Lexus NX 200t & 300h (2014/10) 前編 | |
|
|
レクサスのブランニューモデルであるNXはコンパクトクロスオーバーSUVとしてRX の下位に位置するということだが、実はサイズでも1ランクまで違わない程度の僅差であり、価格的にも一部オーバーラップしている。ここで先ずはRXとの諸元比較、そしてBMWの同クラスSUVであるX3、更にはこれまたブランニューのポルシェ マカンと比較してみる。 下の表のアウターサイズに目を移せば、全長はどれも大きく変わらないが全幅についてはレクサスの2車は比較的に狭く、対する欧州勢は1,900o前後という車幅が拡大傾向の最近の事情を考慮しても日本では広すぎるし、とてもコンパクトなんていうシロモノでは無さそうだ。レクサスの2車が比較的幅狭なのは日本での販売を視野に入れているからだろうか。言い換えればRXは海外ではミドルサイズとしても幅が狭いということだ。 そのブランニューモデル NX のハイライトは今回トヨタとしては初になる4気筒ダウンサイジングエンジンで、ハイブリットで次世代を乗り切ることを決定してそれに多くの開発資源をつぎ込んでいたトヨタだが、欧州勢は小排気量+ターボという組み合わせが主流となり、以前では考えられないくらいの高出力を発生するようになり、トルクに至っては2Lで3.5L並という排気量では2クラス上の性能を持っている。この波に日本勢がどう取り組むかだが、ニッサンは一足先に発売された新型スカイラインで、何とメルセデスからエンジンの供給を受けるという戦略に出てきた。これに対するトヨタの回答が、自社開発の新世代2Lターボエンジンだった。
レクサス NX のエンジンバリエーションは前述の2L ターボ (NX200t) に加えて、トヨタ得意のHV車がNX300hとしてラインナップされている。このN300hは4気筒 2.5L 152ps ガソリンエンジン (2AR-FXE) と143psの電気モーター (2JM) というカムリなどに使われているトヨタの定番システムをキャリーオーバーしているから、ガソリンモデルに比べて新鮮味は無い。 上記の2つのエンジンバリエーションに対してそれぞれに2WD (FF) とAWD (4WD) が設定されており、更にそのそれぞれにベースグレード、少し装備を良くした買い得モデルの "I packeage" 、豪華モデルの "version L” とスポーツモデルの "F SPORT" の3種類のグレードがラインナップされている。今回試乗したクルマは200t、300h 何れもF SPORT で、これは同じF SPORT同士での比較を目的としている‥‥何ていう深い考えはなくて、偶々確保出来た試乗車がどちらもF SPORT だったというだけだ。 それでは早速エクステリア写真から見ることにする。今回は主にベースグレードとF SPORT を比べながら進めていくが、ベースグレードと "I packeage"は外観上では殆ど同じと思って良い。ベースグレードと F SPORT 、というよりは F SPORT とそれ以外の最大の相違点はフロントグリルとそれに一体化されているバンパーであり、まあこれは個人の好き嫌いにより評価は分かれるが、ハッキリ言ってスピンドルグリルの強調された F SPORT のグリルデザインは下品でセンスも良くない (写真1〜2) 。こういうのが米国ではうけるのだろうか。 フロントに比べればリアの差は殆ど無く、一見して区別は付かない (写真5) 。また、ハイブリッドの NX 300h とガソリンの NX200t についても外観上の大きな違いはないが、他のレクサス車同様にレクサスマークの塗りつぶしがガソリン車の黒に対してHVではブルーとなる (写真3) 。 サイドビューを見ると最近の SUV らしくルーフラインがBピラー付近から下降を始めていて、言ってみればクーペスタイルというか、決して実用性を重視したデザインではない。またウエストラインが高い位置にあるがサイドのグラスエリアは狭く、結果的にスポーティーなスタイルとなっている (写真4) 。考えてみればSUVというのはSports Utility Vehicle の略だから、そうなれば実用的で多用途に使えるがスポーティーな面もあるという実に欲張った車だが、これが人気の秘密ということだろう。 ラッゲージスペースは一般的なクルマに比べると充分に広く、特に奥行きがあるのはFFベースでエンジンがフロントにオーバーハングされている事によるキャビンの長手方向の余裕という事だろうか。試しにリアシートのバックレストを前に折り畳んでみたら2m近い長物が積めそうで、積載能力は中々のモノだった (写真7) 。 |
|
|
|
|
|
|
|
写真4 |
|
|
|
|
|
エクステリアからではグレードによる差が殆ど判らないくらいだったが、ドアを開けて室内を見ると、各グレードによって雰囲気は大いに異なる。インテリアカラーはブラックが全てのグレードに設定されているが、その他のカラーは "I packeage" と更に上級モデルの "version L" のみに設定があり、"F SPORT" はブラックではあるが赤を基調としたステッチやワンポイント的な配色の専用インテリアとなっている (写真8〜9) 。またどうでも良い事だがスカッフプレートにある "LEXUS" のロゴはF SPORT のみが黒い文字で、他のグレードはプレスで浮きだした文字を使用している (写真10) 。念の為にカタログで調べたらばこれは "F SPORT" 専用のブラックロゴだそうだが、もう少し気の利いた名前はないのかよ、と悪態をつきたくなる。 シート表皮はベースグレードがファブリック (写真11) 、"I Package"ではL tex (写真12)という合成皮革を使用している。この素材は合成皮革とはいえ一見すると本皮のように見えるし、質感は薄くなめしたレクサス得意のセミアニリン本皮のような風合いと手触りで、何も知らなければ合皮とは思わないというレベルだ。 "F Sport" は本皮スポーツシートとなり、写真には無いが "version L" は本皮となる (写真13) 。 シート調整は全グレードで電動が標準となるが、ポジションメモリーはベースグレードを除いての標準装備となり、そのスイッチはドアのインナートリム上にある (写真17) 。そのドアインナートリムは一見すると結構高級に見えるが、よく見ればステッチの入ったパッドの使用は極一部であり、それ以外は樹脂の一体成型だったりするが、"I Package" ではインテリアトリム(バンブー)も含めて実に上手くまとめていて、それなりの高級感もあるが、よく見ればやはりチャチい。 "F Sport" の場合はアームレストのステッチが赤い糸を使っているなどの違いはあるが、それ以外はむしろベースグレードに近く、意外にも質素というかチャチい。 |
|
写真8 |
|
写真9 |
|
写真10 |
|
|
|
|
|
|
|
写真17
|
|
インパネは最上部からディスプレイが飛び出したような配置で、メルセデスの新型Cクラスでも同じような方法を採っているから、言ってみれば最近トレンドというところか。確かに視線移動が少なく、それでいて走行中に視界の邪魔になることもなく、安全性からしても良い方法だ。インパネのグレード別の違いはといえば、グローブボックス上部に水平に走るインテリアトリムくらいだろうか。 今度はセンタークラスター上のエアコン操作パネルに目を移すと、これもまあ全てのグレードでほぼ共通となっている。ここでほぼと表現したのはシートヒーターやベンチレーションシートの装着有無によって最下段にあるこれらのスイッチの有無などが異なるからだ。 |
|
写真18 |
|
|
|
写真21 |
|
NX200t (2WD) の場合、ベースグレード (428万円) と "I packeage" (442万円)の価格差は僅かに14万円で、内装は明るいアイボリーが選べたり、人工皮革とはいえすこぶる出来の良いシート表皮だったりと、これはもうベースグレードを選ぶ理由が無いような気がするし、一番売れ筋というのも納得できる。と、未だ全体の1/3を終了した時点で結論を出すのはちょいと早いし、ファブリックシートが好きだしレザーシートの感触が好きになれないというユーザーだっているから、まあこれも好みの問題ではある。 つづきは中編にて。 |