トヨタ アベンシス (2004/01/19)
 

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試乗車一覧




試乗車はLiというセダン最上級のグレードで価格は275万円。 乗りこんでシートに座ると、結構着座位置は高いが、ボンネットは見えない。多少小ぶりで、VWあたりのコチコチより座面が多少柔らかいなど、BMW3シリーズソックリで、これはパクったというより、シートメーカーが同じ?とも思える。ダッシューボードの雰囲気やウッドトリムの形状などもソックリでこれはパクりだろう。275万出しても、シートは手動だし、内装の雰囲気もトヨタ的な豪華さのカケラモない。  

走り始めて最初に感じるのは、クリープが少なく、アクセルペダルもストロークがあり踏んだ分しか吹き上がらないので、国産の安グルマによくある、低速の車庫入れなどでは左足でブレーキを踏みながらでないと、直ぐに飛び出すような恐ろしい事は起きない。この点は確かに欧州車の良いところを吸収している。エンジンは低速から十分なトルクがあり、特に2000rpm前後は中々スムースでレスポンスが良い。

1500rpmからフルスロットルを踏んで見ると、トヨタ車としては結構タイムラグが少ないキックダウンが起こる。が、しかし、ワイドレシオの4速ATは、行き成り3000rpm以上に回転が上がり、ここは5速ATが欲しいところだ。ただし、エンジン自体は5000rpm程度までは一気にストレスなく吹き上がる。

ステアリングは特にクイックではないし、中心付近のレスポンスもイマイチだが充分許容範囲で、BMW3シリーズにはとても敵わないが、メルセデスCクラスにはあと一息、ジャガーXには楽勝というところか。30分以上乗って慣れてきたところで、都心によくある1車線分が狭い3車線道路の中速コーナーに70km/h程で進入してみたが、アンダーステアは感じるものの、難なくクリアできた。ただし、流石はトヨタ社で、全くワクワクしない。この感じは、メルセデスのつまらなさとは全く異なり、本気でつまらない、トヨタ車そのものだ。

結構まともなハンドリングの代償は、硬い乗り心地で、この硬さは国産のオヤジぐるまに慣れたユーザーには我慢できないだろう。路面の段差などはシートを通じて尾低骨にビシビシ響く。ボディの剛性感は結構あるので、カローラのようにホディがワナワナすることはないが、サスのストロークが無いのかセッティングが悪いのか、90分の試乗の間、常に不快だった。市場車は走行1500km程度で、ダンパーの当たりが付いていないことも考えられるが、それにしてもイマイチ。硬いなかにも、シナヤカさとスムースさを兼ね備え、ビシッと一発で収まる、むしろ心地良い硬さのBMWのMスポーツ系には、遥かに及ばない。後でタイヤを調べたら、上級グレードには標準で215/45R17が装着されていた。普通のオヤジ向けのクルマに45は無いだろう!ベースグレードに装着されている205/55R16のほうがこのクルマに合っていると思うのだが。それとも、あの安定性が45タイヤに頼っているとすると、基本性能は大したことないのか?

乗り心地の硬さとともに、ロードノイズも結構大きい。路面のザラついた滑り止め舗装を走ると、ザーっという音が盛大に聞こえる。しかし、本物の欧州テイストとは何かが違う。音はするが、ステアリングに微妙に伝わる振動で、路面状態が判る3シリーズとは違い、音だけが聞こえる違和感を感じる。

ブレーキは踏み初めの遊びストロークが結構重い、Cクラスのようなフィーリングだ。踏み初めのミューは結構ありそうだが、それから踏力をましてもストロークが延びて、その割に減速度は出ない。ブレーキ系の剛性感は日本車そのものだ。それに、20分過ぎて、ローターが温まったころ、低速でのクー音が出始めた。1時間過ぎからは可也の頻度でクー音が発生しだした。

さて、このクルマをどう結論付ければ良いのだろうか。欧州車のデメリットである、硬い乗り心地と大きなロードノイズ、ブレーキの鳴きを全て備え、その割にはメリットの安定性はソコソコで、フィーリングだって基本的にはトヨタ車で、ミッションも昔の日本車丸出しの4AT。試乗車の車両価格は275万円也。これは、VWのボーラと変わらず。ワゴンだと更に高く290万円で、あとチョットで同じ4気筒2リッターのパサートワゴンが買える。むしろ、ベースグレードであるXiの220万なら買うメリットはあるかもしれない。前述したように、タイヤも現実的で、乗り心地も少しは期待できる。だが、それなら、同じ1AZ−FSEエンジンを積んで、装備はより充実し、ミッションもアベンシスの旧型4ATに比べCVTで、価格は207万円のアリオ2000を買ったほうが利口な選択とも思える。と、なると、アベンシスを日本で販売しても、恐らくそれ程は売れないのではないか。

しかし、天下のトヨタが、そんな事を気がつかない筈は無い。おそらく、何か目的があってわざわざ欧州向けのクルマを輸入してまで、販売するのだろう。

宣伝では「トヨタの造った欧州車」と言っているようだが、「欧州で造ったトヨタ車」と言うべきか。