Lexus NX 200t & 300h 特別編
  [Lexus NX vs Toyota Harrier 後編 その2]




特別編へようこそ。
前編でも御注意申し上げたように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

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ところでドライバーの正面にあるメータークラスターを比べれば、NX はレクサスに共通の自光式とはいえ金属感を醸しだしたような割りとセンスの良いメーター類が目に入るが、ハリアーでは例によって派手なライトブルーを基調にした自光式丸出しのモノで、まあこれは好みの問題もあり何とも言えない。えっ、田舎者にはハリアーのメーターが良く見える、って? そっ、そんな事を言っちゃあ駄目だっちゅうのに。

そのメーターだが、実は基本的な配置やメーターの表示内容はほぼ同じであり、左にはパワーメーター、右には速度計が配置されている。ここで速度計を見ると、そこに刻まれたフルスケールが NX は260km/h 、対するハリアーは 180km/h という違いがる。なるほどねぇ、速度計が180km/h までしか無いんじゃあセレブの幼稚園はムリだよなぁ。えっ、でも軽自動車は140 km/h までだって? だ、か、らぁ〜、保育園に行くんだって衆議院議員候補も言っているだろう。えっ、言ってない? こりゃまた、失礼を。

次に走行安定性については NX300h の場合乗り心地は結構硬いが安定性はスポーティーというよりも、硬いだけでイマイチ路面をしっかりグリップしてないというか、地に足がつかないような落ち着きのない乗り味というような感覚だ。写真左下は ”version L” に標準の225/60R18 で、今回試乗したクルマと同一サイズだがデザインが異なっている。操舵感はステアリングの中心付近の遊びは少ないがこれまたリニア感が無いというか、出来の悪いスポーツモデルによくある特性で、まあハッキリ言ってチューニング不足という感じだから、もう少しセッティングを煮詰めれば改善されるとは思うのだが。

と言うわけでこの時試乗した NX300h は F SPORT という事がアダになったのか足回りのチューニング不足が目立ってしまったが、同時期に試乗した NX200t では装着タイヤが235/55R18 だった事と AWD ということが重なり、ステアリングの中心付近の不感帯でのフィーリングなどの操舵感も300h よりは良いように感じた。

対するハリアーだがこちらはハイブリッドについては全てAWD (4WD) ということもあり、どちらかと言えば上記の NX200t に近い感覚だった。まあこちらの試乗については距離が短いこと等もあるが、逆に一般道にはないシケインによるスラロームがあったりで低速とはいえ強引な旋回を試して見たが決して悪くはなかったし背の高いSUV としてはまあ合格だろう。

結局安定性や操舵性は 4WD に大いなるメリットがありそうだが、ハリアーハイブリッドに2WD が無いのもその辺を考えての事だろうか? ということは NX300h も2WD は NG ということになるし、4WD 同士ならば走行安定性と操舵性に関しては NX に150万円分の良さは無いことになってしまう。まあ基本シャーシーが同じなのだから劇的に違う訳もないのも当然だった。

ブレーキについてはどちらもトヨタのハイブリッドお得意のフルエレキ、すなわちブレーキバイワイヤーであり、効きには全く問題ないしフィーリングもフルエレキと言われなければメカ式のマスターシリンダーとの違いが判らないくらいのレベルになっている。このフルエレキの利点として、キャリパーユニットを含むブレーキの配管係に多少の剛性不足があってもドライバーには感知できない、すなわちショボいブレーキメカでもマトモなフィーリングとなる事がある。

そんな事を踏まえて両車のホイールから覗くブレーキユニットを比べてみると、今までシャーシーを含めて殆ど同じだと思っていた両車ではあるが、NX のフロントには片押しとは言え2ピストンキャリパーが見える。対するハリアーは極々普通のシングルピストンで、写真で見てもキャリパー自体の大きさが違う、すなわち容量が違うのが判ると思う。両車のパワートレインは全く同じなのにブレーキが違う、というのは価格差やヒエラルキーからなのだと思うが、本来はカーメーカーのポリシーとして止まる性能は皆同じ、みたいな方が良心的だと思うのだが。

因みに両車の車両重量はハイブリッドの4WD同士を比べるとNX300h とハリアーハイブリッドではそれぞれ 1,829kg と 1,760kg でその差は 70kg だが、まさか大人一人程度の重量差をカバーするためにフロントキャリパーにこれだけ差が必要とも思えない。でも、まあ地獄の沙汰も何とやらで、クルマも高級品ほど安全なのが現実ではある。ここは特別編なので一部の読者の喜ぶ表現をすれば、貧乏人なんて安ければ多少危険な車でも判りゃあしないし、安全に金を掛けるよりも見掛けに掛けたほうが商売としては上手くいく、と言い切ってしまおう。

さて両車の結論であるが、事実上同じクルマで価格が 150万円も違う理由は、勿論ブランド料金もあるだろう。レクサス店の日本国内展開の時、唯一トヨタブランドで販売中のクルマそのものをレクサスブランドに変更したソアラーでは車両価格が60万円ほどアップしたから、レクサスのおもてなし代は数十万円というのが世間にバレた訳だ。そしてその違いの中身は豪華でセンスの良いディーラーで、駐車場はスペースが広いし屋根も付いているからオープンスポーツで乗り付けてルーフを開けたままで駐車する、なんていう事が出来たり、駐車スペースに入れるためにバックし始めると何処からか従業員が出てきた誘導してくれる。しかも場合によってはフライトアテンダントみたいな制服の綺麗なオネエサンの誘導で、ドアを開けるとニッコリと対応してくれたり、等など。数十万円は伊達ではない。

そういう訳で数十万円のおもてなし料は納得するとしても未だ100万円の差はこれ如何に? 確かに内装材に違いはあるし、上記のブレーキユニットだった違うし、ということは目には見えなくてもシャーシーなどにも大きく手を入れているかもしれない。それは同じ4WD 同士を比べた時に重量差が70kg あることを考えれば、シャーシーもボディもハリアーに比べれば大幅な補強で剛性アップしているかもしれない。まあ今回はチョい乗りなのでボディ剛性の差なんて判らなかったのだろうが、それでも本当にどうしようもなければ 10m も走れば直ぐに判るわけで、ウィッシュなどは少なくとも初期のモデルでは走った瞬間に剛性不足からくる不安定な挙動を感じたくらいだ。

と、まあ色々述べてみたが、520万円の NX はハリアーの370万円に対して4割増しであり、世の中クルマに限らず大きな差が付くには倍くらいの価格差があるのが普通だ。例えば電車の場合、湘南新宿ラインで普通車とグリーン車では運賃合計は概ね2倍くらいだろう。しかしその差の凄いこと。ということは700万円くらい出さないとグリーン車の快感は得られないということか。その辺はフォレスターXT (313万円) とマカン (616万円) を比較してみれば判るかも‥‥。