Porsche 911 Carrera 4 (997) (2011/12) 前編


ポルシェ911シリーズは997から991へとフルモデルチェンジされ、先日開催された2011年東京モーターショーでお披露目されて、発売は来年の春ということになる。それでも11月末から既に予約が開始されて、結構成約しているようだ。それにしても現物も見ないで千数百万円のクルマを注文してしまう とは「世の中、不景気なんて本当かよ」なんて言いたくなる。

さて、新型は出たが例によって最初に発売されるのはメジャーなカレラとカレラSであり、少数派のカレラ4や911ターボは慣例どおりに1〜2年後に発売となり、それまでは旧タイプが継続販売される だろう。
 


写真1
来春より日本でも販売される新型911(991)カレラS。
もう既に多くの予約が入っているそうだ。
 

という訳で、暫くは継続される4WDの997カレラ4に試乗したみた。考えてみれば、911系の試乗記は何回か行っているが、カレラ4は未だ実施していなかったので、今回は初のお目見えということになる。

そこで、先ずはスペックを比較してみると
 
    現行911(997) 新911(991)
      Carrera4 911 Turbo Carrera Carrera
 

車両型式

  ABA-997MA102 ABA-997MA170 ABA-997MA102 N/A

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.435 4,450 4.435 4.500

全幅(m)

1.850 1.810 1.810

全高(m)

1.310 1.300 1.310 1.305

ホイールベース(m)

2.350 2.450

駆動方式

4WD(RrEng.) RR

車両重量(kg)

  1,520/1,550 1,570/1,600 1,460/1,490 1,410/1,430

乗車定員(

  4

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

  H6 DOHC H6 DOHC Turbo H6 DOHC

総排気量(cm3)

3,613 3,799 3,613 3,436
 

最高出力(ps/rpm)

345/6,500 500/6,000-6,500 345/6,50 350/7,400

最大トルク(N・m/rpm)

390/4,400 650/1,950-5,000 390/4,400 390/5,600

トランスミッション

6MT/7PDK 7MT/7PDK
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

4.4/4.5 3.1/3.2 4.2/4.3 4.0/4.1
 

最高速度 (km/h)

284/282 312/312 289/287 289/287
 

0〜100km/h加速 (sec)

5.0/4.8 3.7/3.6 4.9/4.7 4.8/4.6

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

マルチリンク

タイヤ寸法

  Fr:235/40ZR18
Rr:295/35ZR18
Fr:235/35ZR19
Rr:305/35ZR19
Fr:245/40ZR18
Rr:265/40ZR18
N/A

ブレーキ

Vディスク/Vディスク

価格

日本国内価格

1,199/1,247万円 1,883/1,958万円 1,086/1,161万円 1,117/1,192万円
 

備考

    生産終了  

997のボディには、ご存知のように2WD系の全幅1,810mmという標準ボディと4WD系の1,850mmのワイドボディがあり、今回試乗するカレラ4は当然ながらワイドボディで、他に911ターボもワイドボディーを使用している。 ただし、ワイドといっても広いのはリアのみで、Bピラーより前は同一となっている。なお、GT3の場合はベースグレードは2WD系を使用しているが、GT3 RSの場合は2WDであるにも関わらずワイド系を使用している。次に997同士で比べると、エンジンはカレラもカレラ4も全く同だが、車両重量が4WDのカレラ 4は当然ながら2WDのカレラより重く、その差は60kgに及ぶことから、動力性能は多少カレラ4が劣 っている。といっても、カタログデーターでは0〜100km/h加速でたったの0.1秒だが。

新型911(991)については、全幅は同じで全長が+65mmと多少長くなっている。ホイールベース(W/B)に関しては100mmも長くなっているが、これが未だ実車も見ないうちからW/Bが長くなったら折角の乗り味が低下する・・・・みたいな批判 も目に付くが「最善のポルシェは最新のポルシェ」だから、悪い筈が無いと思って、ここはポルシェの技術を信頼することにしよう。

今回の試乗車はカレラ4のPDKでハンドル位置は左(LHD)だった。先ずはカレラ4とカレラのエクステリアを写真で比較してみる。文章でゴタゴタ言うよりも写真2〜4を参照願おう。
 


写真2
この角度からだと、リアフェンダーの違いが多少見えるくらいで、大きな違いは無い。


写真3
正面から見ると、その違いは全く判らない。すなわち、Bピラーより前は共通している。


写真4
後方から見ると、全幅の違いがハッキリと判る。カレラ4は40mm全幅が広い。
 

前述のように4WDのカレラ4が新型991となるのは2013年頃と推定できるから、カレラ4の購入を希望する場合はあと2年ほど待つか、それとも現行997にするかという悩ましい選択がある。そこで以下に現行(997)カレラ4と新型(991)カレラSのインテリアを比較してみる。 なお、997同士のカレラとカレラ4の内装は全く同じと思って良いので、両車の内装比較は行わない。

今回の比較は本来ならば新型も現行カレラに合わせてカレラの標準グレードとするべきだが、撮影できたのが偶々カレラSだったことから、このようになってしまった。そして新型は東京モーターショーでの展示車だから、内装もオプションをたっぷり装備していたことも考えられる。以下の比較は、そんなことを踏まえたうえであくまでも参考としていただきたい。

それでは、先ず最初に何時ものとおりで、両車のドアを開けて最初に目に入るシートを中心としたインテリアを紹介してみよう(写真5)。 カレラ4のシートは今更説明するまでも無い997カレラの標準シートで、適度にスポーティーというかサイドの張り出しはそれ程大きくは無いが、一般道で使う分には充分なサイドサポートで、圧迫 感が無いことも好感が持てる。表皮の材質はセンターがレザーでサイドはレザレットという人工皮革だが、一見レザーと見分けが付かない (写真6)。このシートはカレラSでもカレラと同一品が標準とされているが、ポルシェの常として豊富なオプションシートが用意されているから、標準が気に入らなければ気に入ったオプションシートを装着すればよい。ただし、金額と納期は驚く程になる場合が多いが・・・・・。

これに対して新型のシートは恐らくオプションだろうと思えるくらいに従来の標準カレラSの常識からは高級すぎるし機能も多過ぎる。サイドサポートの強いスポーツ形状やフル電動 メモリー付の調整機構など、何れも997ではオプションだったアイテムだ。

ドアのインナートリムについては新型は大きくデザインが変更されている(写真7〜8)。ポルシェの場合996/986までのチャチな内装が997/987では大分マシにはなったが、それでも価格を考えればもう少し高級感があっても良いのではないだろうか、なんて思うこともあったが、今度の新型はその面ではやっと他車(BMWやメルセ デスの上級車)に追いついたという感じだ。ただし、内装のいたるところにレザーとステッチが多用されている写真の新型は、シート同様にオプション装備である可能性が高いから、スッピンの991カレラの場合はもう少し質素かもしれないが、基本的なデザインからして997より進んでいるのは 間違いないようだ。
 

写真5
新型シートはサイドサポートの高いスポーツシートで、しかも電動調整が付いていたが、これが標準かどうかは不明。
カレラ4はカレラと全く同じシートが付いている。標準シートの調整は背もたれの角度(リクライニング)以外は手動となる。

 


写真6
カレラ4のシート表皮はカレラと同じ(カレラSとも同じ)センターがレザーでサイドはレザレットという人工皮革を使用している。
新型はセンターに細かい通気穴の開いたレザーを使用していたが、フル電動メモリー付き調整機構とともに、これは恐らくオプションではないかと思う。
 


写真7
ドアインナートリムのデザインの変更は大きく共通点は殆ど無い。
 


写真8
ドアトリムを拡大してみると、流石に新型の方が近代的で高級感も更に増している。
ただし、ショー展示用モデルの新型は、内装もオプションのレザーインテリア等を装備している可能性は高い。
 

シートやドアパネルの次に目に付くのは、新型のコンソールがセンタークラスターの高い位置から斜めに降りてくるようなデザインで、これは最近のポルシェ、すなわちパナメーラや新型カイエンの路線だし、最初はカレラGTくらいから採用されていたものだ。そういう意味では、911も最新のポルシェのセオリーに従ったということだろう。

それでは新型の運転席に乗り込んでみよう。シートに座った眺めは、何時もの911(997)と変るところは無いし、内装が変更されたとは言え、ドライバーが運転中に 一番目に入るインパネ類は、少なくとも違和感は全く無い。新型のシートは前述のようにサイドの張り出しの大きなスポーツシートだから、当然左右のサポート感は上だが、基本的には997のドライバーズシートに座っているのと大きな違いは無い(写真 10)。
 


写真 9
新型のコンソールはセンタークラスタの中間くらいから斜めに降りてくるデザインで、ルーツはカレラGTだろう。
 


写真10
ドライバースシートに座っての眺めは、新型991は997と大きな違いは感じない。これぞポルシェのフィーリングというのは引き継いでいて、良く見れば随所で新しくなっている。
 

センタークラスターのデザインも新型は完全に新設計となっている。最大の違いはオーディオで、997後期モデルからナビ一体型が標準装備となったが、これ程の高価格車で CDを挿入するのにナビのディスプレイがパカッと開くのはどうしたものか?と思っていたらば、今回はオーディオ部が別になって、BMWなどのサルーンと同じになった (写真11)。こうなると、やはりナビ一体型を採用していたパナメーラやカイエンもMCを機に変更されるのだろうか? なお、エアコンの操作パネルも完全に一新されたが2ゾーンのフルオートエアコンの基本は変っていないようだ。ポルシェのフルオートエアコンは、多くのセンセーを使って最適温度を保つ・・・ということになっているが、実際には暑かった寒かったりで、中々丁度良い温度にならないという、これまた車両価格か らすればチョイと文句も言いたくなる性能だったが、新型では少しはマシな制御をするようになったのだろうか。
 


写真11
997のセンタークラスタにはエアコンのコントロールパネルはあるが、オーディオ用が無い。実はオーディオはナビ一体となっている。
これに対して、新型はオーディオ部分が別になって、やっと世間の高級車の常識くらいにはなった。
 


写真12
コンソール上の後方には双方ともシガーライターと灰皿があるが、新型にはパーキングブレーキレバーが無い。
 


写真13
走行モードやPASMの切り替えスイッチ類はコンソール上に移動して使い易くなった。

コンソールのPDKセレクターの手前にはどちらも蓋付きのシガーライターが装備されているが、997ではその左にあったパーキングブレーキレバーが新型では無い。恐らく電気式のパーキングブレーキが採用されたのだろうと思うが、今回の資料では定かではない(写真12)。

走行モードやPASMの切り替えスイッチは、997ではセンタークラスターの下端にあって、走行中の操作はかなりやり辛かったが、新型ではコンソール上のセレクターレバー後方の位置に独立しているから、操作性は大きく向上している (写真13)。

走行中に最も目に入る室内装備は言うまでも無くメーター類だが、新型のメータークラスター内の計器類は、911の伝統に従ってセンターに大径の回転計を配した5連メーターとなっている。詳細は 写真14を参照されたい。


写真14
どちらも5連メーターだが、新型はパナメーラと同様にセンターの大径回転計のみがシルバーパネルで、
それ以外はブラックとなっている。997以前のメーターパネルはカレラがブラック、カレラSがシルバーという
仕来たりだった。
カレラ4のメーターは左から@油温計 A速度計 B回転計 C水温+燃料計 D油圧計となっているが、
新型では@油温+油圧計 A速度計 B回転計 Cインフォメーションディスプレイ D水温+燃料計
と変更された。
 

コンソール上のPDK セレクターはベースプレートのデザインに少し変更があるくらいで、大きな変更はない(写真15)。ステアリングホイールは997からのキャリーオーバーだが、997ではオプション扱いのパドルスイッチタイプが付いていた 。ポルシェも遂に意地を捨ててパドルを標準にしたのだろうか?? (写真16)
 

写真15
PDKのセレクターは基本的には同じだが、ベースプレートのデザインは異なっている。


写真16
ステアリングホイールは全く変わりがない。997ではオプションのパドルスイッチが新型にも付いていた。
 

今回試乗したカレラ4は、内装についてはカレラ(2WD)と全く同じであることから比較の意味がないといことで、丁度タイミング的に日本初上陸の新型911(991)カレラSとの比較を行ってみた。この新型のカレラ4が欲しいとなると、少なくともあと一年以上は待つ事になる。

次はいよいよ本題である走りについて、カレラ(2WD)との比較をやってみることにする。
この続きは後編にて。

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