B_Otaku のクルマ写真館
 Nissan Cima


バブル経済華やかしき 1988年に日産から発売された シーマ (Cima) は、それまで国産高級車と言えばトヨタのクラウンか日産のセドリック/グロリアというジャパンオリジナルの5ナンバーを基本とするモデルしか無かった。これに物足りなさを感じていた中小企業経営者などが、それらよりもワンランク上のシーマに飛びついて大変なブームとなり、一時はシーマ現象などと呼ばれたのも今は昔‥‥。

その後はじり貧となるも4代目迄続いたが、遂に 2010年に販売中止となって、シーマの歴史は途絶えてしまった。しかし2012年に2年の空白を経て5代目が発売されたが、あれから6年経過して「あの人はいま」じゃないが、あのクルマはいま?とも言うべきシーマの現状を調べてみた。

先ずは5代目シーマの生い立ちだが、これは何の事は無いフーガハイブリッドをストレッチした、言ってみればフーガハイブリッド LHBというべきものだ。下の表を見れば判るが、全長とホイールベースがそれぞれ 140㎜ および 150㎜ 延長された以外は、エンジンもハイブリッド系もサスペンションも全て同じだ。ところでこのベースとなったフーガハイブリッドは最近販売が終了していた。

それではフーガのライバルはというと、実はこれがドンピシャのライバルは見当たらない。例えば同じくショーファードリブンの多いレクサス LS はクラスとしてはシーマよりも上だし、そうなるとフーガと動くらいのレクサス GS という事になるが、GS にはロングホイールベースが存在しない。ということで、シーマは独特の市場を狙った隙間商品というか、日産系の役員車としてプレジデントが無くなった現在、チョッとセコイが、まあ価格も比較的安いし、という立場のクルマになっているようだ。

それではシーマのエクステリアはといえば‥‥

それはもうフーガの伸ばして長くしたヤツ、そのものだ。勿論グリルは少し変えてはいる。

以上2018年3月5日掲載分


フロントビューはグリルがベースとなっているフーガとは違い荘厳な (という程でも無いが) 雰囲気で、ショーファードリブンの VIP カーの雰囲気を出している。

サイドから見ると全長 5,120㎜ だから確かに長いが、その長さはリアのドアが長いだけで、フロントドアや前後オーバーハングは変わらない。

リアビューもフーガとは違い、ナンバープレートのエリアを囲むクロームの枠など、これも威厳を持たせている。

車体各部のエンブレム類。"VIP" というのはグレード名で、ハイブリッドの場合上位から VIP G (902.7万円) 、VIP (848.7万円) 、スタンダード (749.7万円) の3グレードとなる。ただし VIP G もエンブレムは "VIP" で変わりは無い。

ボンネットフードの裏面には高級車らしく防音材がたっぷりと使用されている。

エンジンは VQ35HR V6 3.5L 306ps 350N-mという充分な性能にも関わらす、これに 68 ps のモーターを加えてハイブリッド方式としたもので、オレンジ色の高圧ケーブルがそれらしい。

エンジンのトップカバーはシルバーで "HRBRID" と日産のエンブレムが見えるが、これは予算を掛けた事が判る高そうなモノが付いている。

タイヤ&ホイールは全グレードで共通であり、8J x 18 ホイールに 245 / 50R18 タイヤの組み合わせとなっている。アルミホイールのデザインは高級車らしく大人しいもので、スポークを太くて数も多い。

ブレーキユニットは前後共に鋳物の片押しキャリーパーを使用しているが、フロントは2ピストンタイプを奢っている。車両重量が 1,900㎏ 超という重量級だから、この手の大容量のブレーキを使うのは好ましい事だ。まあ見栄えを考えれば対向ピストン (オポーズド) キャリパーが欲しい気もするが、容量的には対向4ピストンと片押し2ピストでは同等となるから性能的には全く問題ないが、やっぱり見栄えがねぇ‥‥。

以上2018年3月6日掲載分


ドアを開けて室内を見渡せば、本革シートとレザーの内装が高級車である事を物語っているし、リアスペースの広さもショーファードリブンの本物の VIP が乗るクルマである事を主張している。

写真は最上位の VIP G (902.7万円) の為にシートはセミアニリン本革表皮を使用しているが、写真でも判るように革の質はゴワゴワしていて決して良い質感とは言えない。日産の本革はどうもイマイチで、この点ではレクサスが明らかに勝っている。なおスタンダードモデルでは人工皮革とジャガード織物のコンビとなる。なお中間グレードの VIP も VIP G と同じ本革が標準となっている。

シートのポジション調整は勿論フルパワーで、ポジションメモリーも装備しているが、そのスイッチはドアパネル側ある。

ドアのインナートリムはぶっちゃけフーガの上級モデルそのもので、元々フーガのドアトリムは高級感と言う面では国産車の中でもトップクラスだったから、シーマの車格にもマッチしている。

シートポジションメモリースイッチはドアノブの上辺りにある。

厚いソフトパッドとそれを覆うレザー (まあフェイクだろうが) とステッチ等、前述のようにこの質感は実に良い。

インパネだってそのまんまフーガなのは当然だ。えっ、少しは変えたらどうなんだ、って?
そんな事、俺に言われてもなぁ‥‥

センタークラスターだって当然ながらフーガと同じだし、写真のウッドトリムは木目に銀粉を入れた独特の製法というもの、これまたフーガのトップモデルでお馴染みだ。

まあ今となっては1世代前の日産の上級車で多用されていた、BMW ではコンソール上にあるコマンドダイヤルとスイッチ類をセンタークラスターに持ってきて、ビーエムのパクリじゃないものねぇ、場所が違うもんねぇ‥‥というノリだったが、今ではスカッと辞めてしまった。

ここまでのところでは、インテリアはそのまんまフーガだった。おっと、少なくともリアドア (の幅) は違うぞ!

以上2018年3月7日掲載分


もう判ると思うが、フロアコンソールもオーバーヘッドコンソールも全てがベースとなったフーガと同じ。

ハイブリッドと言ってもハイパワーエンジンのサポートとして更に動力性能を上げる為にモーターでアシストするというコンセプトだから、プリウスの様な燃費主体のハイブリッドのようにフルエレキ化されている事は無く、トルコン AT とメカ式のティプトロタイプの AT セレクターを装備している。あっ、勿論フーガと同じねっ!

コンソール上、AT セレクターの手前には走行モードの切り替えスイッチとシートの通気量の調整ノブが付いている(もう敢えて言わないがフーガと共通)。

コンソールの後端には当然ながらリア用のエアアウトレットがあるが、ショーファードリブンならば細かい調整が出来るパネルかなんかがあっても良さそうだが、実はそれはリアシートのセンターアームレストに仕込んである。

またここまでは殆ど全てがフーガと同じだったが、下の写真を見ればフロントの助手席側シートのバックレスト右側面に何らやスイッチらしきものがある。拡大して見ると、これはパワーシートのポジション調整用スイッチだった。さてその理由はと考えてみると、ショーファードリブンの役員車等は通常助手席には誰も乗っていない。そこで後席の住人 (要するにVIP )は助手席をもっと前に出して足元スペースと更に増やしたり、バックレストを前に一杯に倒して空間を増やしたり、まあそんな事の為に後席からも操作したいのだろう。

ドライバーズシートから見える正面のステアリングホイール周りは勿論フーガと同じで、写真では何とマニュアルシフト用のパドルスイッチまで付いている。それにしても、このクルマにパドルが必要か? もしかするとフーガの上級モデルのステアリングホイールアッセンブリ―にはパドルが付いていて、これをシーマの為に取り外すと返ってコスト高になるので、まあ付いていても文句は言われないだろう、てな訳でそのまま付いている‥‥と想像した。

メータークラスターも勿論フーガと共通だが、しかしこれは今となっては古臭いセンスだ。

ペダル類だってフーガと共通だが、これも良く見れば左端にパーキングレーキ用のペダルが見える。要するにプッシュ/プッシュ式のパーキングブレーキで、これまた今時ちょっと‥‥。更にフーガのスポーツモデルにはアルミスポーツペダルのモノがあった筈だが、このクルマはショボいウレタンパッドが付いている。そりゃあ、まあ、仕事で運転するクルマにスポーツペダルは要らないが。

最初から判っていた事だがシーマはフーガハイブリッドのロングバージョンであり、それに敢えてシーマという名前を付けただけだった。

ところで、ベースとなっているフーガも 2009年の発売だから既に9年が経過している。もうそろそろ次期モデルにバトンタッチしても良い時期だが‥‥。何しろ米国では同クラスとなるメルセデスベンツ Eクラスや BMW 5シリーズは既に最新モデルとなっている訳で、これで太刀打ちできるのだろうか? それとも、もうこの分野を放棄してしまったのか?

以上2018年3月8日掲載分