TOYOTA 86 RC 6MT (2012/5)
   
話題の86&BRZについては、当サイトでも既にBRZ S MT、86 G MTおよびAT、そしてBRZ R ATと、ある程度のバリエーションを網羅してきた。しかし、86&BRZラインナップ中には絶対に試乗車が無いであろうと思われる競技用ベース車両の86 RC(199万円)およびBRZ RA(205.8万円)というバリエーションがある。 ただし、内装や装備が極端にシンプルなことを除けば、エンジンやミッションなどは中間グレード(86 G、BRZ R)のMTと変わらないことから、実際の走りは既に試乗記が発表されている86 G MTに順ずると考えて良さそうだ。ということで今回は解説編として、試乗記の前半部分と同じフォーマットで纏めてみた。 実際の試乗部分は86 G MT試乗記の後編を参照願いたい。そして本編の最後では、BRZの同等モデルであるRAも含めて、この200万円のモデルを街乗りに使うことが可能かどうかについても検証してみたい。

なお、写真はトヨタ版の86 RCを使用するが、その理由はBRZ RAは写真を撮っていないどころか実車を見るチャンスも無いという現状のためだ。

本題に入って先ずはエクステリアだが、バンパー(写真1から2)とサイドミラー(写真4)およびドアのアウターハンドル(写真5)がプラスチックの黒い素材色であり、それにキャップなしのスチールホイールがチープさを演出している。この辺は趣味の問題でもあり、このチープさが独特の魅力と感じるか、安っぽくってダセーっ、と思うかによってこのグレードの評価は変わる。なお、RA(BRZ)の場合はバンパーがボディ色に塗装されているために、随分と印象が異なるだろう。 他に素材色を使用しているのはサイドミラーとドアハンドルであり、これはRCも同様となっている。

フロントエンドはRCもGも全く同じでプロジェクタータイプのハロゲンヘッドランプを使用している(写真3)。また、フェンダーサイドの86エンブレムもRCとGはクローム地に黒(写真6)でGT系の赤と差別しているが、まあ、エンブレムが赤でも黒でも性能に関係ないし見掛けも特に変わらない。 そして、リアで最も目立つ排気管は、RCもGも同じく細めのチャチなヤツが付いている(写真7)。ここだけは、GTのような太くてクローム仕上げのマフラーカッターがほしいところだが、そのうちアフターマーケットで各社が販売するだろう。

写真1
大きな特徴はバンパーが素材色であることで、それだけで随分印象が異なる。なお、BRZの同等グレードであるRAはボディと同色となる。

写真2
リアバンパーも素材色の為に、リア全体が真っ黒けで、オマケにホイールはカバー無しの鉄っちんだから、独特の雰囲気を醸し出している。
写真3
ヘッドライト(ハロゲン)およびターニングライトはGと同じ。

写真4
RCはサイドミラーも樹脂の素材色となり、電動格納式にもならない。
 

写真5
ドアのアウターハンドル(グリップ)も素材色。

写真6
86と水平対向エンジンをモチーフとしたエンブレムはGと同じものが付いている。

写真7
排気管はGと同じものだが、こうして見るとGも充分にショボい。
リアに回ってトランクを開けてみると、そこには本来ある床面に敷かれているカーペットは勿論、ビニールシートさえ敷かれていない(写真8)。そして、エンジンルームの中(写真9)を見ると、確かに他のグレードと同一なのだが、何かが違う。よくよく見たらば、エンジンの中央トップにある化粧カバーが着いていない写真10)。とにかく、飾りの部類は一切付いていない徹底ぶりだ。

シートについては形状も表皮もGと同じであり、要するにRCとGは全く共通のシートを使用している(写真11〜12)。したがってシートについては街乗りや、サーキットといってもクラブのスポーツ走行程度ならば、そのままでも充分に使用可能だ。そいういえば、ネットなどで、商用車用のビニール表皮のシートを付けてもっと価格を下げるべきだ、という意見を見たことがあるが、メーカーの開発者は少なくともネットに書き込む素人とは違いプロなわけで、なぜプロがそのような判断をしなかったかといえば、それは安くならないからだろう。なぜなら他の車種、たとえばライトバンや小型トラックのシートを86に付ける場合には専用の取り付けブラケットが必要となる。 となると、新たに設計して、耐久試験などをやって、金型や治工具を用意して、それらをRCの販売台数で割ったら、一台当たりの価格は返って高いものになってしまう。
写真8
トランク内は余計なシート類が一切無いようだ。
写真9
エンジンは当然ながら上級モデルと同じ2L FA20水平対抗エンジンだが、見た感じが何となく違う?

写真10
他のグレードについているトップカバーはRCには付いていない。まあ、あんなものはメンテの邪魔だし、性能に変わりは無いから不要だということだ。
写真11
シートはGと同じファブリック表皮で形も同じ。要するに全く同じシートが使用されている。
写真12
この写真をみてもRCかGかは判らない。
要するに全く共通だというわけだ。
インパネはGと共通だが、驚くのはオーディオ用スペースのブランクパネルや助手席側グローブボックスの上部にあるパネル(インテリアトリム)などが一切無く、内部が丸見え状態で、黄色いコーションカードで危険を警告している (写真14)。いや、本当にうっかり手を入れたら怪我しそうな状況だ。

ところが、インパネがそんな状況なのに対して、何故かドアのインナートリムはGと全く同じ(写真15)で、唯一の違いは電動格納ミラーが無いために、そのスイッチが省略されている事だけだった。そして、エアコンの操作部は一見するとGと同じに見えるが、よくよく見ると右端の温度設定ダイヤルの中心部にある”AC”と書かれた、クーラーのスイッチがRCには無い(写真17)。 実はRCはエアコンレスであり、操舵パネルはヒーター用だった。エアコンが無いクルマが現在の日本で通用するかというと、ちょっと疑問がある。そして、それを考えると、RCを街乗りに出来ないかという今回の検討は、残念ながらボツとなってしまう。ただしっ! BRZ RAならばオプションでエアコンが付く。これについては最後の部分で検討する。
写真13
インパネも基本的にはGと同じ。
写真14
しかし、オーディオ用のスペースなどブランクボードすら付いていない。
写真で黄色い線の入ったプレートは怪我をしないようにというコーションプレートだった。


写真15
ドアトリムはGと全く同じ。
写真16
ウィンドウスイッチのベースパネルは電動開閉ミラーのスイッチ(黄色↓)が無い点のみが異なる。


写真17
一見同じに見えるエアコンの操作パネルだが、よく見ればGは右の温度設定ダイヤルの中心に”AC”というボタンが
ある(黄色↑)。
RCは実はエアコンではなくヒーターのみだから、日本の夏で街乗りするのは相当な覚悟が必要だ。

何やら既にRCの街乗りは厳しそうな結論が出てしまったが、メゲずに操作系を見てみよう。

エンジンの始動はGと同様に金属キーをステアリングコラム右側面のキーホールに差し込んで捻るという、極めてコンベンショナルな方法による(写真18)。MTのシフトレバーとその付近はGと全く共通で、ウレタンのシフトノブやパーキングブレーキレバー、そして過飾の全くないベースプレートなど地味の一言だが、機能的には全く問題は無い(写真19)。 メーターについてはGと共通なものを使っているが、これは今まで何度も述べたように速度計が極めて見辛いアナログのみで、回転計の中にデジタル速度表示を持つGTに比べて極めて使い辛い(写真20-1)。なお、BRZの場合は全グレードでデジタル表示付きのメーターを採用している(写真20-2)から、もう、この時点で86はGT以外はNGであり、中間グレード以下はBRZを勧める。

ペダル(写真21)とステアリングホイール(写真22)もRCとGは共通となっている。このステアリングホイールはウレタンとはいえ、見かけも使用したフィーリングも決して悪くは無いから、特に革巻きに拘らなければ、これもでも良いのではないか? そして、外観上でも大きな特徴となっているキャップすらない剥き出しの鉄っちんホイールについては、もうオーナーの気持ち次第で、これが逆にスパルタンでカッコ良いという見方もできる(写真23)。

写真18
エンジンスタートはオーソドックスな金属キーによる。
>写真19
ウレタン製のシフトノブやパーキングブレーキレバー、そして加飾の無いベースプレートなどは、Gと全く同じものだ。

写真20-1
RCとGはどちらも同じメーターで、デジタル速度計は付いていない。

写真20-2
BRZのメ−ターは全グレードて同一であり、RCに相当するRAでもデジタル速度計が付いている。
86でデジタル速度計が付くのはGTのみで、RCやGでは左側の目盛が細かくて視認し辛いアナログ計しか付いていない。

写真21
ペダルは黒い樹脂製で地味なものが付いている。これもまた、RCとGは同一だった。
写真22
ステアリングホイールも中間グレードのGと全く同じものがついている。これはこれで、悪くは無い。
そして、エクステリア上でもハイライトともいえるキャップ無しの鉄っちん(スチール)ホイールは、見方によってはスパルタンでかっこ良いとも言える訳で、まあ、これはオーナーの感性次第だろう。タイヤサイズ自体はGと同じ205/55R16だから、ホイールがアルミから鉄に代わったくらいでは、走りには殆ど影響がないだろう。

そして、ブレーキはと言えば・・・・・・わからない! そう、鉄ちんホイールは殆ど中が見えないから、ブレーキに何がついているのか判らないのだが、調べてみたらばGと全く同じモノのようだ。

写真23
タイヤサイズはGと同じ205/55R16だが、キャップなしの鉄っちんホイールが逆に目を引く。
発売前は価格が200万円代の前半となるとの噂だったが、実際に蓋を開けて見れば事実上250万円以上で、ちょっと装備の良いグレードにを選べば300万円級になるなど、最初に期待ほどには安くは無かった。実際に86を購入したり、興味を持ってディーラーを訪問するユーザーは50代以上が多いという。 確かに子育て真っ最中では価格もさることながら、事実上は二人乗りという車両構成自体が購入候補から外れてしまうだろう。となれば若い独身世代に期待だが、最近の雇用の現実をみれば、20代で300万円のクルマを買うのは厳しいだろう。そこで、思い立つのは今回紹介した競技用のベースモデルであり、これを街中で使えれば、予算的には随分楽になるというこどで、今回の目的もその判断にあった。

それで、結論としてはエアコンがオプションでも装着できないトヨタ版のRCは候補から外れるしかないだろう。そして、スバル版のBRZ RAだが、オプションのエアコンを装着した時の車両価格は225.8万円であり、これはR(MT)の247.8万円と22万円しが違わない。それで、Rならばアルミホイールが付くし、内装の一部が少し高級(というよりも”普通”)になるなど、元は充分にとれそうだ。ということで、結論は街乗りにRCもしくはRAを購入するのは殆ど無意味である、ということになり、エアコン無しでもすごせる北海道のユーザーならば買う価値があるかもしれない。

そうなると、一体誰が買うのかという疑問もあるが、あっ、そうだ。ひとつ思い当たった。これならぴったりかもしれない (写真右)。

なお、試乗編については走りに関する内容としては殆ど変わらない86 G(MT)の試乗記を参照願うことにする。厳密に言えばホイールがスチールであることから、多少はフィーリングが違う・・・・という可能性もあるが、まあ判らない程度だろう。

最後に86およびBRZの試乗記へのリンクをまとめておく。 すべての組み合わせでの試乗はできていないが、今のところでは、どうもBRZのほうがクルマ好きには良さそうな気がするし、予算さえあればBRZ S(MT:279.3万円)を一押しとしたい。

86 G MT

86 G AT

BRZ S MT

BRZ R AT