Nissan Fairlady Z NISMO (2017/12) 前編 その2

  

それでは本題として先ずは内外装写真から始めるが、例によって既に日記でよりサイズの大きい写真を掲載しているのでこちらでは趣向を変えてみるのも何時も通りだ。
⇒ Fairlady Z NISMO (2017年12月25日からの日記)

今回の試乗車はフェアレディZ NISMO 6MT で価格は 629.3万円だからポルシェ 718 ケイマン (655万円) とほぼ同じ。まあポルシェの場合は例によって全くオプションの無い素ッピン価格だから実際にはプラス50万円は必要で、事実上は700万円くらいになるが、それでも同価格帯ということで今回はそのケイマンと比較をする事にした。なお写真の都合で部分的にはボクスターも使用しているが、特に内装は殆どケイマンと同じと思って良い。

それでは早速比較を始めると、最初に斜め前方からの眺め (写真11) は意外にも雰囲気が似ているが、良く見ればフロントにエンジンを積んでいるZのボンネットは当然位置が高く盛り上がっている。次に斜め後方 (写真12) は‥‥写真では結構雰囲気が似ているように見えるが、実際に2台を並べて比べると恐らくZの方がメタボ気味に見えるだろう。


写真11
雰囲気が似ているがフロントにエンジンを積んでいるZのボンネットは位置が高く盛り上がっている。


写真12
写真では判り辛いが実写を比べるとZの方がメタボ気味に見える。

真正面 (写真13) では両車のサイズが Zは全幅 1,870 x 全高 1,315o で 718 は全幅 1,825 x 全高 1,295o だが、実は718の全幅はリアのフェンダーが大きく膨らんでいる部分の寸法であり、実際にはフロントは1,700o くらいしか無い。しかし Z も実は NISMO が標準モデルより 25o 広いのは太いリアタイヤに合せて日本の法規に適合させるために樹脂部品の突起 (写真14右下) を付けている為だが、それでもフロントから見た縦横比は 718 と大して変わらず、プロポーションもそれ程違わないように見えるが、これまたZの方が一回り以上大きい。

サイドビュー (写真14) ではZが全長4,330o x 全高1,315o、718 は全長4,385o x 全高1,295o と全長は同等なのに全高はZが 20o 高いから当然見た目は違うが、この差の多くはZのウエストラインが高い事が原因で、その原因を辿ればフロントのボンネット位置の高さに起因している。なおサイドビューでは 718 の如何にもそれらしいサイドエアインテイクが外観上の大きな特徴となっている。

真後ろからの比較 (写真15) では 718 もフロントと違い全幅一杯となるから、広さと低さとキャビンの狭さがハッキリと認識出来る。Zも 718 程では無いがプロポーションとしては似ている。


写真13
実は718の全幅は大きく膨らんでリアフェンダーの寸法でありフロントは1,700o くらいしか無い。

写真14
Zが全長4,330o x 全高1,315o、718 は全長4,385o x 全高1,295o と全長は同等なのに全高はZが 20o 高い。
Zはボンネット位置の高さに起因してウエストラインが高い。

なお Z NISMOはリアタイヤに合せて日本の法規に適合させるために樹脂部品の突起を付けている。



写真15
718 のリアは全幅一杯となるから全幅の広さとキャビンの狭さがハッキリと認識出来る。
Zも 718 程では無いがプロポーションとしては似ている。

フロントライトはZの特徴的な形状が目立ち、718 はライトよりもボンネットが低いと言う形状が良く判る。リアの排気管はZが両側に各1本で、718 はスタンダードが中央楕円で1本、Sでは2本となるが、実はスタンダードも直前までは左右から別々に来ているのを最後に1本に纏めているだけだ。しかし両車ともこれ見よがしの4本という事は無いのは偶然だろうか。

写真16
フロントライトはZの特徴的な形状が目立つ。排気管はZが左右から、718は中央からとなる。

 

今度はドアを開けてみる (写真17) と、あれっ? 第一印象はやたらと似ている!黒いレザーとセンターの赤いアルカンターラのバケットシートという具合にセンスがマルで同じだ。まあ 718 については今回の試乗車が数多くのオプションの中から偶然にこの配色を選んでいただけだが、Zについては NISMO はこれが標準のようだ。しかし良く見るとZの方がよりスポーツ度が高いレーシング用みたいな形状となっている。ところでこの写真で気が付くのはZの方が床から座面迄の高さが随分と高いように見えることだ。その理由の一つに 718 のサイドフレームの位置が高い、すなわちフレームの剛性を上げている設計の為に座面が低く見える事がある。そしてもう一つはZの座面自体がフロアから高い位置にあるのも事実で、まあこの辺はベースがセダンであるスカイラインとスポーツカー専用で天下の 911 と前半分を共有している 718 との生まれの違いでもある (写真18) 。

シートの調整は電動式が当たり前となっているこのクラスのクルマには珍しく両車共に手動式だが、この手のシートは目一杯低い事から電動機構を組み込むのが難しい、という話を聞いた事がある (写真19)。なお 718 はバックレスト側面上部のレバーを引くと簡単に前方に倒せるために極僅かな空間とはいえ、そこにモノを置く時には重宝する。ところがZはどうもワンタッチで前傾させる機構は見当たらなかった。流石はポルシェ、と言いたいところだが実はリアにシートがある 911 と共有しているからリアシートが無いにも関わらずこの機構が付いているのだろう。勿論共有する理由は無理に取っ払うよりもそのまま付けていた方が却ってコストアップが少ないからだ。大量生産で成り立つ自動車という商品は極力部品を共用して点数を減らすのがコストダウンとなるだらだ。これはプレミアムブランドといえども同様で、最近の BMW のシリーズに跨る共有化もまさにこれが理由となっている。


写真17
シートはサイドが黒いレザーとセンターは赤いアルカンターラのバケットシートという具合にセンスがマルで同じだ。


写真18
シートの調整は電動式が当たり前の時代では珍しく両車共に手動式を採用している。

性能には全く関係無いがある程度高級なクルマには必ず付いているスカッフプレート等と呼ばれるサイドスカットル上のプレートは、何故か偶然にもブラックのプレート上にシルバーで "Z" および "Boxster" と書かれている (写真19) 。なおケイマンはこれまた何故か全く異なっている 。

ドアトリムについてもZは何となく 718 に似ていて、特に特徴的なポルシェのドアノブを少し短くしたようなZは、それ以外の部分でも似たような雰囲気で、これはポルシェを完全に意識しているとしか思えない (写真20) 。アームレストの付近を見るとアルカンターラ主体のZとレザーの 718 は雰囲気がまるで違うが、 718 のカチッとして質感は如何にもドイツという感じはする (写真21) 。


写真19
スカッフプレートは何故か偶然にもブラックのプレート上にシルバーのロゴを使用している。


写真20
ドアトリムもZは 718 に似ていて、Zのドアノブはポルシェを短くしたような形状だ。


写真21
アームレスト付近はZの柔らかそうな雰囲気に比べて718 のカチッとした質感は如何にもドイツという感じがする。

ダッシュボードについては其々のデザインがあるのでソックリとはならないが、サルーンに比べるとダッシュボードの低いスポーツカーということで、これもまた雰囲気は似ている (写真22) 。しかし標準のステアリングホイールは両車全く違う雰囲気で、Zの方が小径で太くてオマケにセンター位置に赤いマーカーが付いている (写真23) 。シートでもそうだったが、Zは NISMO バージョンと言う事でポルシェで言えば GT シリーズ並の雰囲気を持たせているのかもしれない。

そしてセンタークラスタは流石にこれも両車(社)のポリシーの違いを表している (写真24) 。Zは最近の日産というよりも1世代前の日産という感じなのは、Zが10年前のクルマである事が大きな理由となる。718 についてはポルシェが 981/991 となった時点で大幅に近代化され、センタクラスターの高い位置からコンソールに繋がり、そのコンソールは急な勾配で後方に下がっていくものだ。そしてそのセンタークラスタ上のエアコンやオーディオのパネルは、これまたZは古いセンスであり、対する 718 はデジタル化されていて見るからに新しい雰囲気がある。またセンタークラスタ最上部から更に少し飛び出した位置には、Zでは初代 S30 から伝統の3連メーターが、718ではオプションのスポーツクロノに付くストップウォッチというどちらも殆ど実用にならないアクセサリーが鎮座しているが、まあこれもスポーツカーとして演出ということだ。

写真22
サルーンに比べるとダッシュボードの低いスポーツカーということで雰囲気は似ている。


写真23
標準のステアリングホイールはZの方が小径で太くてオマケにセンター位置に赤いマーカーが付いている。


写真24
センタークラスタ上のエアコンやオーディオのパネルをみると、Zは古いセンスであり 718 はデジタル化された新しい雰囲気がある。

以上が走り出す前の基礎知識という事になるが、勿論結論は特にスポーツカーでは走って何ぼだから、この時点では特に内外装だけでの評価はしない事にする。

続きは後編にて。

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