Nissan X-Trail Hybrid (2016/8) 前編 その1

  

日産のオフロード車の歴史は古く、1951年に警察予備隊 (後の自衛隊) 向け小型トラックの競争入札に加わった試作車に始まり、結局この時は採用に至らなかったが民間への販売に活路を見出したのが初代パトロール (W41、写真1) で、この時同じく採用に至らなかったトヨタ ジープBJ がランドクルーザーの前身となった。

パトロールは1960年には2代目 (60系) へと進化し、このモデルは初代のジープを連想させるスタイルから一新してランドローバー的な寄り目のヘッドライトを持ったものだった (写真2) 。この2代目は20年というロングセラーを続けた後に1980年に3代目の160系へとFMC されたが、このモデルからは国内販売モデルはサファリと名称を変更した。

更に7年後の1987年には 2代目サファリ (Y60、パトロールとしては4代目) へと FMC されたが、このモデルはサスペンションに極めてストロークの長いコイルリジット方式を採用していて、これはレンジローバーやメルセデスG などと同じ方式で、ライバルのトヨタ ランドクルーザー60よりも内容的には進んでいたが、シャーシー開発に全てを投入したためにボディは旧型の使い回しに近く、そのために妙に張り出したブリスターフェンダーや、当時の国産車としては異例の1,800o を超える全幅の割には事実上5ナンバーサイズボディなど、商品としてはトヨタランクルに大きく水を開けられたいた。

しかも、クロスカントリーブームにあやかろうとワイドタイヤを装着するためにブリスターフェンダーに更にオーバーフェンダーを付けた異様な出で立ちのグランロードというモデルも発売し、これが実はブームの頃には一部のユーザーに好まれて、このバケモノを街中で見る機会も結構あった (写真3) 。因みにこのグランロードのハイルーフは何の事はない兵員輸送車としてヘルメットを被って小銃を立てるための空間を確保するのが目的であり、しかもオプションのサンルーフは正方形の妙にデカいものだったが、これって多分機関銃を出すための穴の ”平和利用” じゃないのかぁ。実際湾岸戦争当時の現地からのニュース映像では ”UN" と書かれた白いパトロール (サファリ) の勇姿が度々報道されていたのを覚えている読者もいる事だろう。

こんな情況だったから、サファリを買うのは余程の物好きというかマニアというか、ライバルのランクル、取り分け 1989年から販売された 80系 (写真4) の人気には勝てず、販売台数でも大いに差を付けれていた。その 80 でさえバカでかい図体と高価なことから実際の数量は大したことが無く、当時の四駆ブームを支えていたのはもう少し下の車種だった。


写真1
初代パトロール W41 (1951 - 1960)。


写真2
2代目パトロール 60系 (1960 - 1980)。


写真3
2代目サファリ Y60 (1987 - 1997) 写真はワイド&ハイルーフでブリスターフェンダーに更にオーバーフェンダーというバブル時代の象徴であるグランロード。


写真4
ランドクルーザー80 (1989 - 1997)。オフロードのクラウンとも言われた高級4WDだが、走破性も本格派だった。

その一つが日産のテラノで、初代テラノ (WD21) はダットサントラックをベースとして、日産北米デザインスタジオがデザインした都会的なボディを載せたことから大いなるヒット商品となった。取り分け米国ではパスファインダーという名称で販売され、従来の 4WD車とは一線を画したスポーティーなスタイルで、オフロードの Z カーと言われた程だった。

因みに日産のテラノに対して内外でのライバルとなったトヨタ車は国内ではハイラックスサーフ、米国ではフォーランナーと呼ばれたモデルで、初代 N60 (1983-1989) はハイラックスピッアップトラックの荷台にハードルーフを付けたようなクルマだったが、2代目 N130 (1989-1995) ではランクル80 を彷彿させるようなスタイルでテラノの市場に食い込み、要するに後出しジャンケンと強力な販売網により日本国内ではテラノの勢いが衰えていった記憶がある。

しかしこれらの 4WD ブームもバブル経済の崩壊とともに呆気無く去ってしまったのは当然といえば当然で、特にランクルやサファリのような警察や役場が買うような大型オフロード車を個人のユーザーが買うなんていう事は車両価格もさることながら維持費も莫大であり、やはり異常な時代を象徴していたのだった。


写真5
初代テラノ WD21 (1986-1995)
スポーティーな4WDとして現在のSUV の元祖ともいえた。


写真6
2代目ハイラックスサーフ N130 (1989-1995)
後出しジャンケンでテラノの市場に食い込んで若者の憧れの車種となった。’

このように 4WD 車は完全に忘れ去られた存在となり世の中はミニバン一色となったが、そんな中で BMW X5 が新時代の4WDオフローダーとして、現代の要求を満たすような走行性能を持った新しい高級車という事で富裕層の間で徐々に増殖してきた。米国ではレクサス RX が一足早くこの分野で成功していたし、このような新時代の4WD 車は SUV と呼ばれて現在に至っている。その後はポルシェやメルセデスもこの分野に参入してきたのは御存知のとおりだが、これら1千万円クラスのブーム (という程でもないが) と共に一般的な価格帯、すなわち200万円代を中心とするものも各社から続々と発表されている。こうなると SUV は悪く言えばナンチャってオフローダーだから、遂には FWD モデルなんかも発売されて、従来の SUV =4WD なんてい法則は通用しない時代であり、結局 SUV =背の高いボディを持ったオフローダー風の乗用車、というのが現状だ。

話を戻して伝統のサファリ (パトロール) やスポーティーな4WD車、すなわち SUV の元祖でもあるテラノなど、この手のクルマには充分な経験を持つ日産が時代の要求に沿った低価格のミドルサイズ SUV として2000年に発売したのがエクストレイル (初代 T30) だった。2代目は2007年にFMC された T31 (写真7) で、このモデルからは欧州向けの兄弟車である英国生産のキャッシュカイと、主として国内向けのエクストレイルとの2本建てとなった。当初キャッシュカイは国内向けとしてデュアリス (写真8) として英国から輸入販売されたが、トラブルの多さから日本向けは急遽国内生産に切り替えられた。当時のディーラーマンは売ったクルマのトラブルフォローが忙して商売にならないと嘆いていたのを覚えている。

しかし、こんな不具合だらけのクルマを英国人を始め欧州人は何も文句を言わないのだろうか? まあ、英国車の標準からすればこれでも上等なのかもしれない。そういえば、BMW になる前のローバー時代のmini の信頼性も酷いもので、ディーラーの修理工場には敷地内からあぶれた故障車が路上にまで置かれている状態は知る人ぞ知る事実だったくらいだ。

なお、先代エクストレイル&デュアリスについては下記の簡易試乗記を参照されたい。

 ⇒ Nissan (旧)Xtrail 25X 簡易試乗記
 ⇒ Nissan Dualis 2.0G 簡易試乗記

この2代目エクストレイルには 2008年に世界初のポスト新長期規制に適合したクリーンディーゼル車の 20GT が追加された。そしてこの 20GT は当初は MT のみだったが、2010年に AT モデルが追加された。

 ⇒ (旧)Xtrail 20GT Clean Deiesel (MT) 簡易試乗記
 ⇒ (旧)Xtrail 20GT Clean Deiesel (AT) 簡易試乗記 

今回の本命である3代目エクストレイル (T32) が最初に発売されたのは2013年で、スタイルは先代の四角張ったデザインから一転して欧州テイストの丸みを帯びたものとなり、要するにデュアリスに近付いたという感じだ。事実このモデルへの FMC を機に、デュアリスの販売は終了している。なお、旧モデルといえば前述のクリーンディーゼル車のみは2015年まで継続販売されていた (ようだ) 。

実はこの3代目 (現行) については 2014年1月に試乗しているが、サスペンションの詰めがイマイチだった。

 ⇒ NISSAN X-trail 20X 簡易試乗記

そんな事から、その後エクストレイルに対する関心はあまりなかったのだが、偶々近所でフォルクスワーゲン トゥアレグからエクストレイルに乗り換えた例があって、そのクルマを見ると今までトゥアレグが止まっていた駐車場にエクストレイルを置いても決して差がつかない、というかフィーリング的にも違和感がないのに気が付いた。そしてそのクルマのエンブレムには "HYBRID" の文字が。

それで慌てて調べてみたらば既に昨年にハイブリッドモデルが追加発売されていたし、諸元を見れば結構マトモなハイブリッドのようだ。いや、そう思ったのはセレナでこれがハイブリッドかぁ? なんていうのを出したからで、またあれかぁ、何て感じたからだ。そこで本来は簡易試乗記で充分のような車種だが、ここは一つ詳細に評価してみよう、ということで試乗記本編で取り上げる事にした。それに本音を言えばトヨタ プリウス、スバル レヴォーグなど本来簡易試乗記で扱うべきクルマを試乗記で撮り上げたこともあり、日産車も同様に何かをやろうと思っていた矢先で、これで一件落着となった。


写真7
2代目エクストレイル T31 (2007-2015)
現行もモデルに比べて角ばったデザインだった。


写真8
デュアリス (2007-)
2代目エクストレイルの兄弟車で主として欧州向けモデル

ここでエクストレイル ハイブリッドの仕様を他社のライバル (ハイブリッド SUV) と比べることにする。そこで国産のハイブリッド SUV を調べてみたらクラスは一つ上という雰囲気だがサイズ的にはエクストレイルとそれ程変わらないトヨタ ハリアー、フィットベースでスモール SUV とでもいうべきホンダ ベゼル、そしてスバル インプレッサベースの SUV であるXV という3車が該当した。なお、国産ハイブリッド SUV ではあるが価格帯がマルで異なるレクサス RX は除外した。

一番の興味は HV としてのモーター性能だが、システム出力では老舗のトヨタ製 HV であるハリアーとそれ程違わないし、HV としては動力性能以上に重要な燃費性能でもハリアーより少し劣るくらいで、HV の経験や価格差を考慮すれば少なくともスペック上では充分に頑張っている。と、一見して感じたが、冷静になってみればエクストレイルとハリアーではモーターのパワーはそれぞれ41psと 211ps、トルクでも160N-m と409N-m だからマルで勝負にならない。要するに低速側のトルクでは圧倒的にハリアーが優っている事が判る。まあ価格が100万円も安いから許してやろうか。

ということで内外装については ”前編その2” に続く。

⇒前編その2へ