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Mazda CX-5 XD (2018/2) 後編 その2


  

ここで BMW ラインナップ中で CX-5 XD と同等エンジンであるB47D20A (X3 xDrive 20d 190ps 400N-m) との特性を下の図で比較して見る。先ず CX-5 のトルク特性は 2,000rpm を頂点として前後では大きく下がっているのに対して BMW では 1,750〜2,500rpm の範囲でフラットトルクとなっている。しかし、BMW がフラットな領域で CX-5 はそれ以上のトルクを発生しているから、本来ならトルク不足というか怠い加速の理由にはならない筈だ。しかし体感上は明らかに CX-5 の方がトルクが不足している。

となると駆動系、特にトランスミッションの影響は如何だろうか? そこで何時ものフォーマットでギアの特性表を下に纏めてみた。一目で気が付くのはCX-5 は 6速であるのに対して BMW は8速という違いがあり、実際に表を見ても 8速のきめ細かさは良く判るし、これなら丁度良いギア比を選んで最適なエンジン回転数をキープ出来るし、おまけにBMW のエンジンはフラットトルクだ。これに比べると CX-5 は 6 速だから回転数の段差が大きくしかもエンジンのトルク特性はピーキーという、これは体感上でも大差が付いて当然だった。

と、一つの理由は納得出来たが、それでも絶対的なトルクは CX-5 だって充分にある筈なのに何故にトルク感の無い加速をするのだろう。この原因として思い当たる事は‥‥無いっ!と、言ってしまっては話が進まないが、まあ正直言ってマツダのディーゼルのトルクが実際には BMW と同じではない、要するに、まあ、何ですよ。

実はこれについては AXELA XD 簡易試乗記後編で同じ事実を取り上げている。
 ⇒ MAZDA AXELA XD 簡易試乗記 後編 (2014年4月)

しかしアクセラ以前に試乗したマツダのディーゼル、すなわち初代 CX-5 とアテンザではこのトルクの勢いの無さは感じなかったのだが、何故にアクセラと今回の新型 CX-5 ではこれを感じたのかが疑問だが、何やら謎はドンドンと深まって行く感じだ。

ところで試乗結果の良かった初代と今回の新型のディーゼルエンジンは型式では同じだから基本的には同じ筈で、スペックではパワーで 175 → 190ps 、トルクは 420 → 450N-m へとそれぞれ多少アップしている訳で、トルク感が多少アップするなら兎も角ダウンするのは理に適わない。その新旧のエンジンルーム内を比較すると、初代のエンジンカバーがメタリックブルーに塗装されている以外は見た目では違いは判らない (写真26) 。

とまあ、色々文句も言ったが、フルスロットル何て踏んだ事の無い、いつも大人しく走る普通のユーザーならば特に問題にもならないだろう。

写真26
XDのエンジン型式は新型も初代も SH-VPTS 4気筒 2.2L ターボ ディーゼルだが、パワーは 175 → 190ps 、トルクは 420 → 450N-m へとそれぞれ多少アップしている。

エンジンルーム内の眺めは初代のエンジンカバーがメタリックブルーに塗装されている以外は見た目では違いは判らない。


写真27
ストラットタワーは新旧で同じ構造だったのはシャーシーが変わらないからだ。

次に操舵性と旋回性はどうだろうか。先ず操舵力はもの凄く軽くて「ちょつと軽過ぎじゃねぇ」というくらいだ。それでも一般にスポーツモードなら多少重くなるのだが、前述のようにディーゼル車には走行モードの切り替えが無いのだ。 そしてレスポンスはと言えば、これはまあ SUV としては普通で、効き過ぎる事も無いがトロくて苛つく事も無い。ではコーナーリングはといえば、初代 CX-5 に初めて試乗した時はこれが本当にマツダ車か? しかも SUV!という驚きだったが、あれから6年が経過して世間のレベルも上がってきて、今回は初代程の感激は無かった。

ただしクルマ自体の剛性感は初代と変わらず、国産のこの手の SUV としては悪くは無い。それでエンジンルーム内を見る時に、ストラットタワーを新旧比較して見たが、これは殆ど同じモノだろう (写真27) 。要するにプラットフォーム等は殆ど初期型からの使い回しという事だ。そりゃ、まあ、社運を掛けて新設計したスカイアクティブコンセプトのシャーシーだから、そう簡単に変更があるようでは困るが‥‥。

今回試乗したのは FWD 仕様だったが、まあ適度に出来の良い FWD 車と言う感じではあるが、例えば BMW X1 等と比べて同等かというと、う〜ん、何とも‥‥という事にしておこう。

新型の乗り心地は可也硬く、そういう意味では欧州車的だから、言い換えれば欧州車に慣れているドライバーなら問題無い。と、書いてはみたが、最近は国産車全般に乗り心地は硬い傾向があるから、この CX-5 も充分に許容されるだろう。その乗り心地だが初代はこれ程硬くも無かったような記憶があり、これはもしかしてタイヤの影響では、と言う事も考えられるので両車のタイヤを比較して見る。今回の試乗車は中間グレードの PROACTIVE で標準装着のタイヤは 225/55R19 、初代の場合は 225/65R17 という違いがあり、ホイールが2サイズ大きく扁平な新型の方が乗り心地では不利になるのは当然だった (写真28) 。しかし写真で比べると随分ハイトが違って見えるが、初代の65%扁平というのは20年前ならば充分にスポーティーなサイズだったのだが、時代と共に基準も変わってくる事の見本みたいなモノだ。

ブレーキについては新旧CX-5 でフロントは同じ鋳物の片押しキャリパーを使用しているようだが、リアについては少し違う。マツダのブレーキはフォード時代のグローバル調達という世界中から部品を集中して購入する事で価格を下げるという方針で、BMW でも使用しているドイツのコンチネンタル (旧デーべス) 製キャリパーを使用していた。そして途中からこのキャリパーをマツダ系のシンテックという部品メーカーでノックダウンを始めドイツ製よりも価格を下げるという作戦で、更にはこのメーカーをコンチネンタルが買収して傘下にしてしまった。ところが思うように価格は下がらず、結局全世界に供給するのは東南アジアの工場にしたという経緯がある。まあ勿論マツダ向けは日本製だろうとは思う。それで肝心の効きは、勿論問題無く良く効く。


写真28
新旧の試乗車は新型 (225/55R19) の方がホイールで2サイズ大きい。初代 (225/65R179) のタイヤのハイトは見るからに高い。


写真29
新旧共にオーソドックスな鋳物のシングルピストン片押しキャリパーを使用している。

結局 CX-5 の状況は、例えれば中学1年までは偏差値 40代の並み以下の生徒だったが、その後頑張って2年の末には 60までアップして、家族も先生も大喜びだった。しかしその辺が限界だったらしく、3年生になっても偏差値は60 前後をうろちょろしていて、まあそれでもマアマアの高校には入れるだろうが、県下でもトップを争う旧制中学から続く伝統高に入るには70クラスの偏差値が必要となり、そういう目で見ればイマイチだなあとなる訳だ。

期せずとして BMW X1 の話題となったが、X1 で CX-5 XD とエンジンスペック的に近い (と言ってもディーゼル同士というだけで、排気量も違うが) のは xDrive 18d で価格は 470万円であり、今回試乗した CX-5 XD Proactive の約300万円に対して5割以上も高いのだから、それは違って当然だった。なお X1 でもボトムラインの sDrive 18i ならば400万円からあり、これなら3割程のアップというか100万円の追加で購入できる。

こうなると特別編で Mazda CX-5 vs BMW X1 なんていうのもやってみたい気もするが、流石に無理もありそうで、それなら取りあえずは日記で両車のスペックや内外装を比較してみてから考えようと思っている。さて、どうなる事やら。