Audi A6 2.8 FSI quattro 特別編
何故アウディは売れないのか?

特別編へようこそ。何時ものように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

さて、今回のテーマは「何故、アウディは売れないのか?」という、アウディファンが聞いたら怒りそうな題名だし、アウディが売れないのは日本だけだなんて言いたくなるだろう。そういえば 「○○が売れないのは日本だけだ」という表現は、クルマの場合何回か聞いたことがある。曰く「ヒュンダイが売れないのは日本だけだ(あれっ、ヒュンダイを知らないのは・・・だったかも) 」というのはヒュンダイ自身の言だった。「レクサスが売れないのは日本だけだ(レクサスが評価されないのは・・・とも言われた)」については、自分達は教養が高くアカデミックである と自負していて、MBAなどに憧れるビジネスマンに多かったような・・・・。
おっと、話を戻して、それではアウディの米国での販売状況を見てみよう。あれっ、ニヤニヤしている、そこの常連さん?あっ、この話は既に何回かは触れているから、よくよくご存知だったんですね。

米国、Eセグメント車販売台数
          2011年1〜6月   2010年1〜6月
BMW 5シリーズ   43,862台     47,214台
MB Eクラス     31,960台     27,778台
レクサス GS      2,080台      3,486台
インフィニティ M    5,475台      6,602台
アウディ A6      3,577台      4,079台
アキュラ RL       825台       872台
ジャガー XF      2,406台      3,796台
ヒュンダイ ジェネシス 15,454台     12,891台

その内容を見ると、今年の上半期といえばアウディA6は末期モデルだったから、多少のハンディーは考慮が必要だが、少なくとも2010年だって同様に売れてはいない。BMW5シリーズに比べてA6の販売台数は何と一桁少ない。因みにEクラスも今や5シリーズに後塵を拝した訳で、王者も遂に陥落してしまった。元はといえば、SBCというブレーキバイワイヤーの失敗がEクラスが落ち目になる最大の原因だった。不滅の名作W124で勝ち取った名声と信頼はあっと言う間に吹っ飛んでしまった事になる。 それにしても、要するに、アウディは日本だけではなく米国でも売れていないのだった。

次に、日本でのA6の売り上げはといえば、実は輸入車に関する正式なデーターは無いので、各種の出版物から欠片を拾って推定するしかないのだが、08年の場合A6は5シリーズの1/10程度の販売台数となっているようだ。 そんな、元データーを示せないような、推定でモノをいうのは許せない、なんて言ってる あ な た。今の日本では裁判官だって推測で有罪を出してしまうくらいだから、こんな趣味のサイトが推測でモノをいったって至極当然なの ですよ。 と、いう わけで、日米でほぼ同じ傾向、即ちA6:5シリーズ=1:10ということだった。なお、国産車については(社)日本自動車販売連合会が詳細な車種別データーを公開して、毎年4月に新車登録台数年報として発行 (販売)されている。また、米国の場合はAutoMotive Newsが全て元になっている。

これがドイツとなると、これも08年辺りのデーターでは、A6はEセグメントで5シリーズとEクラスを抑えて堂々のトップだったような記憶がある。何れにしても日米とは比較にならないほどに、A6は強そうだ。そして、中国では・・・・・

国、高級車販売台数
        2011年8月   2011年1〜 8月
Audi A6L     11,891台     72,475台
Audi A4L     9,850台     54,950台
BMW 5 series
   5,297台     43,948台
M.B E class    2,535台     22,960台
BMW 7 seeies   3,074台     22,295台


なんと、A6は高級車市場ではNo1で、オマケに2位もA4とアウディの一人勝ち状態だった。ここで車名を見れば、どちらも”L”が付いているが、これはロングホイールベースモデルで中国専用車だ。 中国人は面子を重んじる(言い換えれば見栄っ張りなのだ)から、実はこういう配慮が中国ではアウディが強い理由で、他社も慌てて追従したが既にアウディに制覇された後だった。
それにしても、日本では月に50台くらいしか売れないといわれているA6が、中国では1万台くらい売れてしまうという、中国市場の巨大さには唖然とする。

話を国内に戻して、先ずは現在販売されているEセグメント車の中から、600万円級の代表車種の主要緒元をまとめてみた。

    @ Audi A BMW B Mercedes
Benz
C Jaguar
      A6 2.8 FSI
quattro
523i E250 CGI Blue
Efficiency 125!
XF 3.0 Luxury
 

車両型式

  ABA-4CCHVS ADBA-FP25 DBA-212047C CBA-J05FA

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.930 4.910 4.870 4.970

全幅(m)

1,875 1.860 1.855 1.875

全高(m)

1,465 1.475 1.470 1,460

ホイールベース(m)

2.910 2.970 2.875 2.910

駆動方式

4WD FR
 

最小回転半径(m)

  5.7 5.5 5.3 5.5

車両重量(kg)

  1,790 1,770 1,680 1,750

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  CHV N52B25A 271 FB

エンジン種類

  V6 DOHC I6 DOHC I4 DOHC Turbo V6 DOHC

総排気量(cm3)

2,772 2,496 1,795 2,967
 

最高出力(ps/rpm)

204/5,250-6,500 204/6,300 204/5,500 243/6,800

最大トルク(N・m/rpm)

28.6/3,000-5,000 25.5/2,750-3,000 31.6/2,000-4,300 300/4,100

トランスミッション

7DCT(S Tronic) 8AT 7AT 6AT
 

燃料消費率(km/L)
(10・15/JC08モード)

11.0/NA 11.4/11.2 12.6/ MA 7.3/7.5
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

8.8 8.7 8.2 7.2

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

5リンク ダブルウィシュボーン 3リンク ダブルウィシュボーン

トラペゾイダル インテグラル・アーム マルチリンク

タイヤ寸法

  245/45R18 225/55R17 225/55R16 235/55R17
 

ブレーキ

前/後

Vディスク/Vディスク

価格

日本国内価格

610.0万円 610.0万円 634.0万円 650.0万円
 

備考

  Hi-Lineパッケージ
+39万円
   

こうしてスペックを並べてみれば、流石にEセグメントの代表車だけあって横並びの性能になっている。価格的には523iとA6 2.8FSIが他の2車より割り安だが、実際には523iはファブリックシートでレザーシートを装着するにはあと39万円を追加してHi−Lineパッケージが必要となるが、A6はそのままでレザーシートが装着されているから、4車の中では最も買い得となる。

それにしても、下の写真の4車種は、どれも・・・・良いねぇ〜。どれでも良いから、一台欲しいものだ。
 


600万円クラスのクルマというのは、流石にどれも魅力満点だ。
 

A6は内装も4車中で最も出来が良いし、動力性能だって体感上は523iよりも上回っていた。そいいう意味では今度のA6は売れるのではないか、なんていっている ア ナ タ、甘〜いっ!

先ずは何故、日本でアウディが高級ブランドとしてイマイチなのかを考えれ見れば、その昔の輸入元だったヤ○セの販売政策で、当時は同社が輸入元であったメルセデスとの関係から、アウディはメルセデスの下のブランド、という売り方をしたのが今でも尾を引いている 、というのが最大の理由と言われている。確かに、それは事実だから、アウディにしてみれば正に怒り心頭だろう。
しかし、よくよく考えてみれば、最初にアウディが日本に輸入されたのは1967年で、それ以降1992年までヤ○セが輸入元だった。1992年のアウディといえば、EセグメントモデルはA6の前身の100であり、これに対してメルセデスのEセグメントは不滅の名作であるW124だから、ハッキリ言ってアウディがメルセデスの下のブランドというのは全く正解で、ヤ○セの 肩を持つ訳では無いが、これは当然といえば当然だったのだ。当時アウディ100を買った知人によれば、故障は多いし直ぐにガタがくるし、もう如何しようもないクルマだったそうだ。対して、W124は「最善か無か」というメルセデスのポリシーが最高潮の時代だったから、アウディどころか、BMW5シリーズだってEクラスよりワンランク下、と世間一般に受け取られていた くらいで、アウディ100は更にその下、という感じだった。
 


この2車を同等というのは無理がある。1ランクどころか2ランク以上違うと思うのが普通だろう。
 

ところで、米国では何故アウディが売れないのかといえば、実は80年代にセダン(当時はアウディ5000)のリコールにより売り上げはピークから80%以上も減少 (即ち20%しか売れない)してしまった時代があり、その時の集団訴訟は今でも続いているそうだ。

さて、日本で高級車を売る場合にはユーザーとセールスの長い付き合いで個人的に成り立っているケースが多いから、幾らクルマの内容が良くなっても、余程の差がないと、馴染みのメルセデスやBMWのセールスを差し置いてA6を買ってもらうのは、至難の業だろう。更に、アウディの販売網はハッキリ言って弱い。 ライバルのメルセデスは以前とは事実上別の会社とはいえ強力な販売網と多くの優良ユーザーを抱えたヤ○セ系や、後発とはいえショールームや従業員の教育など高級感の演出に気を使っているシュテルン系という、高級輸入車の販売網としては最強で臨んでいる。 そしてBMWはといえば、ここ十年程続いた絶好調の業績から販売網も整備され、以前あったような郊外や地方の弱小ディーラーは主力ディーラーに統合されたりと、メルセデス程ではないが強力な販売網を築いてきた。 それに対してアウディはといえば拠点は少ないし、今回訪問した直営店では一見で飛び込み訪問とはいうものの、試乗はチョイ乗りで誤魔化すし、もらったカタログを自宅で開けてみたら、あっと驚く簡易カタログだった。 まあ、発表間近で試乗車のやりくりが大変なのかもしれないし、本カタログが未だ間に合わなかったのかもしれないから、何とも言えないが・・・・。

そして、アウディディーラー、特に直営店に共通している、妙な高級感と敷居の高さを演出しているのが、何とも嫌らしい。その割りには、殆どの客はA1かA3が目当てという現実が、アウディの現状を物語っている。 勿論、地元資本で、もっと気楽で親切なディーラーもあるが、今回はわざと直営店へ飛び込みで行ってみた。そして感じるのは、600万円超の高級輸入車を売る体制ではないということで、今回内容的にはEクラスや5シリーズと同等、いや仕上げの良さなどは明らかに勝っているA6だが、肝心の売る体制が全く駄目! それにしても、あ〜あ、勿体無い。

悪口のついでに言っちまうと、アウディとVWは日本では同じフォルクスワーゲンジャパンにより輸入されている。ということは、アウディの直営店はVWと同一会社ということなのだろう。そういえば、VWの直営ディーラーもアウディと似ていて、何やらお高く留まっている。おいおい、大衆車売るのに何をカッコ付けてんでぇ、な〜んて嫌味も言いたくなるような都心の直営ディーラーがある。まあ、外車のディーラーというのは、他社の場合でも一歩間違うと変に気取ったり、客を差別したりする傾向はある。そういう面でレクサスは立派で、どんなクルマで来店しようが、どんな身なりをしていようが、一切差別をしない方針のようだ。 しかも、多くのディーラーが担当セールスが不在だと訳が判らなかったり、最悪無視されて怒って帰ったりなんて事もあるようだが、レクサスの場合は担当セールスがいない場合は必ず他のスタッフが対応して、その結果は担当者にしっかりと伝わっている。流っ石はトヨタさん。しかも店舗の作りは抜群で、高級輸入車ディーラーでもあそこまで金を掛けて、しかも規模の大きいディーラーは先ずお目にかかれない。更には、そんなディーラーが全国に展開されているのだ から、輸入車関係者からみたら脅威だろう。ただし、天は二物を与えずで、何たって取り扱い商品がレクサスだから、まあ、その、何ですよ。

ティーラーの客層というのはそう簡単には変わらない。それでも、アウディからBMWに買い換えた例は多くを知っているが、BMWからアウディに買い換えたという 話は知らない。また、BMWとメルセデスを何回か行き来した(交互に買い換えた)という友人は知っているが、アウディには一切興味は無いようだ

トヨタが軽を売るということで、ダイハツの商売にまで手を出すのか、といって批判している輩がいるが、ダイハツのユーザーがトヨタのディラーに行くか?といえば、行かないでしょう。また、逆にトヨタのユーザーがダイハツやスズキのディーラーに行くか?というと、これも如何だろうか。トヨタ系ディーラーといっても4チャンネルあるから一概には言えないが、少なくともトヨタ店とトヨペット店の客は軽のディーラーには行かないと思う。事実、ニッサンの軽を買うのはニッサンのお得意さんで、始めて軽をみたり試乗したりして「ほ〜、チョイ乗りには結構使えるんだねぇ」と、始めて現状の軽自動車の進歩を知って、それなら近所の買い物クルマに一台追加するか、という場合が多いようだ。もう一つ加えると、軽の主力市場である地方では、販売の多くが街の整備工場や農協などで、正規のディーラーからすれば「業販」という卸業務が主だから、ダイハツのユーザーは軽を買いにトヨタにもダイハツにも行かないのが普通だ。この辺りの事情を考えずに、大都市圏の感覚でモノを考えると、トンでもない頓珍漢なことになってしまう。

さ〜て、言いたい事を言ってすっきりしたところでA6を見てみれば、ラインナップは2.8L自然吸気の2.8FI(610万円)と3.0Lスーパーチャージャーの3.0TFSI(835万円)の2種類で、これは基本的に先代(C6)の末期モデルと同様となっている。それにしても発売当初とはいう物の、2モデルという構成のままで通すのだろうか。 ライバルの5シリーズはF10となった当初でも直6が3Lの528i、3Lターボの535i、そしてV8の4.4Lターボの550iというラインナップだったし、その後2.5Lの523iが追加されている。メルセデスEクラスも直4 1.8LターボのE250、V6は3LのE300、3.6LのE350、そしてV6 3LディーゼルターボのE350アバンギャルド、更にはV8 5.5LのE550というラインナップであり、 これらに比べて発売したばかりとはいえA6の2モデルは、ちょいと情けない。

と、まあ、色々言ったが、日本でのアウディの売り上げは登り調子だとも言われている。一体、どの車種が売れているのだろうか。その辺の分析は、今後の課題として、今回はこのくらいにしておこう。