AUDI A1 1.4TFSI 特別編  ⇒試乗記へ戻る
アウディ A1 vs トヨタ ヴィッツ1.5RS

特別編へようこそ。何時ものように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

一人で移動するには小さいクルマで充分だし取り回しも楽だ、という考えから、Bセグメントのコンパクトカーをパーソナルな足クルマとして乗り回すのは、確かにメリットがある。その場合、150万円のヴィッツを選ぶか、300万円のA1を選ぶかは本人の考えと予算次第だが、コストの面を別とすれば、どちらを選ぶのが楽しい人生に繋がるかは言うまでも無い。 それではA1とヴィッツって、どのくらい違うのだろうか?というアナタのために、そして貧〇人はどんなクルマに乗っているんだい?といって、ショボイ内容が晒されるのを期待している社長に院長。いや勤め人でもエリートの諸氏達の期待に 応えて・・・となるかどうかは判らないが、とに角行ってみよう。
 


 


 

 

両車のアウターサイズはA1が全長3,970×全幅1,740×全高1,440mmに対してヴィッツRSは
全長3,930×全幅1,695×全高1,500mmとヴィッツはA1に対して全長は20mm短く、全幅は45mm狭く、全高は60mm高いという、言って見れば狭く高い背高のっぽとなっている。それが理由となってエクステリアはA1の方が広く低く、見栄えも良い。といってもヴィッツだってRSの場合はエアロパーツも付いているから、決してカッコが悪いというわけではない。

それにしても、こうして2台を比べてみると、ヴィッツだって結構頑張っているじゃあないか。まあ、ヴィッツがRSでエアロパーツがついているという事も影響はしていて、標準のヴィッツはもっとダサいから勘違いしないように、たのんまっせぇ。
 


 

 

クルマのインテリアで一番目立つのは何といってもフロントシートの形状と表皮の材質だが、 こうして見るとヴィッツだって結構”欧州”しているじゃあないか。これもヴィッツがRSだから、こういうシートが付いているんだけれど、トヨタも結構頑張っているようだ。
それで、実際の座り心地については、残念ながらA1には敵わないが、それでも国民皆がイスに座る生活になってからホンの半世紀程しか経っていない日本国のクルマにしては、最近のシートの出来は随分進歩してきたわけで、これは素直に認めて喜ぶべきだ。
 

上の写真で見れば、それほどの違いは無いように見えるが・・・
 

ダッシュボートの出来については、A1は細かいシボ模様で本革と見紛うばかり・・・とは言えず、アウディとしてはチョッとイマイチだが、勿論Bセグメントとしては ダントツに出来が良い。対して、ヴィッツは最初から革目なんかには目もくれずに縦線模様を入れるという潔さはあるが、まあ安物のBセグコンパクト丸出しでもある。ダッシュボートの成形用金型は巨大で価格が高いために、RS専用に興すことは不可能なので、低グレードを含めたヴィッツなりのモノになってしまう。
 

ドアのインナートリムについて、A1の場合は写真がレザーパッケージ未装着のために、全て樹脂トリムとなるので、それ程の高級感はないが、レザーパッケージならば大分向上する。勿論、Bセグメントとしては充分過ぎるくらいに出来は良い。そしてヴィッツの場合は、プラスチック丸出しで、如何にも金を掛けていないのは見え 見えとなる。
また、ドアノブの質感も両車は大いに異なり、クロームメッキのA1に対して、黒いプラスチック素材のヴィッツとはマルで違うし、ドアを閉める時もA1は立派なグリップを持ってズシンと閉まるが、ヴィッツはセコイプラスチックの凹みのような取っ手に手を入れてベキっと閉める。
 



A1は全グレードにナビが標準装備されていて、そのディスプレイはダッシュボードの天板から出ている。また、オーディオとナビの専用操作パネルをセンタークラスターに持っているなど、高級車のセオリーに従っている。ただしエアコンの操作パネルは小さい3つのツマミでの操作が使い辛い。
対してヴィッツRSはオーディオレスで、ナビをつける場合はオーディオ一体型となる。また、エアコンはRSの場合にはオートエアコンとなるが、その操作部は所詮低価格のコンパクトカーの質感なのは、まあ仕方ないとろか。
 

A1のメーターはA3以上に比べて多少省略されているのと、金属的質感に乏しく、しかも国産高級車的な自光式など、アウディの質感としては多少の文句も言いたくなるが、 これまたBセグコンパクトと思えば充分に高級だ。そして、ヴィッツのメーターはといえば、コントラストが低くて視認性の悪い文字や目盛に、プラスチック丸出しの安っぽい文字盤など、これこそ安物感全開という 代物だが、これも毎日見ていれば慣れてしまうのかもしれない。
それでも、同じヴィッツとはいってもRSのメーターは回転計だって付いているし、低グレード用から見たらば大分マシで、これが廉価グレードの”F”ともなると、 言う事なしの典型的安物メーターとなる。
 




 

シフトレバー(ATセレクター)の質感は、A1の場合はアウディとしてはこれまた高級感はイマイチだが、勿論それはA4やA6と比較した場合で、何度も言うようにBセグメントとしては充分な質感がある。ヴィッツRSの場合は、今回のサンプルがMTのために直接の比較は難しいが、RS専用の部品のためにヴィッツとしては思いの外出来が良い。なお、RSのCVTモデルの場合も、カタログで見た限りでは他のグレードとは違う部品が使われていて、決して惨めになる事は 無さそうだが、 それでもA1と比べると見劣りがしそうだ。

ステアリングホイールはA1が欧州車の標準的な質感であるのに対して、ヴィッツRSはリムのレザーに通気穴が付いたタイプを使用し、またステッチも赤い糸を使うなど、この部分ではA1も真っ青という出来だった。ただし、A1がステアリングスイッチを装備している事に対して、ヴィッツRSにはそういうモノは無 い。
A1のステアリングにはマニュアルシフト用のパドルスイッチが無いのに対して、ヴィッツRSのCVTには立派なパドルスイッチが付いている。こういう演出の上手さは流石に日本車。流石にトヨタというべきか。
 


 

A1 1.4 TFSIの1.4LターボエンジンはVWゴルフ コンフォートラインと全く同一スペックで、外観上はトップカバーが違う事と、ダクトや配管類が異なることくらいで、シリンダーブロックなどを覗いてみれば全く同じものが使われている。アウディのボンネット内といえば、普通は綺麗に整理されていて如何にも高級ブランドという感じ (写真右)なのだが、A1の場合はゴチャゴチャとしていて、大衆車(VW)の血筋であることが知れてしまう。
ヴィッツRSの場合はRSとはいえスポーツエンジンなどではなく、極普通の大衆車のエンジンだから、ボンネット内の眺めも大衆車そのものだ。と、いっても、A1も似たようなものだが。
 


 

ホイールから覗くブレーキは写真のとおり、どちらも実用的な片押しキャリパーで、フロントは鋳物、リアはヴィッツRSがシリンダーのみアルミ、A3は鋳物のようだ。それにしても、オプションの大径ホイールを付け た時のA1のリアブレーキはローター径が小さくスカスカでカッコが悪い。という訳で、ブレーキについては少なくともイーブンだろう。これもA1のプラットホームがVWポロベースという毛並みの悪さ(オーナーさん御免なさい)が隠せないのが辛い。ヴィッツRSの場合は、元々ヴィッツという庶民の生まれだから、その中ではリアにディスクブレーキというのは頑張ったというところだ。

ここまでの比較では、やはりプレミアムブランドであるアウディの一員であるA1が、高級感や所有する満足感では勝っているのは当然だが、よくよく見れば VWポロベースという生まれがチョロチョロと顔を出す。逆に正真正銘の大衆車であるヴィッツの一員であるRSは、所詮はBセグ大衆車という面もあるが、RSというグレードのために特別に用意した部分(リアディスクやスポーツシート、シフトレバー&ノブなど)もあり、価格を考えれば結構頑張っているというべきか 。いや安いと言ってもナビを付ければ200万円超えだから、この程度は当然というべきか、最後の判断はやっぱり読者の考え次第としておこう。

今度はスペックの比較をやってみよう。A1はベースグレードとし、ヴィッツは今まで取り上げてきたRSを、そして参考として本来ならばA1のライバルとして比較すべきアルファロメオ ミトと、Bセグメントのホットハッチで人気抜群のVWポロGTIも並べてみた。
 
    @ Audi ② Toyota ③ Alfa Romeo ④ Volkswagen
      A1 Vitz RS MiTO Sprint Polo GTI
 

車両型式

  BDA-8XCAX DBA-NCP131 ABA-95514P ABA-6RCAV

寸法重量乗車定員

全長(m)

3.970 3.930 4.070 3.995

全幅(m)

1.740 1.695 1.720 1.685

全高(m)

1.440 1.500 1.465 1.460

ホイールベース(m)

2.465 2.510 2.510 2.470

駆動方式

FF
 

最小回転半径(m)

  5.0 5.6 N/A 4.9

車両重量(kg)

  1,190 1,030 1,260 1,210

乗車定員(

  4 5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  CAX 1NZ-FE 955A7 CAV

エンジン種類

  I4 DOHC Turbo I4 DOHC I4 SOHC Turbo I4 DOHC
Turbo
+S.C.

総排気量(cm3)

1,389 1,496 1,368 1,389
 

最高出力(ps/rpm)

122/5,000 109/6,000 135/5,000 179/6,200

最大トルク(kg・m/rpm)

20.4/4,000 14.1/4,400 19.4/4,500 25.5/4,500

トランスミッション

7DCT CVT 6DCT 7DCT
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

19.4 20.0 N/A 16.5
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

9.8 9.4 9.3 6.8

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

トーションビーム

タイヤ寸法

  205/55R15 195/50R16 195/55R16 215/40R17
 

ブレーキ

前/後 Vディスク/ディスク

価格

車両価格

289.0万円 179.0万円 288.0万円 294.0万円

備考

 

5MT:172万円
ナビ:+22万円

   

ヴィッツは幅こそ狭いが、全長やホイールベースはA1と同等であり、事実上同一寸法といっても良いだろう。そして、エンジンはA1が1.4Lターボで122ps  20.4kg・mに対してヴィッツRSは 1.5L自然吸気で109ps 14.1kg・mと数値的には劣るが、車両重量がA1の1,190kgに対してヴィッツRSの1,030と160kgも軽いために、パワーウェイ トレシオでは逆転している。実際に試乗した感想でも、ヴィッツRSが5MT仕様だったこともあり、体感上でもA1より幾分加速性能は良いように思う。 もしもヴィッツRSがCVTだったら、結果は違ったとは思うが。

操舵性はといえば、まあこれを比較したらばヴィッツが可哀相というものだが、A1のパワーや用途から言えば走り屋系マニア御用達というクルマではなく、優秀なコーナーリング性能や安定性は単なる付加価値、というかアクティブセーフティーの一環と思えばよい。
 

というわけで、アウディA1とヴィッツRSの比較という、価格的にほとんど2倍近いクルマを比較するという暴挙を実行してみたが、やはり最終的に判断するのは金を出すユーザーということになる。と、言ってしまっては身も蓋もないので、以下に個人的な意見をまとめてみる。そう、あくまでも個人の意見ですから誤解なきように。

ディーラーと営業マンに関して
クルマというのは買った後も何かと面倒が多い商品で、少なくとも最初の3年目と次からは2年毎に車検がある。それに不具合だって全く無いことは稀だから、ディーラーのサービス部門に頼ることになる。そんな時も、面倒見の良い営業マンから買っておけば、サービス部門のフロントマンとの間に入って調整してくれるし、代車だって営業管理の試乗車などを回してくれるかもしれない。

アウディは1992年から、それまで輸入販売を行っていたヤナセからフォルクルワーゲングループジャパンが輸入元となり、販売ルートはファーレンとトヨタ系のDUOでVWと併売され、1998年には輸入元がアウディジャパンとなり、VWから分かれてアウディ専売の販売網を再構築した。更にはヤナセとアウディジャパンと共同出資のヤナセアウディ販売を 立ち上げ、今度は2007年にアウディジャパンが買収してアウディジャパン販売という直販体制になっている。 中には独立系のアウディディーラーもあるが、これもまた販売不振から途中で経営が変わったりと、要するに老舗のディーラーが無いことから、ユーザーとディラーマンの長い付き合いが無いという状態がBMWなどに比べて多いようだ。まあ、何処のディーラー系列にも優秀な営業マンはいるし、トンデモ営業マンもいるから、何とも言えないが・・・。

これに対してヴィッツを扱っているのはトヨタ系の販売網の中でもネッツ店となる。ネッツ店は1968年にカローラスプリンターを販売するトヨタオート店としてスタートし、その後はスターレットなどをメインに販売していた。1998年にネッツ店に改名し、2004年にはビスタ店と統合(ビスタ店はネッツ 店となった)し、現在に至っている。
トヨタの販売チャンネルは、クラウンを主体とするトヨタ店、コロナおよびマークUを主体として現在はマークXがメインのトヨペット店、カローラを扱うカローラ店、そしてネッツ店の4系統となっている。トヨタ店は流石にクラウンやセンチュリーを販売するだけあって、主力営業所は 高級輸入車ディーラーも顔負けのショールームと、如何にもレベルの高そうな営業マンが多い。特に若手の係長クラスなら、ヤ〇セよりも上ではないか、という営業マンがいる確立が多い。
トヨペット店はトヨタ店ほどではないにせよ、ハイオーナーカーの販売チャンネルらしく結構レベルが高い。尤もトヨタ店も同様だが、イケ面セールスは同一資本のレクサス店に転属になっていたりするが。そしてカローラ店は、やっぱり大衆車カローラを売っているという感じがする。それで、本題であるネッツ店はといえば、はっ、はっ、はっ。まあ、スターレット改めヴィッツを売っている店ですから・・・・・。

アウディは壊れやすいか
輸入車といっても、少なくとも最近のBMWは経験上大きな故障は無いと言っても良いだろうし、ポルシェに至ってはトヨタ車並の故障の少なさだ。それでは、アウディはといえば、まあ、心配なかたは「アウディ 故障」でググってみれば如何かな。ついでに、同系のVWについても「VW 故障」でググってみれば、ある程度の傾向は判るでしょう。

アウディA1はボッタクリか?

A1のベースグレードの価格は289万円で、ヴィッツRS(5MT)の価格は172万円。A1にはナビは標準 装備だが、ヴィッツの場合はオプションで、純正品を付けると+22万円。更に安全装備をA1並にするには、サイドエアバッグ+4.2万円とVSC&TRC+3.2万円が必要となり、合計は約201万円となる。しかもA1はDCTタイプのミッションを塔載している。この価格差はどれくらいかと想像すると、ランエボ]の場合5MTとDCTの価格差は25.2万円。ただしランエボの6速に対してA1は7速だが、トルクはランエボが圧倒的に大きいので、とりあえず20万円差と仮定すると、ヴィッツと A1の価格差は289-201−20=68万円となる。
この68万円が安いか、高いかは、アナタの考え次第となる。えっ?何もヴィッツに余計なオプションをつけなければ価格差は117万円。いくら良いと判っていても、117万円は出ないんだよな、って、成る程ねぇ。

と、色々比較をしてみたけれど、如何でしたかな、エリートの皆さん。 やっぱり貧〇人はセコいクルマに乗っているんだなぁ。これじゃあ、事故も起こるわけだ、と思っているのか、へぇー、安い割には結構マトモなんだなぁ、と思ったか、さーてどちらでしょうか。ただし、勘違いしてもらっては困りますが、今回のRSというモデルはヴィッツとしては一番高くて良いヤツで、普通のヴィッツはもっとセコくて、遅くで、不安定だけど安いんですからねっ!
と、いっても、社長には判らないだろうなぁ。
あれっ?そちらの院長先生は判っている?んですか。何と最近ヴィッツを経費で買ったって。それもRSを。用途は看護師さんたちの下駄代わりの連絡用って、普通RSはクルマ好きのマニアが 頑張って買うグレードなんですよ。これってもしかして、今期の仮決算で儲けが出すぎるようだから、何でも良いから一番高いのを持って来い、っていうパターンです かねぇ?

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