月頃の予定)に先駆けて輸入元が欧州(英国)仕様を単発で輸入した広報用で、 既に各種の雑誌でテストされた後に、現在は日本全国を回ってユーザーは元より、デーラーの営業マンやメカニックのCDI体験にも使われている。従って、年末に正式に発売されるモデルとは異なる面もあると思うので、 あくまでCDIについてのインプレッションとする。


E320CDIのV6 3.0ℓディーゼルエンジン。211ps/4000rpm、 540N-m/1600〜2400rpmを発生する。
このトルクはE550をも上回るから、E350なんて目じゃない。

E320CDIに乗り込んでみれば、そこはEクラスそのものだが、違いと言えばメーターパネル右側の回転計のフルスケールが見慣れた7000rpmではなく、5000rpmなことくらいだ。 ただし試乗車は英国仕様のために、真ん中の速度計がマイル表示になっているが、デジタル表示はkm/hに設定されていたので使用にあたっての不便はない。なぜ、英国仕様なのかといえばRHD(右ハン)だからで、この面からも多くの日本人 が乗って良さを認識してくれれば良いという真面目な考えが伝わってくる。
既にエンジンは掛かっていたが、アイドリングは安定しているし振動も殆どないから、ガソリンエンジンしか知らない普通のユーザーでもクレームは付かないだろう。ガソリン車と全く同じ操作感覚のセレクトレバーをDに入れて走りだすと、その瞬間から巨大なトルクを感じる。これはもう半端ではなく、E300と同じEクラスであることが信じられないくらいにグイグイと加速する。しかも遅い流れに乗って巡航している時の回転計は1200rpm当たりを 指しているし、そこからスロットルを踏み込めばシフトダウンせずに滑らかに加速していく。 次の交差点の信号待ちからスタートする時にフルスロットルを踏んでみると、当然ながら強力な加速とともにディーゼルの概念を破るようにスムーズ に速度を上げていく。 音はクラウン並みとは言わないまでも決して煩くなく、並みの乗用車と同等と言ってよい。約4000rpmでATがシフトアップした時点で始めてこのクルマがディーゼルエンジンだった事を思い出す程度だ。 確かに高性能なガソリン車ならば7000rpm程度まで回るだろうが、実際にこんな大トルクエンジンを公道で7000rpmまで回すチャンスは先ず無いし必要も無いから不満も起きない。 それどころか、一番必要な常用回転域での強力なトルクは実用車としては理想的だ。
既に説明したように、このクルマはサンプル輸入された英国仕様なので、年末からデリバリーされる日本仕様とは異なるセッティングの可能性が多いが、ステアリングを握って いて気付くのは、 少し前に乗ったE300ワゴンのメルセデスとは思えないくらいに軽快な、言ってみればBMW的な操舵特性とは大分異なり、良く言えば穏やかで、悪く言えば少しダルイ。 しかし、E320CDIのような穏やかでドッシリした操舵特性が本来のメルセデスとも思えるので、これは個人の好みの問題だろう。と、言ってもレクサスGS450h(ハイブリッド) とGS350程の差はないから、現在のハイブリッドが如何に重量が重く発展途上かが良く判る。

何やらベタ褒めになってしまったが、それ程までに最新のCDIの性能は日本の常識が間違っていることを思い知らされる。今回、メルセデスが日本の市場にディーゼル乗用車を展開するという勝負に出たわけだが、他のメーカー、例えばBMWだってメルセデスに勝るとも劣らないディーゼルがあり、 ドイツの自動車雑誌などを見れば7シリーズのディーゼルも結構売れているようだ。アウディに至っては、何と今年のルマン24Hレースにディーゼル車を持ち込んで優勝までしてしまった。 こうして見ると日本のメーカーも早急に対応する必要があると思うのだが。


英国仕様を先行輸入した輸入元の広報車。雑誌取材の後は全国を回ってキャンペーンを行っている。

 


右の回転計の目盛がフルスケール5000rpmでレッドゾーンが4600rpmであることから、このクルマがディーゼルエンジンを搭載している事が判る。 中央の速度計は英国仕様のマイル表示だが、中央のデジタル表示がkm/hに設定してある。

今までメルセデスベンツ(MB)についてはどうも手薄になっていたのは事実だ。 B_Otaku がその昔、欧州プレミアムカーの凄さを知って何時かは手に入れようと決心したのは、メルセデス300TD(ワゴン)に乗ったの が発端だったし、第1線を退く自分の父親が190Eを買ったのも B_Otaku の強い勧めが主因で、この時父親にBMW3シリーズを推薦する気は全く無かった。 実は、5年ほど前にクルマを買い換えるに当たって、用意周到に5年計画で資金を貯めていたのはC200を買うためだったのだ。それでは、何故BMWに変更したかといえばC200ワゴンを買うつもりで訪れたデーラーの担当営業マンが大外れで、それでも我慢して憧れのCクラスを手にする積りで気持ちを固めていた時、ふと近所のBMWデーラーに寄ってみれば、偶々居合わせた営業マンはMBとは月とスッポンのやり手で、兎に角試乗をしてみたら何とE46はMBに勝るとも劣らないどころか、FMCによってチャチになったW203よりもガッチリとしていて、寧ろ往年のメルセデスに近いくらいだったのには驚いた。しかも、その日の夜には自宅の郵便受けに見積書が入っていて、なんと赤書きで訂正してある価格は、C200を買うよりも100万円程資金が節約できる のだった。 しかも当時の320iは6気筒2.2ℓだから、スーパーチャージャー付きとはいえ4気筒2ℓのC200よりも明らかに買い得だった。そんな事情により B_Otaku の試乗記は自然にBMWが多くなってしまった 原因だ。
MBについてはその後は付き合う販売店を変更したのだが、結局まともに試乗をさせてもらえるのはCクラス止まりで、Eクラスは試乗と言ってもチョイ乗り程度だったから、詳細な試乗記を書きようが無かった。今回Eクラスの試乗記を発表できたのも環境の変化のお陰だった。輸入プレミアムブランドの試乗というのは非情なもので、試乗を希望する車種と同等(同価格帯)以上のクルマで乗り付けないと相手にされないか、 適当にあしらわれるのが普通だ。

最近落ち目とはいえ天下のメルセデスEクラスだから、最盛期ほどの強さは無いものの今だ5シリーズと熾烈な1位争いをしている事には変わりはない。それに実は5シリーズが本気でEクラスと比較されるようになったのは極最近、現行モデルのE60 辺りから で、 数年前、先代のE39の時代はと言えばEクラスより格下に見られていたし、実際に実売価格も安かったしユーザー層も確かに違った。
さて、アナタの好みはEクラス、それとも5シリーズ?実際にはどちらを選んでも後悔はしないだろうし、最高のオーナーカーである事に間違いはない。 えっ、その前に貯金が必要?いや、それより今の仕事を頑張って収入を上げるのが早道か?でも、今の会社に居たんじゃそれも無理だし、この際転職でもするか。 いえいえ、独立して自営業となるか・・・・・等等。クルマを買う前にやる事は多そうだ。。