NISSAN NOTE e-POWER (2017/2) 後編 |
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ドライバーズシートに座った印象は只のノートだから感動は元より特に目新しさも無い。それでセンタークラスター右側のステアリングホイールに隠れる位置、要するにガソリン車と同じ場所にあるスタートスイッチ (写真31) を押すとエンジンが目覚める‥‥事は無く、正面の自光式メーターにあかりが灯る、というのは EV や HV としては普通だから最近では全く違和感は無い。次に AT セレクターはといえばセンターコンソール上に如何にも HV や EV 的形状の短いレバーがあり、その手前に表示されたパターンもプリウスなどでお馴染みの右→下と動かすとDレンジとなる。なおコンソールについては同じノートとはいえガソリンモデルとは ATセレクターのみならずコンソール自体の形状も全く異なっている (写真33) 。 ブレーキペダルを踏みながらレバーをパターン表示に従って右から下に押すとDレンジとなった‥‥筈だが、特にアクションは無い。よく見ればメーター上のインジケーターに表示されるのだが初めて乗ったクルマだからそんなところに気を配れる訳も無い。なおレバーを離すと中点に戻るのもプリウスと同じだ (写真34) 。次にこれまたガソリン車と同じで EV っぽく無いレバー式のパーキングブレーキをリリースして恐る恐るブレーキペダルを離すと僅かにクリープで前進するような感じがあり「そうか、これで良いんだ」とか思いながらもう少しアクセルベダルを踏み込み公道の手前まで移動する。ここで停止して、クルマの流れが切れたところで左にフルステアしてゆっくりと前進すると、アクセルレスポンスは極普通で遅れる事もなく、過敏なことも無く、また発進時にはエンジン音は全く聞こえなかったが直ぐに僅かにエンジンが回っているらしき音が聞こえてきた。本線で加速してみると成る程 EV と同じで如何にもモーターで駆動している独特の感じが伝わってくる。 |
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実は試乗前に特に注意点として「アクセルペダルを離すと強力な回生ブレーキが作動するのでくれぐれも注意して欲しい」旨の説明があったが、これは BMW i3 もテスラーも同じような説明があったから、この手のアクセルペダルを離すと回生ブレーキがフル作動するタイプは最近の主流のようだ。詳細は後述するが、確かに普通のユーザーからすれば最初は違和感あり過ぎで、これが世間に認識されるまでは当分時間がかかるだろう。 ここからは一般的な県道を走行するが、当日は空いていたこともあり先ずはスポーツモードに切り替えてみると、確かにアクセルレスポンスも加速時のトルク感も向上する。そして次に ECO モードを選ぶと当然ながらアクセルレスポンスは低下するが、まあ使い物にならないという事は無い。実は走行モードの切り替えで大きく変わるのは加速以上に減速特性、すなわちアクセルペダルを離した時の回生ブレーキの効き具合で、スポーツモードでは巡航中でも強力な回生ブレーキを感じるくらいの減速度が出る。このためにコーナー手前で減速する場面などでは上手く使えば全くブレーキペダルを踏まずに上手く減速する事もできる。 しかし良いことばかりでは無く、例えば前方が赤信号で前車が既に止まっている場合に、自車を減速していってその後ろにピッタリと止めようとして20mくらい手前でアクセルを離すと、普通のクルマならゆっくりと減速しながら前車の10mくらい手前から軽くブレーキペダルに足を載せて惰性とともにピッタリと止める事になるが、このクルマでスポーツモードの時に同じく20m手前でアクセルペダルを離すと強力な回生ブレーキにより 10 〜 15m 手前でクルマは止まってしまう。これでは困るので再加速するとこれまた強力なトルクで発進し、おっとっととアクセルを離してまたまた手前で止まり、結局前車の直後にピッタリと停止するのは可成り難しかった。 ところが ECO モードならば回生ブレーキの効きは遥かにマイルドになり、また手前過ぎて再加速する際にもレスポンスの悪いことが逆に僅かに前進させる事を容易にする。すなわち ECO モードは市街地渋滞モードとしてのメリットは充分にあるということになる。 |
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EV の特徴としてトルク特性と共に床下のバッテリーや車軸位置のモーターなど重量物が低い位置にあることによる車両自体の低重心化により、走行安定性がガソリン車や HV に比べて明らかに勝っているのは今までに試乗した EV 全てに言えることだった。それでは e-POWER はといえば、重心の高いエンジンを持っていることでは EV 程に低重心ではないが、フロントシートの床下には駆動用バッテリーを搭載しているなどでガソリン車と比べればより低重心が図られている。 そして実際に走ってみると走行安定性は成る程ガソリン車とHVの中間的なもので、1.2L モデルよりも操舵レスポンスも向上している。こうなるとコーナーリング性能も想像はつくが、いや、クルマというものは実際に走ってみると見事に予想を覆されることもあるから、もしかするとコレじゃあ低重心のメリットが無いじゃあないか、となればこれはまた良い話のネタになる。幸いにもこのコースはリーフで走ったのと同じだ。ということで何時ものコーナーが近付いてきて、まあ一発目のトライだからということで多少は控えめにするとして、とか考えていたらば既にコーナーの入り口に入っていて、大した速度でもないとはいえ実に素直に回ってしまった。そこで以後は少し強気での旋回をしていったが、成る程これはガソリンエンジンのノートに比べて明らかにアンダーステアも弱く、結局は予想通りだった。なおリーフの簡易試乗記を読んでいただければ判ると思うが、リーフはコーナーリングの安定性自体は流石に EV という感じだが、ステアリングの特性が悪くて、この不正確な操舵特性が折角のハイレベルのコーナーリング性能を台無しにしていたから、その意味ではこのノート e-POWER の方が総合的なコーナーリング性能は上、という事にもなる。 次にブレーキ性能だが、既述のようにアクセルペダルを離すと強力な回生ブレーキが作動することでブレーキペダルによるサービスブレーキ (要するに普通のブレーキの事) の使用頻度は可成り減ってしまうから、試乗中にブレーキペダルを踏んだ記憶が殆ど無いと言ってもオーバーではないくらいだ。でもまあ、効きが悪いとか効き過ぎてカックン気味だとかいう記憶は無いから、特に問題は無いといと解釈している。なおリーフのブレーキユニットは車格からすればオーバースペック気味の2ピストンキャリパーをフロントに装備していたが、こちらはそのまんまノートだからフロントは普通の1ピストンであり、リアに至ってはドラムブレーキだ (写真38) 。結局ダダでさえ強力な回生ブレーキでサービスブレーキの出番は少ない事もあり、この程度のホイールユニットで充分容量は足りているのだろう。 付け加えると、e-POWER の駆動はモーターだが、発電専用とはいえガソリンエンジンを搭載しているからエンジンの吸気によるバキューム (負圧) が発生し、その為にバキュームブースター (真空倍力装置) が使用できるというメリットが有る。 | |
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結局は予想通りで一言で言えば "走る" に関しては電気モーターで駆動される動力性能とフィーリングは EV そのものだが、"曲がる" の方は発電用とは言えガソリンモデルと同じエンジンを積んでいる事と、バッテリーが小さいことから EV 特有の低重心化が出来ず EV に一歩を譲る結果だった。それで "止まる" はといえば、強力な回生ブレーキは正に EV 的ではある。 と書くと、もっと大きな問題があるだろう! e-POWER はガソリンエンジンを使うことで環境破壊の面では HV からの改善が無いだろう、って言いたい輩も多いだろうが、EV 自体は炭酸ガスを出さなくてもそれに充電する電気を作るのに炭酸ガスが発生するから同じ事だ。数年以上前ならば電気は排気ガスの無いクリーンな原発で作るから最もエコでクリーンなエネルギーなんだ、という理屈が成り立ったが、今や収束の目処が全く見えない福一の事故を見れば、半永久的に放射性物質を吐き出す事に比べれば、多少の炭酸ガスを撒き散らすぐらいは多めに見てもバチはあたらないだろう。いや、炭酸ガスと地球温暖化だってこの問題で騒いでいる連中は原発はクリーンで安全だと言っていたのと同じ連中だから、これもその内ボロが出るだろうが‥‥。 と、話が危ない方向に向かいそうなのでこの辺で止めておこう。なおノート e-POWER が "買い" かどうかは、新車効果とは言え一時的にもあのトヨタハイブリッド軍団を打ち負かして、販売台数でトップを獲ったことでも判るだろう。日産では近いうちにセレナの e-POWER も投入するようで、日産としては当分はこの伝家の宝刀で勝負するのではないだろうか。とにかく日産としては久々に期待できそうなコンセプトだ。 |